ベルセリア王国へ その7~カルロスとの会話~
「しかし、改めて話を聞いたが、ひどいもんだな」
「自分でもそう思います。 でも……」
「あの男は即戦力を求めてた節があり、天才的能力を持つ者しか認めなかった。 だからカトル君が努力しても認めなかったんだよ」
「ふむ……」
メルルの父、カルロスが手配した馬車内で、カルロスと向かい合うように座るカトルとメルルは、改めてグズマパーティでの出来事を話してた。
詳細な内容を聞いたカルロスは、不快な表情を浮かべつつ、頭をポリポリ掻いていた。
「しかし、勇者グズマがそこまでとはな。 聖剣入手の条件を放棄するとはなぁ」
「グズマだけでなく、他の二人も嫌な顔をしてたようだからね。 でも、最近になってグズマが勇者の資格を剥奪されたみたいだよ」
「ほぉ……。 セレティア国王も思い切ったな」
「各国王が女神様の言葉を聞くことが出来るようですからね。 謁見の後、相談して即決したんでしょうね」
「だろうな。 聖剣がなければ今の魔王は倒せんからな。 最も魔族の中にも穏健派がいるが……」
「穏健派? 魔族の?」
三人が会話をしている所で、カルロスの口から魔族の穏健派という内容を聞いたカトルは、目を見開いた様子で聞いた。
「現魔王の娘が率いている魔族の穏健派は、今までの戦いに疲弊し不満を嘆いている魔族の受け皿となっている。 彼女らは元から人間との共存を掲げているからな」
「へぇ……」
カルロスの説明に耳を傾けるカトル。
メルルもそこまでは知らなかったのか、黙って話を聞いている。
「どちらにしろ、現魔王を倒さない限り穏健派の願いは叶わないがな……。 現魔王の周辺幹部は、侵略主義のものだらけだし」
「そうだね……。 まぁ、今の私達は関係ないけどね」
「ああ、カトル君の件で勇者パーティを抜けたんだったな」
今のメルル達の立場をカルロスは理解する。
勇者パーティを抜け、ベルセリアのどこかでひっそりと暮らそうと思っていたようだから。
そんな中でカルロスは、ある提案をしてきた。
「そこでなんだが、今私はある辺境の開拓に勤しんでいる最中だ。 二人が良ければそこで開拓しつつ暮らさないか?」
「開拓? クレセントやステークスはどうするの?」
「クレセントは兄夫婦が管轄してくれているし、ステークスはもう完成されてるからな。 メルルの妹のクルルとその恋人も一緒に開拓に協力をしてくれているからな」
「なるほどね……。 私達もそうしようか、カトル君」
「そうだね。 その提案、受けさせていただきます」
「おお、受けてくれるか。 なら、ベルセリア国王に話をしてからその現場へ行く事にしよう」
「あ、忘れてた」
「メルル……」
ひとまず、カルロスの提案を受け入れた二人は、現場へと行く前にベルセリア国王に謁見するために王都へと向かう。
なお、メルルがそれを忘れてた事にカトルが呆れたように視線を向けていたのは言うまでもないだろう。
馬車は途中の町へ着き、そこで休憩してから王都へと向かう事にした。
メルルがトイレへ行っている間、カルロスとカトルは馬車の停泊所で話をしていた。
他愛のない会話の後、カルロスがある話題を振ってきた。
「ところでカトル君、メルルとはどこまでいったのかね?」
「え!? いや、特に何も……、いや、風呂の時に無理やり一緒に入らされた時はあったけど……」
「ははは、そうか。 そういう所は母親似か。 私も昔はそうだったよ」
メルルの話題になった瞬間、言葉を選ぼうとしたが上手く言えずに正直に話してしまう。
しかし、カルロスは豪快に笑った。
「メルルも妻と同じく、好きになった相手には本来恥ずかしい事でも平気で見せてくるんだよ。 私も苦労したよ」
「はぁ……」
「だが、メルルは君も知っての通り、天才的魔法センスを持って生まれて来た。 故に他国の貴族からはお見合い要請が寄せられててね」
「断ったんですか?」
「ああ、断り続けたよ。 奴らの狙いはわかりきってたからね。 だが、メルルが勇者パーティに入れられること自体は女神のお告げらしくて断れなかったさ」
「そうだったんですか……」
「グズマのパーティに入れられた期間は気が気じゃなかったさ。 メルルがグズマの手に落ちてないかとかでね。 でも、君がいてくれたおかげだよ」
カルロスは父親らしい雰囲気を漂わせて、メルルに関する色々な事情を説明した。
しかし、カトルからして他国の貴族からのお見合いの要求が頻繁にあったのには驚いた。
「だから、君にメルルを任せられると思ったんだ。 メルル自信が好きになった相手だからね。 これからもメルルを頼むよ」
「分かりました。 頑張ってメルルを支えます」
そう言いながらカルロスとカトルが、握手を交わしていたところでメルルが戻ってきた。
「二人とも何話してたの?」
「ああ、身近な世間話だよ」
「ふーん」
「よし、メルルも戻ってきたし出発しようか」
カルロスの一声で、馬車に乗りベルセリア王都へと目指して再び走らせた。
その時の空はもうすぐ夕焼けになろうとしていた。
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