第四十七話 森の外も危険がいっぱい前編
眠い・・・。
最近、欠けるときと書けない時の差が激しいのが悩みです
書けない時は1ページ書くことも一苦労だったのにかけるときは10ページも一気にかけるんだから不思議だ
あれから頭をなでられて口では嫌がりながらもまんざらではなさそうリナとのやり取りをニヤニヤしながら見ていた先生やレオルドとO・H・A・N・A・S・H・Iしながら進み、そして
「なんだか感慨深いな・・・」
とうとうオレはこの世界に来てから一年以上を過ごしてきた森を抜けた。ホントに感慨深いな
思えばオレが女神さまにお願いして人のいない場所に転移してもらったんだけど、その場所こそがこの世界で最大の規模を誇る最強のダンジョンでもあるこの森だった。
あんなところはもちろんすぐに出るつもりだったけど、先生のことリナの子とレオルドの事もあったし、何よりもオレ自身がここから出ることをどんどん先送りにしてたんだ。
それでとうとう先送りにもできなくなってきたし、腹をくくってここまで来たんだけど・・・
「こんな風景だったんだな」
見渡す限りの草原。程よく刈られたくらいの芝(異世界なんだからまったく別の植物なのか?)が風に吹かれてたなびいているのが美しい。
なによりも魔物の気配がないのが珍しい。
オレがこの世界へとやってきてからずっと魔物はオレのすぐそばにいた。異世界に転移した初日から遠慮のエの字も無しに魔物は襲い掛かってきたんだ。
寝食の暇もなく、隙あらば即襲ってくる魔物をずっと相手にしてきたせいでほぼ無意識の域で探索系の魔法を使うようになったオレだからわかる。
魔物は常に近くにいた。向こうからすればオレは自分たちの縄張りに踏み込んできた侵略者なんだから警戒することは当たり前だし、もし自分よりも弱ければ食糧にもなるんだから関心を引くのも当然なんだがな。
そんな環境に一年以上もいたせいか? 今、俺の探索系魔法に全く魔物が引っかからなかったのが珍しくて仕方がねぇ
もちろんその索敵魔法に引っかからねぇくらいに隠密行動に優れた魔物もいた。格が上の魔物の中には威風堂々としていて逃げも隠れもしないという奴もいれば逆に万全を期すために小細工に精を出すやつもいた。
この索敵魔法だけを盲目的に信じるのは危険だ。
「なんだかピクニックにでも来てるみたいね~」
「いやいや、なんであんたが和んでんだよ大先輩」
普通ここは油断するなよ的な言葉で空気引き締めね? リナもリナでこの空気に便乗してのほほんとしてんじゃねぇよ!
「いや~、真面目なで有能な後輩に恵まれると先輩はのんびりできるよ~」
「アンタ、マジでふざけんなよ?」
今なんつった? テメェ、オレに丸投げしようとしやがったよな?
「まーまー、落ち着いてよタイチ。先生さんも冗談だったんだって」
「そーよ。単なるジョーダンなんだからそんなに怖い顔しないでよ」
もーやーねー! なんて言ってきやがった。やれやれだぜと言わんばかりの表情で
なんだ? あのヒラヒラと振る手は、ぶった切られてぇのか?
あれからしばらくして、今オレ達は街道を走ってる。馬車が定期的に通るからその車輪が通る場所に草が生えておらず、自然とできただけの街へと続く道。
地面の土や石ころが全く均されておらず地球、とりわけ日本ではそうそうお目にもかかれなさそうなひどい道だ。
でもそこが新鮮だな。
ダンジョンの中はむしろ人の手で整備されて無くて当たり前。もしされていたらその方が異常と言えた。でもこの道は明らかに人間の手が加わっておきながらおよそ文明の叡智と呼べるものが全く加わっていない道だ。オレにはなんだかそれが新鮮だった。
「う~~~~~~~・・・ん?」
「どうしたんですか? 先生さん」
「あ~リナちゃん。いやね? アタシの時代でも道の整備はこんなものだったんだけど、あまりにも変化が無いからさ? ちょっと違和感が、ね?」
「? どういうことです?」
変化が無いから違和感? 普通だったら変化があるから違和感があるモノなんじゃねぇのか?
リナも分からないようで首をかしげていた。
「あのね? アタシは自分で言うのも変な話なんだけどね? タイチ君が来るずっと前からこの世界に来ていたの。それこそ死体が白骨化するくらいの時間。アタシが自分の家にかけておいた保存の魔法が解けるくらいの長い時間がね・・・」
先生がどこか遠くを見ながら話してる。
確かにオレが見つけたときの先生の家は普通の家だった。特別な魔法なんてかけられている様子もなかった。先生が今の形で復活してなんか家に変な魔力を感じるなぁと思ってはいたが、魔法に関して知れば知るほどそのあり得ない程の規格外さがよく分かって驚かされたもんだ。
「そんな長い時間が過ぎたはずなのに人の生活にそんなに変化が見当たらなかったのが、ね?」
「あー・・・」
それは複雑だ。
自分が文字通り命を懸けて行ってきた仕事、この世界のアルファメスを正常に戻すことは人々の生活がより豊かになることが一つの目安になると女神さまが言っていた。
ヒトの生活において道は大きな役割を担っている。経済や物流の動きなんかは交通によって大きく変動することは地球の歴史を見ても明らかだし、その地球の日本の田舎でもいまだに都会と比べるとネット環境が悪かったり本の発売やテレビ番組の放送などに時間差がある。
この世界よりもはるかにアルファメスが安定してる地球でそれだ。これがこのアールピーナだったらどれほどの影響が出てくるんだ?
正直言ってオレには想像もつかねぇ・・・
でも先生はオレよりも頭が切れる。だからそのオレには想像がつかなかったこともできるからこそ絶望してるのかもしれない。
自分が人生のすべてをなげうって成し遂げようとしてきたことが全く実を結んでいなかったとあっては絶望するのも当然だろうな。
「まぁ、そうでもなきゃタイチ君がこの世界に来てるわけないですもん。君があの家に来た時点で覚悟はしていたんですけどね・・・」
「・・・そうスか」
やっぱ、オレってここがだめだなぁ・・・
前にもレオルドが思い悩んでいた時にもオレは自分がどう言ってやればいいのかわからねぇで右往左往していた。
そして今回もオレはあれこれと考えるだけで何一つも悩んでいる人に何の助けもできなかった。
これがただの知り合い程度であればオレも別にここまで考えることもなかっただろう。でもその相手はほかでもねぇ先生やレオルドだ。
口に出したらウザいくらいに調子に乗って絡んでくるのが解ってるから言わないけど、オレはコイツ等をホントに信頼している。
日本で一緒に仕事をしてきた同僚や先輩に後輩とはわけが違う。本当の意味で命を預け合って戦場を生き残ってきたレオルドとその戦場でも役に立つ知識や経験を余すことなくオレに伝授してくれた先生。
今のオレがこうして生きているのは間違えようもなく先生やレオルドのおかげだ。
ホントに感謝している。
そんな二人だからこそオレは手助けがしたいのに、二人とも過去に大変な思いをしていて今でそれに苦しんでいるだろうに何の力にもなってやれてねぇのか悔しくて悲しくて情けねぇ・・・ッ!
結局先生は自分で立ち直ったようであのまま道を歩いていく。
そのあとを黙ってついていくオレとリナ。
別に気まずいわけじゃない。確かにいつも陽気でムードメイカーの先生がアレからすっかり無口になっていて空気が重く感じなくもないが普段が少々アレ過ぎたんだ。うん。
道をてくてくと歩いていると後ろから馬の蹄の音と車輪が回る音が聞こえてきた。俺達三人は誰からともなく道の恥へと寄ってこれから来るであろう馬車に道を譲ろうとしていたが、オレはなんだか嫌な予感がしてきた。
一応用心のためにリナや先生にフードをかぶるように伝える。リナの新装備の一つ『女帝豹の羽織』はフード付きのマントだ。ただその備え付きのフードをかぶればいい。
先生はもうオレが言う前に音が聞こえた時にもう被っていた。
ダカカ! ダカカ! とやかましく馬車が通り過ぎていく。そう言えば馬車そのものを見たのはこれが初めてだな。この世界にやってきて尋常じゃなくレベルアップした恩恵か動体威力も上がってるおかげでかなり細部まで見えた。
どうやらこの馬車は地球の車に搭載されているスプリングのように衝撃を吸収するためのからくりはないようだ。これなら道の凸凹ですごく揺れるだろうし、尻にもの凄く負担がかかりそう。
扉らしく部分にはデカデカと何かしらの模様が描かれている。もしかして貴族の家紋なのか?
うわぁー、さらに嫌な予感がしてきた。これ、『潜伏』系か『気配隠蔽』系統のスキルでも使っておけばよかったか?
あ、先生はもうとっくに使ってるっぽいな。ヤベ、オレ気が付かねぇうちに気が緩んでたんだ。こんな自分に思わず殺意がよぎるが案の定馬車が急停車した――と思ったら急に馬が暴れだし、また急発進した。御者が慌てて言う事を聞かそうとするが、いくら声をかけられても鞭を打たれてもそんなん知ったこっちゃねぇッ!! と言わんばかりに馬が全力で駆け、馬車をどこか遠くへと運んでいった。
「何だったんだ?」
「いや君のせいだよ」
「アレはちょっと大人げなさすぎですぞ? 主殿よ・・・」
「タイチ・・・」
「・・・・・・えぇ?」
なんで率直な感想を言っただけでこんな言われようなんだ?
呆れた。
これがアタシ、リナ・カウリアの率直な感想だ。
アタシのコンヤクシャ? まぁ、要するに旦那のタイチが言った「何なんだ?」のセリフだけど、アレ、どう考えても急にあふれ出てきたタイチの殺気に充てられてたわよね?
アタシだってそれなりの修羅場をくぐってきたと思うけど正直あの殺気はない。あんな近くにいるだけで何をされるかまるで分らないような、まるで嵐や大津波といった災害が意志を持ったような冗談としか言いようのない存在感があった。
漏れ出たのはあくまで一瞬だったし、近くにいて気配に敏感なアタシだからここまで感じることができたんだろうけど、それでもあんな凄まじい殺気を放てる存在がすぐ近くにいるのにのんきに立ち止まってたらりできるもんですか!
アタシにはあの慌てて逃げていった馬の気持ちが痛いほどわかる。
アタシもあんな殺気の中でとっさに逃げだしそうになったもの。ニンゲンは気付かなかったようだし、勝手に逃げだしたという理由であの馬たちは殺されるのかな? 理不尽だなぁ・・・
かわいそうだなぁ・・・
でももうあの馬車も見えなくなっちゃった。今からあの馬たちを助けることも無理だろうなぁ・・・
「ごめんね・・・」
どうせ聞こえるはずもないのにあの馬たちに謝った。気休めにもならないだろうけど、こうしたかった。
「ひどいな・・・」
あれからみんなで少しおしゃべりに興じながら道を歩いてるんだが、時々・・・
「見えてるんだよなぁ・・・」
仏さんが
「多分死体を道のわきに埋めてたんだけど雨風にさらされて埋め立てた土が流れ、埋めていた死体が出てきたんでしょうね・・・」
「唯一の救いはそれでも一応は埋葬されていたんだってことろですかね?」
ひょっこりと顔の半分がコンニチワしてる状態でももともとはちゃんと埋葬されていたのならある種の救いだろうな。
風にさらされている躯に悲しげな表情で言っていた先生もオレが言った言葉に多少は賛成なのだろう。一つ頷くと心なしか晴れやかな表情で歩きだし
「あ、ちょっと待っててくださいね」
ものの見事にずっこけていた。
とりあえず恨めしそうに見てくる先生を極力視界に入れないようにしつつ
「『クレイムーブ』『クリエイトストーン』」
魔法を展開。雨風にさらされていた仏さんを再び地中に埋めつつその場に墓標代わりの石を精製。何とも簡素でみすぼらしいミバエかもしれないが野ざらしになっているよりはるかにマシだろう。
ついでにストレージから聖水を取り出して
「成仏しなよ」
冥福を祈っておく。アンデッド、スケルトンなんて魔物が存在するこの世界だ。この仏さんも頬っておけばそのうちスケルトンになりましたじゃあまりにも不憫ってものじゃねぇか。
ここで見かけたのも何かの縁。スケルトンになんてなってしまう前にちゃんと埋葬しなおしてやるのも大事だろうさ
「ついでにほかの仏さんにも祈っとくか・・・」
スケルトンになるならないは別としても死者を粗末に扱うのは好きじゃねぇ
「タイチって意外に律儀なんだ・・・」
「確かにこれは少々意外ですな。しかし悪い事でもありますまい」
「そうだけど。それでもちょっと意外」
「えれぇ言われようだな・・・」
オレが死者を弔うのがそんなに意外なのかよ
「さて、これで最後だな」
最後の仏さんに冥福を祈ってからまたオレ達は歩き出す。理由はなんであれ余計な寄り道をしたことを謝ったんだが
「え? 気にする必要あったの?」
「別に悪い事じゃないわよね?」
「少々意外ではありましたが死者を粗末にせずきちんと埋葬することは立派なことですぞ」
先生にリナにレオルドがそう言ってくれた。
さっきまでの反応ならここで調子に乗ってくるか、心配するか、そもそもオレが謝ることに驚くかのどれかの反応が返ってくると思っていたオレは少々肩透かしを食らった気分だが、気を取り直して歩く。
できれば今日中にまりか最低でも村には到着したいと考えてるんだが、
「マズいな・・・」
「あ~、まぁ気付くよね?」
「へ? 何がですか?」
オレのつぶやきに仕方がないかという表情で返す先生。そしてオレ等二人の会話について来れていないリナが小首をかしげた。
リナには分からないのか? 今現在オレ等がいるこの道のすぐそばで数えただけでも三か所ほどダンジョンの気配がある。どれもこれも小さく弱弱しい気配だからまだ生まれたばかりのダンジョンの赤ちゃんってところだろうけどもう魔物が生まれてもおかしくねぇレベルにはなってるな。
できれば今から潰しておきたいが場所が地中の奥深くや道のはずれの岩陰にあるのネックだぜ。別に魔法を使えばどうとでもなる場所ではあるんだが、あまり人前で実力を出しすぎるのもどうかと思うんだよ。
この世界に関してオレは知らないことが多すぎる。
そんな中であの森で一年以上の間の闘争で得た力を示せば、一般市民からはともかく王侯貴族からは『世間知らずの実力者』なんていいかもなんじゃなかろうか
そんなに演技や機転が利く方でもないオレはできればそう言った権力者にはなるべく関わらない方向で行きたい。
・・・でも、な?
「もういまさら、か・・・」
もう道端であれだけ墓を創ったんだ。もう人目とか気にしてる場合じゃねぇもんな
見つけちまったんだし
「もう割り切るか・・・」
「え? なにを?」
そもそも探索系の魔法にオレ達以外のヒトの反応はないんだ。もうこれで誰かに見られても不可抗力ってもんだろ
「というわけで『クレイムーブ』」
とりあえずオレ達から一番近い地中の多く深くに埋まっているダンジョンコアから
まずは埋まってる地中から引っ張り出そうとするんだけど
ダンジョンコアには意志、というより防衛本能のようなものが備わっているようで自分の周りの岩石を固めてオレに引っ張られないようにしているが
「甘いな」
そんなことでどうにかできるわけねぇだろ
ダンジョンコアだけを引っ張り出せねぇんだったらその周りの岩石ごと全部引きずりだしちまえばいいんだよ!
早速ダンジョンコアの魔力効果範囲測定。それにより硬くなっているであろう岩石の面積を割り出しつつ確認のために魔力を流す。多少の修正があるがおおよそ予想通りに測定完了。
岩石の周りの土に魔法効果を施してダンジョンコアとその周辺の岩石をオレの元へと引っ張っていく。ダンジョンコアも抵抗をするが既に周りの岩石を固めることに魔力を使っているせいかその抵抗は弱い。問答無用で押し切れるな
「ッラ!」
気合を入れて引っ張り上げると、徐々に徐々にゆっくりと地面からせり上がってきて出てきたのは直径二メートルはあろうかという岩でできた球体だった。
「あ~、生まれて間もないとは言え流石ダンジョンコア。まさかここまで周囲の物質を我が物にできるなんてね・・・」
「何かよくわかんないんですけど、敵ってことでいいんですかね?」
リナが槍を構えて警戒態勢に入る。でももうコイツにそこまで抵抗できる力なんてあるか? なんかもう今にも消えてなくなりそうなほどに感じ取れる力が弱弱しくなってるんだけど・・・
「まぁ、だからと言って別にだらだらと時間をかけていい理由にもならねぇわな」
別にもう何のイベントもハプニングもないんであればもうこのままサクサクと進めていっていいんじゃねぇの?
そう思ってレオルドを構えたんだけど
「流石にそうは問屋が卸さねぇか・・・」
「まさかまさかとは思ってたけどここまでやるとはねぇ~」
「え? えぇ? 二人ともなんで落ち着いているんですか? ワタシだけ? ワタシだけがこんなに混乱してるの!?」
やれやれだぜと言わんばかりの態度をとるオレ達にただいま絶賛大混乱中と言わんばかりの状態だったリナが噛みつく勢いでツッコミを入れた。
だって、ね?
『コアガードゴーレム Lv60』
さっきから抵抗が弱いと感じていたのはダンジョンコアが自身の周囲の岩石を魔物に変えるのに力を裂いていてそこまで手が回らなかっただけなのね。
「そんでオレが引っ張り上げたコアはもちろん、それ以外のオレ等の周辺にあったダンジョンコアも続々この魔物に逃げ込んでいるな」
「邪魔したいんだけど。ね?」
いや~、困ったねぇ~! と言わんばかりの先生。まぁ、気持ちはわかる。このまま頬っておけばここら一体の幼いダンジョンコアをゼンブ吸収したとんでもない化け物が生まれることだろう。うん。考えただけでも目の前が暗くなりそうな絶望的情報だ。
でも吸収されるのはあくまでも幼いダンジョンコアだ。そうじゃない、ある程度成長したダンジョンコアであればすでに自分の身は自分で得護れる程度には戦力も整えてるだろうし今ここに参加する意味がない。だから今ここで参戦してくるのは間違いなく自分の身を護れるほどの戦力が整っていない幼いダンジョンコアたちだ。
これらはまさに己の存亡をかけて自らの脅威であるオレを殺すための自分たちにできる最強の魔物を生み出し、戦う事だろう。
つまり、本来であれば見つけられても破壊するまでが死ぬほどめんどくせぇダンジョンコアを随分な数ぶち壊せるチャンスな訳だ。
未知の怪物に警戒してせっかくのチャンスを棒に振るか
おそらく前代未聞であろう化け物を危険承知で討伐してこのチャンスをものにするか
選択肢はこの二つ。
オレ一人だったら迷わず後者を選ぶ。この方が合理的だからな
でもこれがリナと二人だけなら残念ながら前者を選んでいただろうな。リナが聞いたらつらいし、悔しい思いをさせるだろうがそんな危険にリナはさらせねぇとオレは判断していただろう。
でも、いやだからこそ
「打って出る・・・!」
今ここには先生もいるじゃねぇか。
例えオレにリナを護れる余裕が無くても先生がいれば何かしらのフォローはしてくれんだろ?
「あ、アタシも頭数に入ってる? ・・・仕ッ方ないなぁ~~。・・・いいよ?」
「・・・アンガトよ」
「あの~、そろそろワタシも会話に入れてくださいよ~・・・」
うざったい仕草ながらもどこかホントにうれしそうに言う先生に実はそんな表情に若干ときめいてしまったことを隠すためにもやや語意を強めて言うオレ。そしてそんな二人の空気に混ぜてくれと若干涙目で言うリナ。
そんなリナの様子に微苦笑が漏れる。そしてそうしてる間にもダンジョンコアは収束していき、それを収めている岩球もどんどん変化していく。
黒く大きくなったと思えば急に白くなったり小さくなったり赤くなったり白銀色になったり様々な変化が起こり、やがて・・・
『アダマイトガーゴーレム Lv1009』
こんな鑑定結果になっちゃった。
「レベルだけを見ればそこまで絶望すべき相手じゃねぇな」
「え、そう? ずいぶんレベルが上がってない? いくら複数のダンジョンコアが構築した魔物とはいえ、結局は生まれたばかりの赤ちゃんコアばかりのはずなのになんでこんなに上がっているのかしら?」
「えっと、よくわかんないですけどえらく強そうになりましたよね? あの岩ボール」
リナが目を白黒させながら言う。うん。確かにただの岩が寄せ集まってできただけの球体をダンジョンコアが操っていただけの魔物だったのに
今では陽光を反射してわずかに虹色にきらめく鉄色の翼を持ち、立派な甲冑に身を包む歴戦の騎士という風貌のゴーレムになっていた。いやぁ~、さっきまで丸くてコロコロしていたやつと同一人物(いや、同一魔物?)とは思えませんな。腕は肘から手首までの装甲が左右両腕共に盾のようになっているし、それぞれの手に大剣と大斧が握られている。おそらく防御はあの立派な鎧と籠手の大舘に任せて魔物自身は攻撃に集中しているタイプと見た。
「厄介だな・・・」
シンプルだ。戦力的には別に複雑でもなんでもない。おそらくコイツに終息したダンジョンコアたちがそれぞれに役割分担をしてこの魔物を作り上げたんだろう。
それゆえに中々切り崩せねぇ・・・!
先生はリナを守ることを最優先にしているな。リナも自分ではとてもかなわないことを承知しているようで武器を構えるだけで動こうとしない。うん。英断だ。
だから、
「コイツはオレが殺るッ!!」
まずはあいさつ代わりに
「――ッハ!!」
音速の踏み込み
オレ自身の腕力と体重、魔力と気力をたっぷりと籠めて振り下ろされたレオルドを
ガッキィイイィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンッ!!!!!!
「止めやがった・・・」
別に手を抜いていたわけじゃない。これで終わるならよし。そうでなくとも手の内を見せてもらおうと放った攻撃が右腕の大盾に防がれた!
『フム、相当の剛力の持ち主。相手にとって不足無し!!』
流暢にしゃべってる? 喋れてもせいぜい片言だったりイントネーションがおかしかったりしていた魔物が!?
あまりの衝撃に少々硬直しちまってた。そんでそんなスキを逃してくれるはずもなく、
『では参るッ!!』
一気呵成に責め立てられた。
大斧が!
大剣が!
雨あられと撃ち込まれ、その対応に追われているとそれらの攻撃を支えていた豪脚による蹴りが飛んでくる!
魔法も駆使しつつレオルドで攻撃を裁く、が
「重い・・・!」
もうすっかり化け物ステータスになっているこのオレが押されている?
いやいや
「勝負はこれからだろ!!」
敢えて!
敢えて攻撃を裁かずに受け流して一気に懐へ!
そんなオレを迎撃するための蹴りを十分な威力が乗る前に膝を抑えて封じ込め、その膝を支えにいぅきにジャンプ!レオルドを天高く振り上げて
「【大地激震】ッ!」
その兜カチ割ってやる!
迎撃用に構えていた大斧と大剣で間一髪の防御に成功するが
「安心するにはまだ早いぜ!!」
コッチにはな
「『インフェルノ』!『クレイムーブ』!『エアプレッシャー』!」
魔法という手札があるんだよ!
『グ、ムォオオ・・・!』
風属性中級魔法の『エアプレッシャー』がまるで滝のように地面へと叩きつける風でゴーレムの動きを封じる。
本来、中級程度の魔法ではここまで高レベルの魔物を押さえ込むなんてできねぇ。それが証拠に多少は動きが鈍くなった。が、それだけだ。ここに土属性初級魔法の『クレイムーブ』が加わってゴーレムの足をガッチリと拘束する。
ここまでやってもほんの数瞬を稼げるのが精いっぱい。すぐにこれらの拘束をぶち破って自由になることだろう。
だがその数瞬で十分!
火属性上級魔法の『インフェルノ』。文字通り地獄の業火をほうふつとさせる炎が立ち上り、効果範囲以内に存在する敵を焼き尽くす魔法だ。
今まで何度か使って見て分かったんだが、この魔法は効果範囲を狭めれば狭める程炎の威力が上がるようだがその代わりに発動するまで少々時間がかかってしまう。
だから一番最初に詠唱したにもかかわらず後からの二つの魔法よりも遅く発動したんだ。
「普通だったらここで王手なんだろうけど・・・」
コイツクラスの強さだったら・・・
『《オルフェル》・・・。うむ。これが良いな』
なんて呟いたと思ったら
オレの魔法が消えやがった




