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第十三話 訓練と志

書き直しました

「えっと。その…、お、落ち着けましたか?」

「はい。ご迷惑をおかけしました」

 胸の内にたまっていた感情のすべてを吐き出したオレはかなりスッキリした。それはもう晴れやかな気持ち。きっと今のオレは悟りでも開いたような穏やかな表情(カオ)をしてるに違いない。

 そんなオレをドン引きしたような表情で見ていた先生が咳ばらいをしつつ何とか自分の気持ちを切り替えた様子。


「では改めて君には気力操作と魔力操作を身に着けてもらいます」

「はい。努力します」

 イカン。

 せっかく穏やかな気持ちになったはずなのにまた滾ってきた…ッ!

 気力操作。これを憶えればあの憧れてどうしようもなかった主人公たちやそのライバルたちのあの痺れるような技をこのオレが使うことができる。

 そう思っただけで胸が張り裂けそうなほどに興奮する。あのどんな逆境でも心を奮い立たせて誰よりも前に出続けて奇跡を起こしたヒーローに憧れた少年のように、どんな生まれでもどれほどに周りから否定されても決して自分をあきらめずにど根性で火影になった忍者のように、家族や周りの人々を護るために本来なら決して巻き込まれることもなかったはずの大戦に身を投じて己の血の宿命も何もかもを背負って立ったオレンジ頭の高校生のようになれる。

 そう考えただけで胸の鼓動だけで全身が震えるようだ。

 どうやればいいのかなんてわからない。でも絶対にものにして見せる。久方ぶりに燃えるようなやる気を全身に漲らせながら先生の案内に従った。



 どうやらこの家の地下はオレが思ってる以上に広いようでリビングの下に隠し通路があり、そこから地下へと行けた。

 昨日家探ししてた時にはこんな機能には気づけなかったよ…


 そして地下通路を通る間にいくつも扉があった。わかりやすいように記号が張りつけられていた。あのフラスコのような記号が張りつけられた部屋が錬金術関連の部屋なのか? それとも薬の保管庫? 分からんがとにかくいろんな部屋を取りすぎた。中には明らかにヤバそうなドクロマークの部屋まであった。あれは一体…?

 いずれ全部の部屋について教えてもらおうと思いつつたどり着いた部屋に入ると


「精神と〇の間?」

 またこれかよ


「さぁ、ここでなら思いっきり暴れることができます。ちなみに部屋のモデルはあの国民的バトル漫画の―」

「うん。もうわかる。権利関係が怖いから具体的に言わないで」

 ホント。著作権とか怖いから

 裁判とかになったら普通に怖くて怖くてしょうがないから

 オレの懇願で内心を察したようで先生がどこか満足気にしていた。

 メイド服の件と良い、この人絶対に愉快犯だろ

 いいように遊ばれたことに若干腹を立てながらも稽古をつけてもらうために屈伸をしたり腰を大きく回したりと準備運動をして備える。

 気力とか魔力とかよくわからんことも多いがそれでも身体を動かすのであれば無田にはならないはずだからな。時間は有効に使おう。


「さて、君には今日中に気力操作と魔力の操作の両方を憶えてもらいます」

「それはもう聞きましたが具体的にはどうやって習得するんですか?」

 オレのもうすっかり体中の筋を伸ばしていつでも運動ができる状態に仕上げた。今ならマラソンでもトライアスロンでもやってやる

 なんて意気込んでいるオレに手を当てた先生が


「こうやってですッ!!!」

 ズドンッ!!!!

「ぐ、…? がァァ、ァアア…ッ!」

 なんだ? いったい何をされたんだオレは! 先生はオレの腹に手を当てていただけのはずだ。なのにイキナリとんでもない衝撃が身体を貫いた。

 衝撃は体を突き抜けるどころか血管を駆け巡って体の隅々まで暴れまわっていくみたいだ!

 いたい!

 イタイ!痛い!

 イタイ!いたい!痛い!

 痛い!いたい!イタイ!イタイ!いたい!痛いッ!


「今私は松田君の身体に直接『気』を叩きこみました。体中が痛いでしょ? それは君の身体が『気』を持て余しているからです。君自身の『気』を動かして私の『気』を飲み込まないとその痛みは何時までも続きますよ?」

 こんな状況なのになんでか耳に届く先生の声。

 先生! そもそも気を動かすって何なんだよ? 先生の気を飲み込むってどうやればいいんだよ!? ワケわかんねぇよ!!

 普通こんなことはもっと段階を踏んで教えていくもんじゃねぇの? いきなり気を動かせなんてどうやればいいのかわかんねぇよッ!


「痛いですか? でも、痛い『だけ』ですか? よぉく自分の身体にある感覚を感じ取ってみてください。ゼッタイに痛み以外の感覚があるはずですよ?」

 痛みだけ? 痛み以外の感覚…? 分かんねぇよ。痛みでいろんな感覚が塗りつぶされていて感じることなんて出来ねぇよッ!


「本当ならもっと段階を踏んで習得すべき内容です。まず己の気を知覚するのに才能がある奴でも年単位の時間が必要です」

 アンタそんなこと全部すっ飛ばしてオレにこんなことしてんのッ? マジでふざけんなッ!


「無茶なことをしてる自覚はありますよ? でもね。この森で年単位の時間が必要な修行ができると思ってるんですか?」

 ここがどんなに危険なのか君も知ってるでしょ? と先生は言う。

 確かにこの森は危険だ。オレみたいな素人が足を踏み入れていい場所じゃねぇ。これはこんなオレでもはっきりわかる。言ってしまえばRPGの高レベルダンジョンに初期装備にレベルも1のままで入っているような状態。

 それがオレだ。

 本来ならここにいていい人間じゃねぇことはわかる。でもこんな方法で死んでしまえばそれこそ本末転倒じゃねぇの!?


「そして無茶な所業を君に課して君が死んでしまえば本末転倒。えぇ。わかっています。でも君には一刻も早く強くなってもらわないといけないんです」

 理由はわかりますよね? と先生。

 確かにオレにモタモタしてる時間はない。一刻も早く強くなって魔物を多く殺す。殺処分。駆除何でもいい。とにかく仕留めまくる

 そして人助けもする。そうすれば母さんや京香を護れる。

 そのためにもオレは一刻も早く強くならないといけない。


 やってやる…ッ!


 痛みにもほんの少しだけ慣れた。今なら…ッ!



 探させるかも

 痛み以外の()()()




 見つけた。

 痛みの奥? 中心にある炎? とにかくメチャクチャ熱い()()()があった。そしてその熱さに引っ張られる小さなナニカもある。

 この熱いのが気? だとするとこの小さなのがオレの気なのか?

 だとすればこれを動かすことができればこの痛みも消えるのか? 分からんがやってみるしかない。動け。動け! 動けッ!



 「や、やっと、終わった…」

 ぐったりと大の字に倒れながら息を吐く。

 ようやくできた。やっと痛みを消せた。

 痛みに悶えながらも気を動かすことに成功したオレだが、遅い。ゆっくりと緩慢な動きでイライラさせられたがそれでも何とか動かせたのでこれで今この瞬間も燃えるような痛みを寄越してくる先生の気を包み込もうとしたんだが

「まさか気が動き回るなんてねぇ…」

 逃げられた。

 先生の気はまるで意志を持っているようにオレの気から逃げ回った。

 おかげでオレは先生の気を追うように自分の気を動かす必要があった。

 こっちは徒歩くらいの速さでしか動かせないのにあっちは新幹線並みの速さで動かせるのだから勝てるわけがなかった。

 あまりにもあんまりな差に思わず心折れそうになった。だがこんなところで折れるわけにはいかないので何とか心を奮い立たせて何とか気を動かし続けているうちに何とか徒歩から原チャリくらいのスピードは出せるようにはなった。

 まぁ、それでも全然追いつけるはずもないけどそれでも待ち伏せとか作戦を立てることで何とか先生に気に触れることができた。

 多分先生がオレがある程度自在に気を動かせるようになったらそうなるように打ち込んだと思うけどこれまで全くかすりもしなかった気がいきなり飛び込んできたことには驚かされた。

 そしてオレの気と先生の気が触れあった瞬間。二つの異なる気が一つに融合した。先生の言っていた『気を取り込む』とはこのことなんだと思う。先生とオレ。二人の気の量は歴然だったはずなのに今では先生の気だったものも全部オレの気になっている。そのおかげで今ではオレの気の量は動かし始めたときの三倍以上に跳ね上がっている。



「もう大丈夫そうですね」

 大の字に倒れているオレを覗き込むようにしながら先生が声をかけてきた。

「えぇ。なんとか終わりました」

 よっこらせと声を上げつつ立ち上がるオレ。力を込めるたびに関節からパキパキと音が鳴る。痛みに耐えるときにそれなりに身体をよじっていたからそれなりに凝ったのだろう。試しに肩を回しながら首をかしげるとボキボキと音が鳴った。

 あぁ、思ったよりも肩が凝っている。首も痛い



「ではやってみてください」

「はい。フンッ!」

 気合を入れてもう一度気力を操作してみる。自然体で身体の内側に意識を向けると丹田。へその下あたりに気を感じる。それを動かしてみて両掌に集める。

 イメージとしては某ハンターマンガのいかれサイコパスな手品師が使うガムとゴムの性質を併せ持つオーラ。あんな風に掌にくっついてゴムのように伸びるイメージをもって両手を広げ伸ばす。


「おぉ。もうそんなことまで出来るようになったんですか。これならもうすぐですね」

「もうすぐって何がです?」

 今日はもう疲れたから休ませてほしいのが本音だ。なんせ文字通り体中に痛みを感じる拷問を受けながら何とかここまで気力操作をものにしたんだからいい加減休ませてほしい。

「気力により身体強化。わかりやすく言うと界王〇です」

「あとは一体何が必要なんでしょうか?」

 疲れた?

 休みたい?

 はて? 一体何のことでしょうか? まだまだ稽古は続く。



「というかそもそも魔法とかでも身体強化ってできないんですか?」

 そう言えば魔法なんてものもあるんだからそれにも身体能力を上げる魔法は理想なんだけど…

「もちろんあります。しかし気力と比べた場合気力の方が効率がいいんです」

 より多くの魔力を使ってより高位の魔法で強化を施せば魔法でも十分以上に身体能力を向上させられます。でもそれもあくまで術者本人よりもその仲間に使用すること前提であることが多いんですよ

 と、先生は言う。つまり身体能力強化であれば魔法よりもこの気力で行う方が効率がいいのね。エネルギー効率。うん。すごく大事だ


 さて、ではとにかくやってみよう。あの国民的バトル漫画で登場する主人公の必殺技。あの後で主人公が覚醒してからあまり使われていなかったのが悲しかったがあの技があったからこそ主人公の覚醒があったのだと思うと熱い…ッ!

「界王〇…ッ!」

 幼いころに憧れて、中二病の時に何度も妄想したあの技。イメージなんてもう何年も前から出来上がっている。そのイメージ通りに気力を動かした結果



 なにも起こらない。



 あれ?




 どうして?




 なにか間違っていた? もっとこう。赤いオーラのようなものを纏うんじゃねぇの? なんで何の変化も起こらないの? なんで?


「いえ、できてますよ?」

「ホントですか?」

 特にこれと言って変化がありませんよ? あの如何にも強化されましたと言わんばかりの猛々しく雄々しいオーラが出ておりませんがホントに成功してるんですか?

 期待していただけに落ち込んでいたオレに先生が何かを投げてよこしてきた。

「これを殴ってみてください今すぐに」

 いきなり急かしてくるね。まぁ、いいか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 うまくいかなかった腹いせもかねて本気で殴ってみた。



 バギンッッ!!



「へ?」

 なんかすごく金属音が聞こえた。

 あれ? 投げられたのって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ね? 出来てるでしょ?」

「……………え?」

 え? 今何が起こった?

 なにがなんだかよくわからないことにパニックになっているとオレの腕に残っていた()()を取り出した。

「これ、れっきとした金属よ?」

 もちろん言うてそこまで頑丈な金属でもないんだけど間違っても素人が無茶苦茶な姿勢(フォーム)で殴るだけで穴があけられるほど脆くもないわねぇ~

 なんてのんきに言っている先生の言葉にだんだんオレは現実に戻ってこれた。

 つまりオレの気力による肉体強化は成功。このなんとも地味で分かりにくい状態がオレの界王〇らしい。もっと派手に、それこそ原作主人公のようになれると思っていたから残念ではある。でも

「これはこれで面白いな」

 何はともあれ、憧れて憧れてどうしようもなかったマンガの技の一つを自分の物にできたんだ。マンガが青春の一ページだったオレにとってこんなにうれしいことはない。



 ついテンションが上がってしまってその場でシャドーボクシングを始めたり、跳んだり跳ねたりしているとわかってきたことがある。

 まずこの気力による身体強化は奥深い。ハンターでハンターなマンガで出てきたようなオーラを纏った状態をはじめとして殴るときや蹴るときなどにはその拳の部分や足の部分に気力を集中させることでより攻撃力を上げることができるようだった。だがこの方法では集中させた場所以外のオーラが少なくなり、そこ以外を攻撃させた場合のリスクが跳ね上がることも分かった。

 ちなみにこの方法は防御でも有効で例えば気を両腕、肘から先に集中させた状態でクロスアームブロックで攻撃を受けると今のオレでも軽トラくらいなら受け止められそうだ。


 次はオーラ、気の移動時間。先ほど攻撃したい場所に気を集中させることでより攻撃力を上げられることが分かったがそのためにはオーラ、気を移動させる必要がある。先生の稽古のおかげで初日にしては気力を動かせているらしいオレだがそれでもオレが今の身体能力で全力で動くとどうしても気の移動よりも早く動けてしまうため気の強化が間に合わない事態になっている。

 そのせいで気の強化があると思ってだけに思わぬ痛みで足をくじきそうになった。反省しなくては…

 おそらく先生がやってくれたような稽古で自分の気を動かし続ければいつでも自分の肉体のどこの強化も瞬時にできるようになる。と思いたい


 最後に気力の量。先生のおかげでそれなりの量を持っている。だが今のこのやり方では維持するだけで二時間が限界。非戦闘時に移動させるときなどにも消費しているから実際に戦闘で使える時間は三十分も持たないだろう

「より正確に言えば相手の実力や逃げるときの分も考えると十分がいいところじゃない?」

「…そうですか」

 先生の感想にオレは苦いものを感じながら頷く。

 分かってる。

 最初からそんな全部できるようになれるわけがないことはわかっている。だがそれでもやはり


「今のオレではまだまだこの森では通用しそうにありませんね」

 思わずため息も出る。

 我ながら自惚れもいいところだと思う。今までは幸運に幸運が重なっただけでどれもこれもオレの実力じゃない。

 にもかかわらずまだまだオレの実力では通用しない。この事実に苦いものを感じている。当然なことなのにそれで納得できていない自分の内心にガキくせぇなと感じながらも今はそれでいいと思い直す。

 今のオレにはもっと力が必要。

 生き残るためにも目標を達成するためにも力はいくらあってもいい。

「もっともっと貪欲になりなさい。大丈夫。この剣じゃとまで言われたこの私が君をもっと先へと押し上げて見せるから」

 だから死ぬ気で付いてきなさい

 なんて最後の部分は茶目っ気有りで言った先生だがそれ以外の部分は底冷えするような威圧感というか覇気と覚悟があった。

 オレはそんな先生の言葉に頷く以外できなかった。



「さて、改めて気力の獲得おめでとう」

 パチパチと手をたたく先生に答えつつ早速オレは質問をかける。気力を増やすにはどうすればいいのか。気力の操作のコツ。いろんな質問を投げかけるオレに先生は真摯に向き合って答えてくれる。

 まず気力の増やし方にはいろんな方法があった。

 一つはレベルアップ。ステータスが向上するように気力も増えていくことが分かった。だがそれだけではだめだ

 二つ目の方法は筋トレと同じく毎日限界スレスレまで使って回復させていく。筋トレと同じく回復していく過程で総量が増えていくらしい。

 ほかにも瞑想や森林浴などいろんな方法があることが分かった。だからオレは今この瞬間も気力を操作し続けて消費させている。目標は寝てるとき以外は常に維持できるほどの気力量を獲得することだ。

「うん。いい目標よ。その調子なら気力操作のスキル獲得も近いわね」

 気力操作? それはなんぞ?

「ではこの調子で魔力についても覚えてもらうわ」

 聞きたいことはある。でも先生の一言で気持ちを切り替えた

 日本の授業でも科目別に分かれていて授業中に気になっても授業とは別の科目の事を考えても仕方がなかったんだからそれと同じだと思うことにした。



「では次に魔力についてね」

 先生は手を出しながら言ってきた。この手は握れということだろうか?

 とりあえず握ってみた。先生がうなずいてくれたのでこれで合っていたらしい。良かった。これで間違っていたら失礼だもんね


 しっかりと握るオレに先生は一声かけるとすぐにそれは起こった。

「うぉ?」

 手のひらから肘にかけていきなり痺れるような感覚が走る。思わず意識がそちらに集中してしまい、気力のつられて動いてしまう。だがいくら気力がその痺れを包んでも何の変化もないところから今オレは魔力を注がれたことが分かった。


「今私は君に魔力を流しています。まだまだ魔法もロクに使っていない君には突然の感覚で戸惑うと思います。でも君には今ここで魔力の感覚をつかんで自分の意思で操作できるようになってもらいます」

 またこれかよ。なんて思ってしまって仕方ないと思う。

 また痛みを無視して深く集中していかなくてはいけなくなり、思わず泣きそうになった。

 だがここれ泣いたところで何も変わらないこともわかっているのでため息もかみ殺して深く集中を開始する。


 中途半端ではだめだ。この痛みのせいで中途半端な集中なんてすぐに破られる。だから一気に深くまで集中しきってしまうことが肝要。部活の時の試合の直前や終活の時の面接直前のように呼吸を整えて自分から余計なものを取り除いていくイメージで集中…ッ!


 まずは匂いが消えた。


 次に音も聞こえづらくなり、


 やがて体の感覚も消えていく。


 深く集中させていき、感じていた痛みの奥にある感覚。気力の時と似てるようで違う力を感じる。気力が炎ならこっちは水か? いや、違うな。感じていた痛みから連想して電気。電気の形が一番しっくり来た。

 この電気と同じ力。あるな。先日魔法を使った時も感じたハンドボールサイズのナニか。やはりこれが魔力だったんだ。気力と同じ要領動かすこともできた。ので早速先生の魔力をくっつけてみる。

 くっついた瞬間。腕の痛みは消えた。だがオレの意識はそんなことよりも魔力で触れることで感じ取れた先生の魔力に圧倒されていた。



 見上げるような山脈。雄大で堂々としている山脈如き存在感に圧倒されていた。



「大丈夫?」

 心配そうにこちらを見下ろしてくる先生を見てようやくオレは今その場にへたり込んでいたことが分かった。

 先生の言葉に返事も出来ず、オレは自分の手のひらを見つめた。

 オレの手のひら。これまでの人生で何度も見てきたはずなのに今はこの掌の奥にあの山脈があるような気がする。

 この気持ちは何だろう?

 興奮? 高揚? 分からない。そのどちらでもないようにも感じるけどそのどちらもあるように感じる。自分でも何言ってるのかよくわからない。でもあんな力をオレも身に着けることができるかもしれない。そう考えるだけで胸がドキドキする。



 気持ちを切り替えた俺はすぐに立ち上がって改めて魔力を操作してみる。

 うん。気力の操作もしているから大分遅いな。気力の方もかなり遅くなっている。やはりいきなり二つの力を操作するのは難易度が高いのかな?

 あれ? そういえば

「先生。この魔力と気力ですけど混ぜるようにすれば何が起こるんですか?」

 二つの力があるのならその力の融合なんてこともできるのでは?

「魔力と気力を? まぁ、融合は出来ますね。そもそも魔力と気力が一番習得が簡単で基本的な力だから習得を急がせたのであってほかにもこの世界にはいろんな力があるんですから」

 先生は実に言いにくそうに言っている。言ってる内容は普通。というか別に言い淀む必要もなさそうなのになぜ?


「でも今の君の実力では無理よ」


 ハッキリとこちらを見つめながら先生は断言した。

「確かに君はすごい。今日一日だけで君はホントに強くなった。でも足りないよ。全然足りない」

 せめてもっと体を鍛えてレベルを上げなさい。そしてスキルを身につけなさい。そうすればいずれを身に着くはずよ。言え、私が君に教えるわ

 先生は覚悟を宿した瞳をこちらに向けながらそう言った。その迫力にオレは気圧されたがここで一歩でも下がることはメチャクチャカッコ悪いから気合を入れて踏ん張って気力と魔力を操作する練習を再開した。

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