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《Liberty of Life》  作者: 魚島大
3章 Out of my way. your fate.I'm going through/運命よ、そこを退け。俺が通る。
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36話 Gregorius/蛇を討った男

ちょっと長いです。

 クリアミラと2人で、テレビを見る。主に内政プレイヤーの人たちの情報が映っているようだ。一般的なプレイヤー達に比べると、このように情報として流されることが多いのは、彼、または彼女が行う内政そのものが、ぼく達のようなプレイヤーにも影響を与えるからだろう。


「アグボンラオール皇国では、(きた)る防衛イベントに備え、冒険者を積極的に雇うとの公布を出しています、ルクレーシャ皇女によりますと、国内に拠点を置く有力クランには既に使者が向っているとのことです。ライディーン、スケイル兵団、ピンキーガールズ……」


 見覚えのある名前がテロップに表示される。雷霆(ライディーン)。ハヤトのクランに違いない。あいつはいつだかのフレンド通信のときに、「俺の隣は空けてある」なんて言っていたっけ。やれやれ、ハヤトに追いつくのに一体どれだけの時間がかかるというのか。やっと半分追いついたかどうか、というところなのに。


妖精さん(スヴェン)のお友達のあのイケメン君、やっぱり凄いひとだったみたいね。私も名前は聞いたことあったから、まさかとは思っていたけど」


 クリアミラはテレビから視線を外してこちらを向いてそう言ってくる。彼女の表情には納得と感心とが浮かんでいた。


「確かに凄いのはそうなんだけれど、どうしても先に現実(リアル)の印象が先立っちゃったから、初めてゲーム内で顔を合わせたときは違和感が凄かったよ」


「ま、顔見知りと会うとそんなもんよ」


 続いて、ニュースは南のアグボンラオール皇国から西のフランシスカ王国へと移っていった。


 ハヤト以上の化け物集団がここにはいたはずだ。確か名前は──


「白金の騎士団。プレイヤーランク1、2がいるクランよ。さらにはクランのランクでも1。正真正銘の化け物集団ね」


 ニュースの内容としては白金の騎士団を基幹戦力として、国軍を持って防衛戦にあたる──すなわち、冒険者を雇うのは偵察やそういった遊撃任務に向けて、が多くなるだろう、ということだった。


「東のメリカル国では、冒険者を募集しています。できれば、海上戦闘が可能な冒険者がいることが望ましいそうです」


 まだ西も東も掲示板や噂でしか聞いたことがないから、どうなっていることやら。適性レベル的には、同様に2〜3個めの街へ居つくことになるだろうと思う。北は設定上魔族の領地と接しているから、適性レベルがやや高めで、南──すなわちアグボンラオールの大体2倍とかいう魔境らしい。ハヤトがそう言っていた。なにやら高位の悪魔系モンスターと戦ってボコボコにされたらしい。


「ありゃやばいぞ。修羅の国かなにかだぜ」


 と真顔で語っていた。もっとも、そのような「強い敵」と戦うのが大好きで燃える男だから、放っておいても自分で攻略法を見つけて逆に反撃とばかりに、敵をボコボコにするだろう。今までの付き合いからわかっている。


 だから、西方の化け物騎士団が北に近い所に配備されているのだ。これも掲示板から知ったことだけど。


 このテレビからわかったことは、近々イベントが開催されるということ、それは防衛イベントで、モンスターの大群が押し寄せてくるであろうということ。それくらいだろうか。話は少し変わってしまうが、魔法テレビというのは、生産系プレイヤーが作っているものもあるが、公式のショップで売り出されているものもある。ゲーム内通貨で購入できるものだから、課金などをする必要などはない。そもそもこのゲーム課金はなかったと思う。


 しばらくゲーム内の世界情勢などがニュースで流れていく。いってしまえば公共放送だし、チャンネルは少ないので、今いる町のローカルな情報を手に入れるならば、掲示板の方が速いだろうと思う。


「続いてのニュースです。レア種族である竜人(ドラゴノイド)半妖精(ハーフフェアリー)の活躍が現在増えてきています。どちらも戦力として貴重な存在となりえるでしょう。前者は圧倒的な身体能力で、後者は圧倒的な魔力で。防衛戦に向けて、レア種族のプレイヤーの獲得に乗り出すクランが増えることでしょう」


 あれ、不遇種族じゃなかったのかな。


「そんな風に運営がデータを作るわけないでしょう。ただそう思われていただけよ。やっと本質が見えてきたのね。それに活躍って言っているじゃない。あなたも入っているのよ、その活躍に」


 クリアミラがまるで見たことない優しい顔でいうから、ぼくはびっくりしてしまった。思わず彼女を二度見するくらいに。


 やっぱり、この(ひと)は驚くぐらい多くの面を持っていて、ぼくが今まで知っていたのはごく一部に過ぎないのだと思ったのだ。それが人間というものだろうけれど。


「そうかな。ぼくの活躍なんてそんなに知られていないと思うけど」


 そう言葉を返すぼくに、彼女は呆れたように額に手を当てた。さらにおっきなため息をついて、ぼくに懇々と話してきたのである。それはもう、子どもに注意する母親のように。


「あのねぇ、あなたの種族の半妖精はあなたが思っている以上に目立つし、使っているのが無属性(ゼロメンタル)ならさらに珍しいのよ?」


 どうしようもない意識の差というものを思い知らされた気がする。


 まぁそれは仕方がないことなのだろう。当事者と外から観察する人とは意識が違うというのもむべなるかな。


「もっと誇っていいと思うわ」


「そうかな」


 短い会話だったけれど、彼女がぼくを思っているということは伝わってきた。それがひどく純粋なものであるということも。男女関係で考えがちな感情というものじゃなくて、人間としてのそういう感情だとぼくは思った。


 テレビのニュースはプレイヤーや種族についての話がまだ続いている。僕の分からない領域に入っていたので、視線を外し、外を見てみる。霧ははれていて、しゃっきりとした太陽が家を照らしている。やっと外に出やすくなった。とりあえずギルドに行くことにしようか。


 クリアミラはしばらくテレビを見ているようだったので、一言だけ言付けて、彼女の家を辞した。よくよく考えてみると、ぼくは1人暮らしの自活している女性の家に転がり込んだことになる。たまにしか料理も作らないし。字に起こしてみると女性にモテるハヤトよりぼくの方が明らかにクズである。これはいかん。ハヤトをからかえないし、それじゃなくてもヤバイ。


 さて、ギルドに着いてから効率の良さそうな退治依頼を受ける。ちょっとした大物退治の依頼だ。今まで受けてきた依頼は、『何体以上討伐』とかそういうものが多かった。モチロン大物退治も受けてはきたけれどね。今回受けるのは双頭蛇(ワスプ)の討伐。睡眠の状態異常攻撃を使ってくる獣系のモンスターだ。デカイ爬虫類なので、背筋をゾワゾワと這い上がる不快感がある。


 出現場所は草原じゃなく黒い森。ボスモンスターであるオークも夜出現するという。討伐する時期は夜。やれやれ、単独(ソロ)でボスと当たりたくはないんだけどな。出会ってしまったら勝てない敵ではないはずだから何とかするとしよう。


 しばらく街道を歩く。早朝ではないから、まばらのPC、NPC問わず冒険者がまばらに見える。見知らぬ人と協力するのはよくあることだが、ぼくの場合はある意味自分自身が特別すぎた──ナルシストとかそういうことではなく、レア種族だったからという理由だ。うん、ぼくは運がいいのか悪いのか。


 フィールドの入り口には数人の冒険者が屯している。パーティらしき彼らに目礼をして、ぼくは先にフィールドに侵入する。


 空気が変わる。


 そこはすでに、人の領域ではなくなる。フィールドはモンスターが発生する地域だ。当然、一般人のNPCは立ち寄らないのが当たり前である。


【フラッシュ】を発動させ、自分の周囲を明るくする。レベルの上昇に従い、爆音の範囲、閃光の持続時間が延びる。20を超えると、上空に打ち上げることもできるから、ちょっとした照明弾代わりになる。火属性魔法とかならもっと効率よい魔法があるかもしれないけど、まぁぼくは無属性魔法だから仕方ない。


 そんな風に派手に自身の存在をアピールすると、フィールド上のモンスターが数体ぼくの方に集まってくる。そりゃ、そうだよね。どでかい音と閃光撒き散らしたんだから。


 ナイトゴブリンと呼ばれるゴブリンの強化型やブラックウィドウと呼ばれるジャイアントスパイダーの強化型まで暗い森に特化して強化されたモンスターがわらわらわら。入り口であんまり騒いでいると迷惑だから、一気に倒したい。


 とん、とんと三角跳びの要領で木々を駆け上がり、ぼくが立っても大丈夫そうな太い枝に立つ。


 おおっと。


 よろけてしまった。


 ナイトゴブリンは短剣を使う。闇や木々に紛れ、冒険者を奇襲する戦法だ。毒が刃には塗られており、毒と麻痺の追加効果をもらう。しかし、その代償に、ゴブリンほどの身体能力は発揮できない。


 ブラックウィドウは速度に特化した。そのせいか、極端に攻撃に対して弱い特性がある。


 そして共通点として、暗い場所のモンスターだから光に弱い。この点を旨く利用できるはず。


 もう一発フラッシュを放ち、怯ませている間に枝を飛び移り、次の魔法の準備をする。


「やっぱり、魔力が吸われる……」


 わずかな倦怠感。大量の魔力を一度に持っていかれるこの魔法。頭上で腕を交差して、上下に腕を開くように下ろす。


 ぼくの頭上には巨大な魔法陣が浮かび上がり、キィィィンという甲高い音を立てて魔力が集まり始める。それは轟々という音に変わっていく。現在ぼくが放てる最大威力。青白く太い光線が、一直線に発射され、射線上にあるものを焼き尽くしていくだけでなく、余波で大爆発まで起こすこの魔法。リザードロードの上半身を消し飛ばしたであろう魔法は、これだった。


「ディスタント・クラッシャー! 」


 射線上にいたゴブリンたちは綺麗に消え、こちらに高速移動してきていたブラックウィドウも爆発に巻き込まれ、消し飛んでいく。


 大爆発が収まると、ぼくから見てちょうど直線の正面、左右の一部が綺麗に整地されて、やや上から撃ちおろしたような形になったからか、着弾点にはクレーターが残っている。ここの地形壊れるシステムなのね。


 思わず現実逃避をしてしまったが、本題はそれじゃない。目的はワスプだ。というか、オーバーキルになったせいか、ドロップすらないんじゃないか?


 ワスプがいるのは滝の手前の湿地帯。森の奥。


 ぼくが綺麗にぶち抜いたのは奥方面。これを辿っていけばいい。


 もちろん、湿地帯にたどり着くまでに消し飛んだ木々はなくなり、葉や枝が地面に暗い影を落とすいつもの光景に変わっていた。


 モンスターのちょっかいを適当にあしらい、湿地帯までいくと、およそ4mはあろうかという双頭の大蛇がぼくを迎えてくれた。白い息を吐き、こちらを睨みつけている。よほどにディスタント・クラッシャーの爆轟が気に入らなかったらしい。


 湿地帯ということもあって、木々は少なく、飛び移れそうな木は少ない。


「シャァァ!」


 ワスプはぼくが動かないのを見てとってか、睡眠毒の毒液を吐きかけてくる。ぼくに飛び道具は通用しないから、悲しみを背負うだけだけど。いつもの防御障壁だ。


 反転して相手にこれを叩きつけても意味がないことは間違いない。だって自分の毒だもの。

 

 でも近接戦闘はしたくない。巻き殺されて丸呑みとかいやすぎる。

 

 ワスプは湿地帯に首を突っ込み、泥水を吐き出してきた。正確にいうなら、泥水のウォーターカッター(鈍器)が正しいだろうか。大質量攻撃をされると、ぼくの使う【バリアアクション】は破れる。それはもう、障子のように。

 

 泥に塗れたくないけど、仕方がないと割り切って横に跳びながら一回転して衝撃を殺して立ち上がる。スフィア・ブラスターを放つ。

 

 仰け反る。

 

 マナ・ビーム。

 

 仰け反る。

 

 敵の挙動が遅くなったように感じる。

 

 魔力収束。

 

 魔法陣を集中。前後に5つ重ねるように。ひとつにまとまり大きな魔法陣になったそれに、右手の人差し指と中指を伸ばして突っ込む。

 

先ほど森に撃ち込んだディスタント・クラッシャーよりは劣るが、仰け反って弱点を晒すモンスターを倒すには充分な威力だ。


 最初の街に出てくる敵程度ならかすったダメージで倒せるほどの威力。腕が痺れるのが難点だけど。

 


【マナ・マグナム】


 紫色の光線がワスプを貫く。最後に細い叫びを上げて、ドウ、と大蛇は地面に倒れこんだ。


「勝った……」


 急激な疲労がぼくの体に押し寄せる(気がした)。


 通信が入る。


「妖精さん、お昼の時間よ。帰ってらっしゃい」


「了解」と返事をしてぼくは彼女が待つ家……いやなんか僕の家みたいだけど、よくよく考えると彼女の家だ。


「次は家買おう」


 そう思って今度こそ帰り道についた。




 


ここまでお読みいただきありがとうございました。これにて第3章は終了となります。第4章からは、少し登場人物も増えてきて、動きも大きくなると思います。

その前にメインの登場人物紹介等をいれようかなと考えています。

それでは、次回登場人物紹介でお目にかかりましょう。

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