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《Liberty of Life》  作者: 魚島大
3章 Out of my way. your fate.I'm going through/運命よ、そこを退け。俺が通る。
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32話 Forget us to fun/楽しさについ忘れちゃったんだ

お久しぶりでございます。就職活動の合間の執筆となりますので、不定期更新になりますが、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

 レベルが20になると、大概劇的に強さが増したりする。それは自分達も、敵もである。ギルドに戻って報酬をもらってから、何の気なしにステータスを開くと新しいスキルツリーが開いていた。近接、中、遠の各種新魔法であり、下位魔法に比べると威力も形態も大きく違っている。攻撃力に集中した魔法がこのレベル帯には多いようで、新規の防御魔法のようなものはツリーに展開されていなかった。既存の防御魔法も同じだ。


「あなたも20の大台に乗ったから、もっと面白くなるわよ」と傍らでぼくのデータを肩越しに覗き込んでいるクリアミラが言う。……距離が近い。最近とみにそう思うことが増えた。彼女と心の距離が近づいているからだろうか。


魔力剣(マナ・セイバー)なんて、良さそうじゃない? ほら、ここ」


 と彼女の指差す方向を目で追うと、こんなことが書かれていた。


 ──この剣で近接攻撃を行った際、物理攻撃力を判定で使用するのではなく、魔法攻撃力の判定として代替できる。

 

 こういっては語弊があるかもしれないが、まさにぼくのためにあるような魔法だった。近接戦闘力の不足を感じていたぼくにとって、この魔法は渡りに舟である。ブラッディマーカーは射程(レンジ)が短すぎる。剣一本のサイズが遠いことだってあるのだ。


 もともとぼくの魔法攻撃力は高いのだから、優秀なダメージソースになってくれるはずだ。


「ふむふむ……。あとは遠距離系の魔法みたいね」


 本人(ぼく)より早く、新しい魔法について理解してしまったようで、新しい魔法の方を見ていた。新規魔法は一斉に1枚のページでホログラム表示されるから、ぼくも視線を下に転ずればそれを見ることができる。うーん、一体どういう仕組みになっているのかはよくわからない。というか、専門の領域だから、ぼくにはどうしようもないといった方が正しいかな。


 話が、それてしまった。


 視線を下に転じていくと、【マナ・ビーム】という項目。


「魔法エネルギーを利用した光線かぁ……。どっちかというとロボット的なイメージだったけれど」



 それはなんというか、魔法の説明というか、なんというか。ざっくりしすぎてない?


「無属性魔法自体が魔法そのものをエネルギーとして捉える魔法だからだと思うわ。そこにこちらから干渉を加えることで火になったり、水になったりするわけ」


 相変わらずの情報収集振りである。正直、そんな設定部分のところに関して、ぼくはまったく見ていなかった。


「魔力そのものに攻撃能力はないけれど、エネルギーとして攻撃に転化しているらしいわよ」


 つまり、何らかの意思が介在することによって、魔法というものに差異が生まれているということだろう。それが属性魔法というわけだ。捉え方としては非常にシンプルだと僕は思う。『エネルギー』なら、他の魔法より直接的なイメージがある。


「そんな設定があったのか……」


 さらに目線を下に下げていくと、『収束魔法』という項目がある。複数ある魔法陣を1つにまとめることができる魔法だそうだ。その名の通り、魔法を収束するわけだな。これを使うと、より強力な魔法が使える。長射程かつ光条が太くなった【レイ・キャノン】。10発分を収束して放つ【マナ・マグナム】など。後者の場合は発射まで少し時間がかかるのがネックか。


「レベル20からスキル管理が大変になることは覚えておいた方がいいわよ。なにせ、加速度的に補助魔法も攻撃魔法も支援魔法も防御魔法も増えていくからね」


「やれやれ……」


 そう言うクリアミラの口元は三日月にゆがんでいる。「面白くなるわよ」なんて顔をしている。出会ってからも思っていたけど、目の前の少女は笑い上戸であることからかもしれないが、目の前の面白さを優先させるような娘である。そういう認識がぼくにはあった。


「ま、とりあえずは私の家にでも戻りましょうか。妖精さんも寝たいでしょ?」


 ……普通に疲労を回復するという意味でね。意味深な流し目はやめてほしい。勘違いするだろう。


「知っているわ。あなたがそんな人間じゃないことくらい」


「勘弁してくれ……」


 心底楽しそうに笑う彼女からは邪気もなにも感じられない。これではこちらも何もできないではないか、という言葉は心の奥に沈めておく。


「うふふ」


 歩き出した彼女にぼくも少し後れてついていく。クリアミラの後ろの髪が、彼女の歩みに合わせて静やかに揺れた。


 そして、彼女の拠点につくと。僕を誘うことを予想していたのか、既にカレーが煮込まれていた。うん、実にすばらしい。馥郁としたスパイスの香りが食欲をそそる。《LOL》内の食事については、仮想世界の構成を妥協していないというところについてぼくは非常に好感を抱くよ。


「あははははっ! カレーを見ただけで目の色を変えないでよ! ふふふふふふ……」


 あ。またやってしまった。クリアミラの笑い上戸に火をつけてしまった。この状態でぼくが彼女に何を言っても、無意味だ。つまり、より笑わせてしまうという結果にしかならない。いわば火に油を注ぐということであるし、燃料を投下するということでもあるし、薪を焚き火に入れるということだから、ぼくは無言で彼女の笑いが収まることを待つことにする。


 彼女の料理はいつも変わらずおいしいままだった。実にすばらしい。特にカレーというものから感じられる美味しさというものはモチベーションを考える上で非常に重要だ。そう、仮想世界であっても食事は重要なのだ。けっしてぼくはふざけているわけではないぞ。うん。食事を終えたぼくとクリアミラは、そのまま次の仕事について考えた。ぼくがレベル20の大台に達したことによって、近接戦闘の幅が広がった。そこで、より積極的に討伐以来について考えてみよう、という試みだ。


「とりあえずホブゴブリンは余裕でキルよね?」


「うん、多少近接で押される可能性はあるけど、新しい魔法があれば捌ける」


 あーでもない、こーでもないとクリアミラと色々会話をかわす。クリアミラ自身も近接戦闘能力事態はああ見えて以外にあるから、前線出てきてもいいとは思うだけど、まぁ彼女には彼女の方針があるだろうからあんまり強制するモンでもないだろう。


「ま、ぱっと見魔法使いの戦法にはみえないのよね。……あなたと組むといつものことかしら」


「ぼくのせいじゃないだろ」


「それもそうね」


 いまさらのことではあるけれど、本来火力型の魔法使いのぼくが前線を貼るというのはいまいち意味がわからないのだよね、うん。いくら前線で戦える魔法があるといっても、ね。それでどうにか戦っていけているから問題はないけど、こう、あり方として何か間違っている気がしてならない。


 あーだこーだ、とギルドの依頼の張り紙の前で議論した挙句、ひとつのことが決まった。新しいレベルにぼくが到達したこともあり、それを測りにいこうではないか、ということだ。森林、洞窟と来て今度は高原だ。第二の街の東側。バラパ高原というフィールドがある。ぼくとクリアミラは喧々囂々の議論の末、そこに行ってみようではないか、という結論に達した。

 

 受けた依頼は『ホブゴブリン30体の討伐+いれば上位クラスのホブゴブリン・ハンターの討伐』というものだ。賞金は5万Cと高額である。正直なところ、革鎧の手入れとMP、HPポーションを購入、魔法の短剣の手入れ程度にしか資金を使っていないから、資金は有り余っている。実はいくらあるのかぼくは把握しきれていない。


「さて、便利なことに直通馬車が出ているわ、それで行きましょう」


「いや、本当に便利だな」


 そんな会話をかわして馬車に乗り込んで。運が良かったのか戦闘はなく、20分ほど馬車に揺られて目的のバラパ高原についた。少し寒く感じるが、高原というだけに、その通りなのだろうとぼくは考え直す。横のクリアミラはというと、ノースリーブだからぼくより寒そうな印象を受けたが、毛皮を体に巻きつけて暖を取っていた。ちょっと君、ずるくないかい?


「持つべきは良い生産職の友人ね。私からすればNPCの製品である程度はしのげる妖精さんの魔法ステータスがすごいと思うの」


 そんなもんかな。ぼくにはいまいちわからないけれども、ね。ハズレ種族だと呼ばれて入るが、あまりぼくにその実感はない。今のところ、そこまですさまじい不都合には襲われていないから、である。


「さて、ホブゴブリンを探しましょうか──あら、もう入り口にお出ましね」


 ぼく達がいるのはフィールドの入り口部分すぐのところ。つまり、ホブゴブリンの何体かは、ぼく達を待ち構えるかのように陣取っていたというわけだ。このあたりも下位種族のゴブリンとは違うところらしい。ぼくがいいたいのは──多少は頭も回るということだ。

ぶっちゃけてしまうならば、無意味であるが。


「ウインド・カッター!」


 ぼくの後ろにいたクリアミラが風魔法を発動。それにあわせて【ブラッディ・メイカー】を行使。両手の拳を左右に広げるように打ち出して、頭部を強打。クリティカル。


 たまらずに吹っ飛んでいくホブゴブリン2体をクリアミラに任せ、ぼくは正面の1体に突撃。


「ガァッ!」と雄叫びをあげて斜め上から錆びた長剣を振り落としてくるホブゴブリンの一撃を右手の【シールド・プロテクション】で防ぎつつ、左手で別の魔法を使う。


「魔法使いが白兵戦ができないと誰が決めた!」


──【スフィア・ゼロドライヴ】


 ホブゴブリンは即死しないとはいえ、大きなダメージを受けて転がっていく。


 似た魔法に【ブラッディ・メイカー】があるが、あれは拳出の攻撃判定の際、物理攻撃力ではなく、魔法攻撃力でそれを代替するものだ。手数も自らの手足を使うことで手数は多くなる。白兵魔法球(ゼロドライヴ)は、発動までタイムラグがあり、連発ができない代わりに、防御の各数値を無視、装甲を貫通する仕様だ。無属性魔法(ゼロメンタル)を使っている人をまだ見たことがないから、この魔法を他の人がどのように使っているかはわからない。


 そのあたりが残念といえば残念だ。


 転がっているホブゴブリンに衝撃波を地面流しで与えて吹き飛ばし、舞空術を利用して空中踵落としでさらに地面に叩きつける。衝撃波のダメージ+吹き飛ばし属性+魔法ダメージ+地形ダメージとなる。うわー、実際にダメージ計算したくない、面倒くさそう。ホブゴブリンはまだ微妙に体力のバーが残っているようだったから、ホブゴブリンの頭上に空中から落下して膝落としでトドメを刺す。


 そのタイミングで2体を片付けたであろうクリアミラが戻ってきた。


「どうかしら? 新しい魔法の使い心地は?」


 あ。忘れていた。


 ぼくがそう言うと、彼女はぬぼーっとした半目になり、こちらにジト目を向けてきた。口は逆三角形に開き、こちらを呆れているような目で見ている。う……。正直、すまんかった。


「まったくもう、本来の目的を忘れてどうするのよ……」


 いやほんと、ごめんなさい。


ここまでお読みいただきありがとうございました。次回の更新日時は未定ですが、気長にお待ちください。

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