前夜祭、絶賛進行中です。
どんどんと…演目が進んでいるのですが…
…真っ白です。
どうやら、ヘンリエッタ様も同様…ですね。
皆様、将軍様も騎士長様も…
めちゃめちゃお上手なんですけど?
そんなの、一切聞いてないんですけど?
こうも皆様お上手なんて…
最後の最後?
ただの地獄…なのですけど?
しかも、会場も大盛り上がりしておりますよ。
ええ、地獄ですよ。
異国で人質にされたり、
急に高い山から直滑降させられたり、
目の前で爆弾が爆発した事も有りますが…
色々と酷い目に遭ってはおりますが…
何故か今現在の方が、遥かに、絶対絶命な気がするのですけど?
ヘンリエッタ様がなにか思いつかれたらしく…
急に秘書官をお呼びになり、
なんと会場にいる人達に、強いアルコールを差し入れするそうです…
姑息な…見事な小細工ですね。
ですが、
なんて素晴らしいお考えなのでしょうか。
酔っ払ったらもう、音程も何も、判らんだろうと…
素晴らしいです、とても良いお考えだと思いますよ、ヘンリエッタ様。
流石は大臣様です、あっという間にアルコールが手配され、皆にばら撒かれていきます…
流石は最高権力者の威光でしょうか?
やはり、持つべきものは最高権力…ですかね?
そして…舞台にはカイ様が登壇されたようです。
ドンッドンッドンっと、
太鼓の様な楽器の音だけの…
とてもシンプルな演奏が流れ始めました。
進行表に書かれている題名…原曲は、ウィーウィル…ろっくゆー…と?言うそうです。
力強い声で、会場の雰囲気を一気に、完全にその手に掌握してしまいましたね…
凄い迫力ですよ…流石は竜種だけあって、声量もえげつないですよね?
もう…お上手の域など、
遥かに超越しちゃっておられますね…
終了と同時の、怒涛の声援と、割れんばかりの拍手の洪水です…
「そう、カイさんは、ダントツの優勝候補ですからね…」
溜め息を交え、ボソッとヘンリエッタ様が仰った。
続いてはズーラ将軍様…緊張なさっておられますね…
そりゃあ、カイ様のあの後って…
ですが?
くうううう…あんたも上手いんかいっ!?
そう、言いたくなる程に…アズラ様もお上手の域を超えておられますが?
先程の勇ましい雰囲気とは打ってかわり、とても静かで優しい曲ですね。
えーーっと?
瑠璃色の地球…と云う曲だそうです。
「まあ…アズラも昔から…歌うの、大好きだったのよね…」
そ、そうですか…
ツライですね…あまりにもツライですよ?
演目が進んでいけばいくほど、
歌う皆様の、そのレベルが爆上がりしてますよね…?
酷いですよね…こんなのって、ほぼ罠ですよね?
コッチは緊張感だけが爆上がりしてますが…
まさか皆様、ここまでお出来になられるなど…
ふと…うちのお父様を思い出せば、
絶望的な歌唱力だったのよね…
そうか…優秀な為政者は皆、お歌がお上手なのですね?知りませんでした。
どうりでお父様は…
いえ…現実逃避はいけませんね…
今のこの、緊迫した状況では、
あんな酔っ払って下手な歌を歌うオッサンの事など、今はどうでもいいですよね。
それを考える時間さえ、無駄でしょうね。
何故今…相当に動揺してるんでしょうか?
まもなくです…
ヘンリエッタ様とお互い、きつくハグをしながら、励まし合います…
さあ、いよいよ本番です…




