006-002 しかし、部室には誰もいなかった
駄目だ。
命中率100%なんて、そうそう行くものじゃない。
まぐれで行くこともあるけど、10回連続なんてとても無理だ。
早1時間はやってるけど、終わる気がしない。
「どうかな?MoMoちゃん」
僕がダミーと只管無機質な撃ち合い(僕が一方的に撃っているだけだけど)をしている間、先輩達は楽しそうにランクマッチに潜っていた。
「3〜4回に1回くらいならできますけど、流石に10回連続は無理ですよ」
「弱音吐かな〜い。あのね、MoMoちゃん。エイム練習はとっても大事なんだよ。大体の人は何となくこのゲームを始めて、何となく実践の中で経験を積んで上手くなっていくんだよ。そして、MoMoちゃんもこのタイプの人間だ。確かに、やればやるほど、何となく上手くなっていくけど、何となくじゃすぐに限界が来るんだよ。しっかり自分にできないことや得意なことを明らかにして、そこを強化するように重点的にやれば、飛躍的に上手になるものさ」
なんか、今日のyou先輩は、いつになく真面目だ。
「わかり、ました」
「うん。じゃあ、とりあえず、できるまで、もしくは今日の部活が終わる17時まではこの練習ね」
「え"」
現在時刻は10時。つまり、できなければ、7時間永遠とこの練習をしなければならないと言うことだ。
「当たり前じゃん。強くならなきゃいけないんだからな。あひゃひゃ」
そう言って、you先輩は戻って行った。
そこから3時間。
自分が没頭していたことにふと気付いた。
それは、アサルトライフルで、10連続目の全弾ヒットを成し遂げた時だった。
「you先ぱ…」
僕は顔を上げ、you先輩を呼ぼうとした。
しかし、部室には誰もいなかった。
SNSで僕は連絡を取る。
『悪い。売店で飯買ってみんなで食ってるわ。次はこの動画くらいの感覚で左右に横移動しながらの射撃な。レッスン2「移動しながら命中率100%を目指そう」。これもARとSMGで10連続ワンマガフルヒットな』
『あまり無理をしないでくれよ、MoMo。昼食を食べて、ゆっくり休憩を取ってから再開して欲しい』
淡白なyou先輩の指示と、僕を思い遣ってくれるTomo先輩の言葉が続け様に送られた。
売店まで行くのは面倒だった僕は部室棟側の自販機でブロックタイプの固形物と、ゼリー飲料、それに適当な飲み物を買って、部室で食べることにした。
それらをそそくさを胃に運び込み、僕は机へと突っ伏した。
目を閉じると、先程までの光景がフラッシュバックした。
よくよく考えてみると、ここまでずっとこのゲームをやっていたことはないかも知れない。
ふと見つけた強くなれる余地に、僕は少し心が弾んだ。
暫くして、先輩達が戻って来る。
「おんやぁ?MoMoちゃん、おねむ〜?」
「違いますよ。目が疲れたので、休めてたんです」
「目が、メガ疲れたってことか。あひゃひゃ」
「おや?MoMo。お昼はそれだけかい?」
「えっ。ああ、はい。別にお腹も空いてなかったので」
「しっかり食べないとダメだぞ、MoMoちゃ〜ん。ゲーム部とは言え、身体は資本。しっかり食べてしっかり育てなきゃK.A.I.みたいに貧相になっちゃうぞ♡」
「あんた、それ、胸のこと言ってる?人のことイジるのも、大概にしなさいよ?」
「や〜ん。K.A.I.が怒ったぁ」
「まあ、youの言っていることも部分的には間違っていないね。しっかりバランス良く食べるようにしようか」
「はい。わかりました。気を付けます」
雑談もそこそこに、僕達は練習を再開した。
僕は、まあ、練習なのだろうけど、先輩達は練習なのだろうか?
ただ楽しくランクマッチをしているようにしか思えない。




