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トンネルを抜けるとそこは大都会であった。

1953/01/22 in Washington.D.C


20日に発足した新政権への移行は拍子抜けするほどスムーズに進んだ。思えばそれは嵐の前の静けさだったのかもしれない。新たな大統領である白髪頭の男はベルリンのCIAから入った事案に対して頭を抱えていた。時価500億ドルとも目されるロマノフ家の財宝がよりにもよって共産主義者のレジスタンスに渡ったのである。それでもナチスの手にわたるよりはマシではあるが。考えのまとまらない頭を置いて情報が音の速さで飛び込んでくる。ドアが開け放たれ静寂は破られる。国務長官の神経質そうな男はもはや諦念も混じった顔で囁くように言う。「騎士団国が動いたそうです。奴らは既に財宝を保有するレジスタンスの連中を拷問にかけているそうです。」騎士団国は過激派ぞろいの親衛隊の中でも特に手に負えない連中に統治権をやることによって成立した国のことだ。「どの騎士団国だ。」と私は問うた。「プラハです。」国務長官から帰ってきたのは考えうる限り最悪の答えであった。そうか。あのハイドリヒが動いたか。ことは思いの外急を要するようだ。奴の事だから世にもおぞましいような拷問で財宝の在り処を特定していることだろう。私は川の底の岩のような重い手を受話器にかけ、ダイヤルを回した。


1953/2/1 東京


アメリカとの妥協の道を選んだ日本にとっての第二次世界大戦はイージーなものであった。アメリカの支援の元、ドイツによって半壊状態にされたロシアの地を横断するだけであったからだ。戦の結果はロシアからの割譲地はもちろん、アメリカの支配地域を除いたアジア全域を解放とは名ばかりの影響下に置くことも成功した。だが、それは同時にアジアの利権を独占した我国に対して反感を持つ連中が現れることも意味する。だがそれでいいのだ。今までもそうだった。そういう連中を叩きのめしてきたのだ。だが今の帝に宰相は平和主義者すぎる。何が協調、民主路線だ。覇権国は3つも要らない。東條さんの時代も終わりでいいだろう。陰謀、下克上の霧が陸軍全体を覆っていた。

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