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魔眼の忍者は地球と自分の未来を憂う  作者: 入栖
一般人少女はお嬢様学校で自身の安穏を願う
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白百合会しらゆりかい 栄光の花園(グロリアスフラワーガーデン)とも呼ばれる、学園生羨望の派閥。在籍者は柳原皐、玉響花香、玉響桂花の3名のみ。

黒薔薇会くろばらかい 美の花園(クイーンズフラワーガーデン)とも呼ばれる派閥で、良家のお嬢様が多い。

紫藤会しとうかい 知の花園(ウィズダムフラワーガーデン)とも呼ばれる派閥で、ある一定以上の学力がなければ入会することが出来ない。岩倉綾乃が所属している。

鈴蘭会すずらんかい 花のつぼみとも言われる。『切磋琢磨して自身をより高める』が目的の会である。ここから黒薔薇会や紫藤会に行く人も多い。


 ああーどうしよう! どうしよう! どうしよう!!

 私は持っていた枕を抱き締めながらベッドの上をゴロゴロと転がる。

 余りの出来事に私は思わず綾乃さんへメッセージを送ってしまった。だけど未だに習い事が終わらないのか、返信は来ていない。


「あー、もういや!」

 どうしてこうなったのだろう。そもそも私は桂花様と何ら接点は無かったはず。学年は同じでもクラスが違うし、挌だって違うし、運動能力も雲泥の差だし、ましてや綺麗さだって……。


「葵、ご飯出来たぞ~」

 私がもんもんと悩んでいるのを知ってか知らずか、廊下からお兄ちゃんの呑気な声が聞こえる。

(それどころじゃないのに……ってちょっと待って)


 ふと思えばこの奇妙な状況はすべて兄のせいでは無いだろうか?

 私が桂花様とのつながるきっかけを作った覚えはない。であれば私以外の要因で桂花様と繋がりができたと考えるのが自然。


 そうなるとやはりお兄ちゃんが怪しい。あの時の確かに桂花様は誉めていた。

 と、私が考えを巡らせていると、コンコンと部屋がノックされる。少ししてお兄ちゃんはドアを開けた。

「葵? ご飯が出来たぞ?」


 私はそれに対して返事をすることなく、問いかけをすることにした。

「お兄ちゃん。桂花様と何かあったの?」

 私がそういうと、お兄ちゃんはビクッと反応し、頬を掻くと首を左右に降った。

「ちょっと話したぐらいだぞ? 何も無いに決まっているじゃないか」


 兄はそう言うけれど、私はどうも信じられない。なぜならお兄ちゃんは後ろめたいことがある時は、頬を掻く癖がある。それに目線が一瞬泳いだ事もまた、怪しむべき理由になりえる。


「そ、そうだ。カレーが出来たぞ。華麗に食べようか、なんちて……」

 私がじーっと見ていることに耐えられなくなったのか、兄は下らないギャグで話を変えようとする。だけど私はなにも言わずに見つめ続けた。


「その、なんだ…………ん、着信音?」

(タイミングが悪い……)


 もう少しで兄は白状するんじゃないだろうかと言うときだった。私のスマホがけたたましくなり出したのは。


「あ、なんかなってるみたいだな。俺はダイニングで待ってるから早く来いよ?」

 ラッキーと言わんばかりに部屋から逃げていくお兄ちゃんを見て、私は大きくため息をつく。そして鳴り響くスマホの通話ボタンを押した。


『ごめんなさい葵さん。連絡が遅れてしまって』

「ううん、こちらこそごめんなさい。忙しいのわかっていたのに連絡して」

 電話の主は綾乃だった。タイミングは最悪であったが、綾乃のせいではないし怒れない。むしろ基本忙しい綾乃に相談を持ちかけている、私に対して怒るべきなのかもしれない。


『気になさらないで。それよりもどうしたの? 大変な事になったとは?』

「そ、そうなの。実は、綾乃さんが帰ったあとに桂花様と会ったんですけど、そのときに天変地異みたいなが起こってですね途方に暮れていて!?」


『まあまあ。油紙に火がついたように話していないで、落ち着きなさい。それでどうしたの?』

「あ、あのですね! 私が桂花様に『白百合会しらゆりかい』に誘われちゃったんです!」

『へぇ白百合会にですか………………ふぇ? って、し、白百合会?! そ、それは誠ですか?!』

 流石の綾乃さんでさえ、白百合会には驚きを隠せないようだった。


 それも仕方ないと思う。白百合会と言えばこの学園で尊敬を集める4大派閥の一つだ。高等部の玉響花香先輩と柳原皐先輩が所属している事で有名で、4大派閥の中でも一番権力があるらしい。その力は学園内にとどまらず、政界にも影響を与えることが出来るとかなんとか。さすがにそれは言い過ぎではないかとも思うけれど、玉響家と柳原家なら本当に影響を与えられそうで恐い。


「信じがたいのですが本当なんです……ど、どうしましょう? それになんで私なんですか? 何かした覚えが全くないんです」

『…………』

「ああ、何が起きたと思います? 明日は大雪ですか? それとも大地震でも起こるのですか?」

『……葵さん、少し落ち着きましょう。よく考えてみれば選考基準によっては入会条件を満たしている可能性はあります』


「えっっ?」

 白百合会の選考基準?

『実を言えば私が所属している紫藤会しとうかいの入会条件を、葵さんは既に満たしているんです』

「ええっ、私が紫藤会の入会条件を満たしている!?」


 紫藤会と言えば『知の花園ウィズダムフラワーガーデン』とも呼ばれる、4大派閥の一つだ。そこは『知の花園』とも呼ばれるように学力優秀な者が集まっていて、時たま開かれる紫藤会の研究発表会では、大学の教授や大手企業なんかも見に来るとか。また紫藤会の既卒者には、海外でも有名な賞を受賞した学者だったり、大手企業の社長なんかもいるらしい。

『そうです。だから以前わたくしが一度お誘いしたでしょう?』

「あ、あれは冗談だと思ってたんですけど……」


 確かに綾乃さんから紫藤会に入らないかって誘われたことはある。だけど一般人である私が、そんな格式高い会に参加できるわけないでしょ? と笑って流した筈だ。

『はぁ、貴方は自分を過小評価しすぎですわよ? あなたの良くないところだわ……と今はそれよりも白百合会ですわね』


 そうです。今は白百合会の話です。明日生徒会室で、桂花様に入会するしないを答えなければならない。あの時の事を思い出せば、緊張で体が震える。もはや緊張しすぎて今日は寝られないかもしれない。

『とりあえず私たちが持っている情報を整理しましょう。私が聞いている限りで白百合会の現所属メンバーはたったの3人。4大派閥では圧倒的に人数が少ない』


 4大派閥と言えば白百合会しらゆりかい黒薔薇会くろばらかい紫藤会しとうかい鈴蘭会すずらんかいの4つだ。権力は白百合会を筆頭にその後ろを黒薔薇階と紫藤会が並んでいて、更にその後ろに鈴蘭会がある。

 しかし人数は全くの逆だ。一番人が多いのは鈴蘭会、次いで黒薔薇会と紫藤会、もっとも少ないのは白百合会。


『そこに葵が招待を受けた』

「そうです。招待されました……。ですが白百合会の三人はこの学園全体でも、これ以上ないほどの選りすぐりのメンバーですよ? 私なんかが混じって良いんですか?」 


 玉響財閥の花香様、桂花様、柳原財閥の皐様。その三人の中に私が混じる? 無理に決まっている!

『何かしら特別な選考基準があるからだと思います。どういったものかは私にもわからないけれど、貴方はそれを満たした。多分相当特殊なのものでしょう。でなければ、もっとも白百合会に近いとされている小花衣こはないさんが入れていない理由が分かりません』

 

 小花衣都こなはないみやこさんは私達の同級生だ。彼女はテニス部部長を務めており、大会でも素晴らしい成績を収めているお嬢様である。祖父が大手会社の会長、父親が外交官であるため、政界と経済界の結びつきが非常に強い……らしい。また母親がフランス人で、日本人離れした髪の色と顔立ちをしている。もちろん私なんかとは比べるのがおこがましいくらいに綺麗だ。

 

 たしか彼女はもともとは白百合会に入会したがっていた……と言うより花香様に心酔していることで有名だ。だけど彼女は入ることは無かった。それでしかたなく黒薔薇会に席を置いているとか。

「えと。小花衣さんに無くて私に有るものが、庶民性ぐらいしか浮かばないのですが……」

 小花衣さんは成績優秀かつスポーツもできる文武両道タイプで、友人やら知り合いといった横のつながりが広い。対して私は成績こそ上から数えた方が早いけど、運動能力は並みだし、実家はそんなお金持ちじゃないし、あんなにきれいじゃない。

 

『小花衣さんに無くて葵さんに有るものですか。ううん、えぇと』

「……ごめんなさい、無理に思いつかなくても良いです」

 私に褒める所なんてほとんどない。どうせ私にないものを小花衣さんは持っていますよ!

『ですから卑屈すぎますわ。私はたくさんあって迷っているんです。勇気ある所や、学力等は貴方が上だと思うし。でも一番は……や、優しくてカッコいいお兄様が居ること……かしら?』

 なんで少し照れながら話すのか小一時間問い詰めたいところだけど、今はそんな時間は無い。それにもはや私関係ない。でもお兄ちゃんはなんらかに関与してそうで、綾乃さんの言葉を否定できないのがまた悲しくなってくる。


『……あら、どうしたの? そんな深いため息を吐いて』

 どうやら私はいつの間にかため息をついていたらしい。もし私が一度ため息をつくと一本髪が真っ白になるならば、今日だけで100グラムのパスタ分くらいは白く染まっているに違いない。

「ああ、何でもありません……」

『まあどうであれ葵さんが選考基準を満たしたのは間違いないのですから、胸を張って良いと思いますよ?』

「私には張る胸も有りませんよ……」

 精神的にも肉体的にも。自分で言っていて悲しくなってくる。


「それよりもです、綾乃さん。やっぱり私は白百合会を断った方が良いんですよね? どう断ればいいのでしょうか」

 断るにしても失礼なく断らないといけない。この時の文言を考えるのが私は結構苦手だけれど、綾乃さんなら角を立てることなく断ることが出来るでしょう。

 

『やはり、葵さんらしいですね……。ですが私は入会した方がいいと思いますわ』

「やっぱりそう思……って、ええ?」

『ええ、私は葵さんが『プリンシパルシスター』になるための素養も持っていると思いますし。高等部2年では狙ってみませんか?』

「ぷ、『プリンシパルシスター』って学園の顔となる代表生徒ですよ!? それこそ花香様、桂花様クラスの人間でなければなれることは無い役職ですっ!」


 『プリンシパルシスター』は、学園の中等部と高等部で1人だけ選出される模範生徒である。『プリンシパルシスター』になるためには、文化祭時期に行われる投票で全校生徒の半数以上の票を獲得すればなることが出来る。ただし、選考対象は中等部、高等部の2学年全員。

 

 中等部生徒は文化祭の開会式で、中等部2学年に在籍している生徒の名前を1名だけ書き投票箱に入れる。そして中間発表を文化祭途中に挟み、閉会式で正式発表。当選した生徒はその後1年間を学園中等部の代表生徒プリンシパルシスターとして活動をする。

現在の中等部代表生徒プリンシパルシスターは桂花様だ。基本的にプリンシパルシスターに選ばれるのは白百合会と黒薔薇会の人がほとんどだ。


 ちなみに私が初めてこの制度の事を聞いた時に、学園一の人気者を決めるコンテストのようなものを想像した。それは間違いではなく、実際にそんな感じであったが。

 って、そんなのに私がなれるわけがないでしょう!


『そうでしょうか? 私は葵さんにこそふさわしいと思います。それから考えれば白百合会は入って然りではありませんか。私は応援しますよ』


 あの、断ろうとしている私が応援されても困るんですけど……。


お嬢様学園の設定を考えていたら、思っていた以上に話が膨らんで大変なことになってます。

 このサイドストーリーを小説数冊分くらい書けそうなのですが(メインストーリーよりもたくさん書けそうという意味不明状態)、余りに脱線するためあと2、3話で切ろうと思います。

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