第六話
紫音がその真実を知ったのは、清凪と結婚して10年目のことだった。
結婚して5年後には子供も生まれ、順風満帆な結婚生活を送っていた。
清凪によく似た男の子には、清凪と凪流から一字ずつとって清流と名付けられた。
フランスに住む義父から贈られた名前だ。
清凪は私の名前の紫か音を子供の名前に入れたがったが、結婚式にも出席しなかった義父はそれだけは譲らなかった。
綺麗な良い名だと紫音が気に入ったから、渋々ながら清凪も受け入れた。
〜・〜・〜・〜・〜
それは本当に偶然だった…。
清流のオモチャをしまうために、押し入れを整理していて見つけた。
まるで見てくれといわんばかりに封筒からはみ出したその手紙には、凪沢村の住所が書かれていて…
どうやらお祖母さんがお義父さんに宛てて書いたものらしい…。
消印は凪流が亡くなってから一年後くらいの日付だった…。
紫音は普段なら、そんな他人の手紙を勝手に読むような性格ではなかったのに…
何かが引っかかった。
『凪、元気にしていますか
あなたが家庭を捨て、彼女とフランスに駆け落ちをしてしまい…
スミレさんが精神を病んで子供達を育てられなくなり、あの子達を引き取ってから…
もう2度と息子のあなたに連絡をすることはないと思っていましたが…
癌が見つかり、私もそう長く生きられません…
あなたにたった一人になる清凪を託します…
あの子達もやはり小鳥遊の血を引く子でした…
たぶん…凪流を殺したのは…あの子です…』
えっ…
その時、急に後ろの襖が開いた。
「紫音…今日の昼ごはんは、な〜に〜?」
とっさに手紙をグシャッとオモチャ箱に突っ込んだ。
「う〜ん、少し暑くなってきたから…お蕎麦にでもしようかな…?」
「良いね。ちょうど僕も食べたいと思ってたんだ」
そう言って清凪は微笑んだ。
(手紙…見られなかったかしら…?)
〜・〜・〜・〜・〜
それから紫音は、誰にも見られないようあの手紙は燃やして処分してしまったけれど…
最後の一文を忘れることは出来なかった…。
清流の相手をしていても考え込むことが多くなり…
とうとう自分の目で確かめずにはいられなくなった紫音は、もう一度凪沢村に行ってみることにした。
どうしても清凪には、そのことを告げられなかったので、表向きは実家に用事で帰ることにしたのだが…
清凪には全て知られていたようだ…。
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