表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
84/102

自業自得と因果応報


 「大丈夫か!?早くこっちに!!俺達に付いて来てくれ!!・・・もう少しだ!頑張れ!」


 襲われているドワーフ達を救出し、ナナシは次々と指示を飛ばし続ける。

 屋敷に向かう時は極少数だった一行は、今では一団となり進み続ける。

 だが、それでも全てを救い出せている訳では無い。

 所々に倒れているドワーフ達を見て・・・唇を噛み締める。

 何で・・・こんな事になっているんだ・・・!

 自分の無力さに怒りを覚えつつも進み続け、屋敷まで後僅かという距離で正面に数名のドワーフとオークが現れる。

 数名のドワーフとナナシが戦闘態勢に移行する・・・が、それよりも速くパルシィが前に躍り出る。

 彼女はすさまじい速度で集団へ突っ込みつつも、魔構式を展開。

 淡い光が彼女を包み―――それは炎となる。

 痛烈な一撃を受けたドワーフとオークの集団は四方に吹飛び、道が開かれる。


 「・・・ごめんなさい。だけど・・・今はこうするしかないので、許してください。・・・さぁ!皆さん!後少しですよ!頑張ってください!!」


 彼女の激に至る所から返事が上がり、一団は走り続け・・・ようやく屋敷へと辿り着き、思わず立ち止まる。

 無理も無い。

 そこには無数に転がるドワーフとオークの中で、フロウとボンボルドンドが何事も無いかの様にボードゲームをしているのだから。


 「・・・ほほぅ、なるほど。その手があったか・・・やるね、ボンバボンバ君」

 「恐縮です。それから私はボンボルドンドです」

 

 そうだったね。と、フロウは軽く笑い・・・こちらに視線を向ける。


 「おや?ナナシ君とパルシィ君じゃないか。いつの間にそんなに友達が出来たんだい?いや、別に僻んでいる訳じゃないよ?友を作る事は良い事だからね」

 「フロウ・・・今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?お前・・・こんな状況で何やってんだよ!?」

 「何って・・・ボンバーボンド君と仲良く遊んでいる所さ。ん?何だい?ははぁ~ん・・・さては妬いているね?ははっ、可愛い所があるじゃないか」

 「ふざけてる場合じゃないだろ!」

 「別にふざけちゃいないけど・・・まぁ、いいか。それで?そんなに血相変えてどうしたんだい?」

 

 駄目だ・・・こいつじゃ話にならない。

 すぐにボンボルドンドに視線を移す。


 「ボンボルドンド!頼む!助けてくれ!」

 「助ける・・・ですか?」

 「そうだよ!お前達だって知ってるだろ!?かなりヤバい状況だ!大量のドワーフとオークが襲い掛かってきてるじゃないか!このままじゃ全員殺されるぞ!?なんとかしなくちゃ「何故私達が?嫌だよ、面倒臭い」

 

 怪訝そうな表情の彼の横からフロウの声。

 ・・・は?

 今・・・何て言った?

 その言葉が信じられず、ゆっくりと視線を向ける。


 「おい・・・フロウ?お前・・・今なんて言った?『面倒臭い』って・・・言ったのか?」

 「なんだい、聞こえているじゃないか。わざわざ聞き返す必要あったのかい?」

 「お前っ!今はふざけてる場合じゃないって言ってるだろう!!」

 「言葉を返すようだが、ナナシ君。私もさっき言ったはずだ。『別にふざけちゃいない』と。なんだい?聞こえなかったのかい?」

 「それは聞こえてる!だったら尚更おかしいだろ!何でここの人達を見捨てるんだ!?」


 背後を警戒する者や怯えた表情の者達、倒れていったドワーフ達を思い出し言葉を荒げる。


 「何でって・・・逆に聞くけど、何で私達が助けると思うんだい?私達は歓迎されていない身だし、ボンボルドンド君はより一層嫌われている。それに、私は個人的にそのドワーフの小娘が嫌いだと言ったはずだ。そんな私達がなんで助ける必要があるんだい?普段は煙たがっておきながら、非常時に力を貸せと言うのは・・・少々虫が良すぎる。こう言っちゃなんだが・・・自業自得、因果応報と言ったところじゃないのかい?」

 「おまっ・・・!そ、それでも・・・あの大陸の時はお前は力を貸してくれただろう!?」

 「あの時はあの時だよ。別にそこまで煙たがられてもいなかったし・・・何より、あの国を助けたのはタレッセ君との約束を守る為だ。友との約束を果たすとなれば話は別。どれだけ苦痛を与えられようが、無理難題を突きつけられようが・・・私はそれを果たす為に全力を尽くすと決めている」

 「お前とボンボルドンドは・・・ここを守ってくれていたんじゃ・・・俺達を待っていてくれたんじゃないのか・・・?全員を無事に逃がす作戦を・・・考えてくれてたんじゃ・・・ないのか?」

 「半分外れで半分正解。私が守ると決めた対象は友である君とパルシィ君だけだ。君達の帰りを待っている間にたわけ者達が襲い掛かって来たから、少々お灸をすえただけ。それ以外の事はどうでもいいかな」


 呆れた表情でケラケラと笑う彼女を前に―――一気に頭に血が上る。 

 

 「ナナシさん!!フロウちゃんの言葉を思い出してください!!」


 拳を握りしめて振り上げようとするが、背後から聞こえるパルシィの声で制止する。

 フロウの・・・言葉?


 『今から私の行動に黙って付いて来て欲しい。例えそれがどんな無茶苦茶な話であってもだ』


 確かにこの言葉は・・・覚えている。

 フロウを信頼しているからこそ、パルシィも黙って従っているんだろう。

 彼女の事だ・・・恐らく何か考えがあっての事だろう。

 ・・・それでも。

 だとしても・・・!

 覚悟は決まった。

 大きく息を吐き―――フロウに向かって歩き出す。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

評価は広告下の☆をタッチすれば出来ます。

続きが気になる方がいらっしゃいましたらブックマークをよろしくお願い致します。

皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ