自業自得と因果応報
「大丈夫か!?早くこっちに!!俺達に付いて来てくれ!!・・・もう少しだ!頑張れ!」
襲われているドワーフ達を救出し、ナナシは次々と指示を飛ばし続ける。
屋敷に向かう時は極少数だった一行は、今では一団となり進み続ける。
だが、それでも全てを救い出せている訳では無い。
所々に倒れているドワーフ達を見て・・・唇を噛み締める。
何で・・・こんな事になっているんだ・・・!
自分の無力さに怒りを覚えつつも進み続け、屋敷まで後僅かという距離で正面に数名のドワーフとオークが現れる。
数名のドワーフとナナシが戦闘態勢に移行する・・・が、それよりも速くパルシィが前に躍り出る。
彼女はすさまじい速度で集団へ突っ込みつつも、魔構式を展開。
淡い光が彼女を包み―――それは炎となる。
痛烈な一撃を受けたドワーフとオークの集団は四方に吹飛び、道が開かれる。
「・・・ごめんなさい。だけど・・・今はこうするしかないので、許してください。・・・さぁ!皆さん!後少しですよ!頑張ってください!!」
彼女の激に至る所から返事が上がり、一団は走り続け・・・ようやく屋敷へと辿り着き、思わず立ち止まる。
無理も無い。
そこには無数に転がるドワーフとオークの中で、フロウとボンボルドンドが何事も無いかの様にボードゲームをしているのだから。
「・・・ほほぅ、なるほど。その手があったか・・・やるね、ボンバボンバ君」
「恐縮です。それから私はボンボルドンドです」
そうだったね。と、フロウは軽く笑い・・・こちらに視線を向ける。
「おや?ナナシ君とパルシィ君じゃないか。いつの間にそんなに友達が出来たんだい?いや、別に僻んでいる訳じゃないよ?友を作る事は良い事だからね」
「フロウ・・・今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ!?お前・・・こんな状況で何やってんだよ!?」
「何って・・・ボンバーボンド君と仲良く遊んでいる所さ。ん?何だい?ははぁ~ん・・・さては妬いているね?ははっ、可愛い所があるじゃないか」
「ふざけてる場合じゃないだろ!」
「別にふざけちゃいないけど・・・まぁ、いいか。それで?そんなに血相変えてどうしたんだい?」
駄目だ・・・こいつじゃ話にならない。
すぐにボンボルドンドに視線を移す。
「ボンボルドンド!頼む!助けてくれ!」
「助ける・・・ですか?」
「そうだよ!お前達だって知ってるだろ!?かなりヤバい状況だ!大量のドワーフとオークが襲い掛かってきてるじゃないか!このままじゃ全員殺されるぞ!?なんとかしなくちゃ「何故私達が?嫌だよ、面倒臭い」
怪訝そうな表情の彼の横からフロウの声。
・・・は?
今・・・何て言った?
その言葉が信じられず、ゆっくりと視線を向ける。
「おい・・・フロウ?お前・・・今なんて言った?『面倒臭い』って・・・言ったのか?」
「なんだい、聞こえているじゃないか。わざわざ聞き返す必要あったのかい?」
「お前っ!今はふざけてる場合じゃないって言ってるだろう!!」
「言葉を返すようだが、ナナシ君。私もさっき言ったはずだ。『別にふざけちゃいない』と。なんだい?聞こえなかったのかい?」
「それは聞こえてる!だったら尚更おかしいだろ!何でここの人達を見捨てるんだ!?」
背後を警戒する者や怯えた表情の者達、倒れていったドワーフ達を思い出し言葉を荒げる。
「何でって・・・逆に聞くけど、何で私達が助けると思うんだい?私達は歓迎されていない身だし、ボンボルドンド君はより一層嫌われている。それに、私は個人的にそのドワーフの小娘が嫌いだと言ったはずだ。そんな私達がなんで助ける必要があるんだい?普段は煙たがっておきながら、非常時に力を貸せと言うのは・・・少々虫が良すぎる。こう言っちゃなんだが・・・自業自得、因果応報と言ったところじゃないのかい?」
「おまっ・・・!そ、それでも・・・あの大陸の時はお前は力を貸してくれただろう!?」
「あの時はあの時だよ。別にそこまで煙たがられてもいなかったし・・・何より、あの国を助けたのはタレッセ君との約束を守る為だ。友との約束を果たすとなれば話は別。どれだけ苦痛を与えられようが、無理難題を突きつけられようが・・・私はそれを果たす為に全力を尽くすと決めている」
「お前とボンボルドンドは・・・ここを守ってくれていたんじゃ・・・俺達を待っていてくれたんじゃないのか・・・?全員を無事に逃がす作戦を・・・考えてくれてたんじゃ・・・ないのか?」
「半分外れで半分正解。私が守ると決めた対象は友である君とパルシィ君だけだ。君達の帰りを待っている間にたわけ者達が襲い掛かって来たから、少々お灸をすえただけ。それ以外の事はどうでもいいかな」
呆れた表情でケラケラと笑う彼女を前に―――一気に頭に血が上る。
「ナナシさん!!フロウちゃんの言葉を思い出してください!!」
拳を握りしめて振り上げようとするが、背後から聞こえるパルシィの声で制止する。
フロウの・・・言葉?
『今から私の行動に黙って付いて来て欲しい。例えそれがどんな無茶苦茶な話であってもだ』
確かにこの言葉は・・・覚えている。
フロウを信頼しているからこそ、パルシィも黙って従っているんだろう。
彼女の事だ・・・恐らく何か考えがあっての事だろう。
・・・それでも。
だとしても・・・!
覚悟は決まった。
大きく息を吐き―――フロウに向かって歩き出す。
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