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不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
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亜人種歓迎


 あれから2日が経過し、王国領の港へと到着した。

 慌ただしく積み荷を降ろす船員達に挨拶をし、久方ぶりの大地に胸を撫で下ろす。

 やっと着いた・・・

 深呼吸をしつつ軽く伸びをしていると、フロウの声。


 「いや~やっと着いたね。随分と長かった、長かった。はてさてナナシ君?到着したら何をするかの約束は覚えているよね?」

 「・・・分かってるよ」


 上機嫌に頷く彼女とは違い、諦めた様に溜息を吐く。

 彼女の言う約束とは食事の事だ。

 パルシィとの仲がこじれた際、仲裁を買って出た時の条件。

 どう言いくるめたのかは知らないが、一先ず彼女との仲は通常に戻った。

 その事については感謝はしている。

 感謝はしているんだ・・・けど・・・

 元を辿れば・・・お前が悪いんじゃないのか?

 あんな事言わなきゃ、パルシィの部屋に勝手に入ってミミズを取ったりしないぞ?

 ・・・まぁ、済んだ事はしょうがない。

 結局は押し切られた自分にも非がある。

 気持ちを切り替え歩き出そうとすると、裾を引っ張る感覚。

 何だ?

 振り返った先には、パルシィの姿。

 彼女は頬を膨らませ、上目遣いでじっとこちらを見つめている。

 あぁ・・・そうだった。

 彼女とも約束をしていたんだ。

 

 「・・・大丈夫だよ、ちゃんと覚えてる」

 

 途端に彼女は笑顔になり、フロウと共に歩き出す。

 彼女との約束・・・『港に着いたら新しいミミズを買う』事。

 勝手に餌として使ってしまったのだから当然と言えば当然だが・・・

 上機嫌で歩く2人の背中を眺め、小銭入れを見る。

 ・・・足りるのか?

 その金額のあまりの少なさに肩を落とし、2人の後をついて行く。




 「よし・・・ここにしよう」


 一行の目の前には何とも形容しがたいボロボロの建物。

 え?

 何ここ?

 飯屋なのか?

 家畜小屋の間違いじゃないのか?

 確かに昼時の時間帯という事もありどこの店もかなり混雑はしていた。

 ここで7件目なのは分かる・・・が、流石にこれは・・・

 呆然としていると、フロウが肩をすくめ歩み寄る。

 

 「おやおや、ナナシ君?君は知らないのかい?隠れた名店というのは、外見にはこだわらない物なのだよ。私達は料理を食べに来たんだ。外観を楽しむために来た訳じゃないよ。ささっ、行こう行こう」


 いや・・・こだわらないにしても限度ってものがあるだろ・・・

 そんな気持ちに構うことなく、彼女に背中を押され・・・気が付いた。

 店の入り口に小さく書かれた文字。

 『亜人種来店歓迎』

 ・・・そういう事か。

 なんだかんだ言っても、彼女はやっぱり気が回る。

 パルシィは翼を隠している為他の店でも大丈夫だとは思うが、やはり食は自分達とは違う。

 彼女も気兼ねなく食事が出来る様にしているのか。


 「分かったよ、押すなって。パルシィもここでいいか?」

 「お二人と一緒なら私はどこでも大丈夫です!」


 笑顔の彼女に頷き、店内へ。

 昼時だというのに店の中は閑古鳥が鳴いていた。

 しかし、外観の割には小綺麗な店内を眺めていると、1人の女性が現れる。

 

 「いらっしゃいませー。3名様で?」

 「あぁ。それと、ここは亜人種歓迎と見たが本当かい?」

 「え?あぁ・・・まぁ。けど「だそうだ、パルシィ君。とりあえず、文字通り羽を広げて寛がせてもらうとしよう」


 いいんですか?と、尋ねる彼女にフロウは頷く。

 そのやり取りが理解できていない女性は首をかしげるが、パルシィの背中から翼が現れると目を見開き、口を開ける。

 

  「あ・・・え・・・あ・・・っっっっ!!!」


 口をパクパクさせていた女性は突然走り出し、店の奥へと消えていった。

 何か・・・マズくないか?

 人間にとって亜人種は恐怖の対象だ。

 人でもなければ魔獣でもない・・・そんな存在。

 そうでもなければパルシィが翼を隠す必要なんてない。

 あの国の人達は一緒に戦った彼女を受け入れてはくれたが、ここはあの国とは違う。

 この大陸では亜人種は差別や迫害をされているんじゃないのか?

 だとすると・・・こうやって亜人種を誘い出して、捕まえる事が目的とかか?

 嫌な予感がどんどんと頭を駆け巡り、チラリとフロウを見る。

 彼女は表情こそ変わってはいないが、明らかにその目はいつもとは違う。

 暫し立ち尽くす3人だったが、店の奥から一気に2つの人影が現れる。


 「うおっ!本当に亜人種じゃねぇか!!」

 「なっ!なっ!なっ!だから言ったでしょ!?」

 

 それは先程の女性と見知らぬ男性。

 2人はえらく興奮し、何度もパルシィと互いの顔を見比べる。

 やっぱり・・・捕まえる気か?

 唾を飲み込み、ゆっくりと剣に手を伸ばす・・・が、視線を向けずにフロウが呟く。

 その声や表情には先程とは違い、警戒心は無い。


 「待ちたまえ、ナナシ君。彼らは大丈夫だ」

 

 え?

 でも・・・

 いまいち状況が理解できずにいると、2人は一気にパルシィに向かって駆け寄る。


 「す、すみません!握手してもらっていいですか!?」

 「馬鹿!それよりも初めての亜人種のお客様でしょ!?丁重にもてなさないと・・・あっ!ど、どうぞ!お好きな席へ!!ついでに・・・その羽、少し触ってもいいですか?」


 ・・・え?

 想定外に友好的な2人に肩透かしを食らうナナシを余所に、フロウとパルシィは席へを向かう。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

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