表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不老の魔女と名無しの旅人  作者: きりくま
33/102

ポートラルトの戦い①


 先に動いたのは『剣』の魔女。

 魔力を脚部に集中し、一気に地面を蹴り上げる。

 単身で接近する魔女に対し、軍艦からは無数の砲弾の雨が降り注ぐ。

 凄まじい爆発音と共に前方に煙が立ち込めるが・・・索敵を続ける。

 この程度で魔女が死ぬはずがない。

 探せ!

 何で魔法を撃ってこないんだ?

 今までとは違うぞ!警戒しろ!

 これまでに何度も攻めては辛酸を味わってきた帝国の兵達は躍起になっていた。

 当然だ。

 今までは相手に魔女がいて自分達にはいなかった・・・これならまだいい訳は立つ。

 しかし、今回は違う。

 こちら側にも魔女が・・・それも、帝国の中でも5本の指に入る『奪取』の魔女がいるのだ。

 これで成果を上げられなかったら・・・火を見るよりも明らかだ。

 それ以前に、下手をすればこの魔女に殺される恐れもある。

 必死になるのも無理も無い。

 1人の兵士が何かに気が付き声を上げる。

 一斉に彼の指さす方へ視線を向けると、そこには『剣』の魔女。

 煙を突き破り遥か上空へ舞い上がっている魔女は魔構式を展開。

 素早く構築し、中央へ剣を突き刺す。

 刀身に淡い光が宿り、それは巨大な剣へと変わる。

 咄嗟に回避指示を出すが―――遅い。

 上空から薙ぎ払われた一撃は全て軍艦を巻き込んだ・・・はずだった。

 死を覚悟した兵士だったが、それは訪れない。

 その一撃は全ての軍艦を囲む様に構築された魔法によって防がれていた。

 

 (・・・防御魔法、『不老』さんの予想通り)


 『剣』は即座に懐から短銃を取り出し、上空へ向けて撃つ。

 赤い煙が上空に上ると同時に彼女はそのまま後退する。

 助かったのか・・・?

 何がおきたか理解できていない兵士達だったが・・・


 「・・・ちょっと、貴方達?何をぼさっとしているの?追撃よ。早くして」


 『奪取』の魔女の声が兵士達を現実へと引き戻す。

 即座に行動を開始する兵士達を横目に、彼女は椅子に頬杖をつく。

 

 (随分と戦い方を変えてきたじゃない) 


 これまでの報告では、向こうからの攻撃は殆ど無かった。

 こちらが攻撃をするが、魔女により全てを防がれ時間と物資切れで撤退。

 多分それが『硬壁』の魔女だったんだろう。

 もう1人の魔女は殆ど戦闘に参加していない。

 てっきり戦えない腑抜けだと思ったが・・・違うようだ。

 攻撃の暇も与えずに沈めるつもりだったのだろうが・・・随分とあっさり退いたな。

 それに退く間際の赤い煙弾。

 十中八九合図だろうが・・・何の合図だ?

 奇襲の失敗、もしくは・・・援軍でもいるのか?

 向こうが頼るとすれば王国かドワーフ・・・それか亜人種辺りか?

 魔女がいる以上エルフは動くはずも無いし、オークは渡航の術が木造船では数の内にも入らないだろう。

 公国は日和見・・・立場を考えると迂闊には動けないだろう。

 実際、内陸部では王国が動いたと聞いていたが・・・偶々か?

 まぁ、どの道この海域は帝国が掌握している。

 多少の増援など想定の範囲内。

 手元にあった地図を広げ、目を細める。

 左翼側・・・住宅や建物があり、船が乗りつける場所は無い。

 だが、相手もそれを分かっているだろう。

 防衛設備と人数はかなり少ないと予想できる。

 右翼側・・・造船所や灯台がある。

 左翼側とは正反対に防衛設備と人数は多いか。

 中央・・・ここにも船着き場はある。

 立地的にも開けている為、ここが一番防御が厚い・・・か?

 戦場を把握しやすい点から、魔女はここにいるだろう。

 近場の兵を呼び、指示を出す。

 

 「左翼側に3隻向かわせなさい。右翼には6隻。造船所を囲む様に位置取り・・・いいわね」

 「・・・え?ですが中央は・・・?」

 

 困惑する兵士に向け、『奪取』は目を丸くしたが・・・すぐに薄く笑う。


 「中央は私がいるじゃない?それ以外に何か必要なの?」

 「い、いえ!た、ただちに「あぁ、それと」


 走りだそうとする兵士を呼び止め、彼女は続ける。


 「極力、相手と建物の被害は抑えなさい。復興する資金や労働力に余裕が無いから。・・・それに」


 ニタリと笑みを浮かべる魔女を前に兵士はゴクリと唾を飲み込む。


 「私は他人の物を奪うのが何よりの楽しみなの。本人の目の前で大切な物を奪う事こそ・・・最高の瞬間。それが物でも子供でも命でもね」


 立ち尽くす兵士に微笑み、行きなさい。と、指示を出す。

 兵士がその場を離れ1人になった時―――僅かだが違和感を覚えた。

 ・・・何だ?

 距離があり正確には分からないが、極小の魔力が中央から左翼側・・・そして町の外へと抜けていく。

 これは・・・『不老』か?

 間違いないだろう。

 『剣』の魔力とは明らかに違う。

 左翼側から回り込むのか?

 『剣』の位置は・・・右翼?

 ここで気が付き、すぐに兵士に指示を出す。

 

 「全艦を中央に戻しなさい。魔女2人が左翼右翼に分かれて狙っているわ。距離がありすぎると流石の私も防げないの。いい?」

 「え・・・?」

 「いい?」

 「は、はっ!!」


 慌てて兵士がその場を離れると同時に―――再び違和感。

 何・・・?

 右翼の『剣』がこっちに来てる?

 各個撃破じゃないの?

 わざわざ正面に・・・何のつもり?

 眉を顰める『奪取』だったが、指示を受けた各艦は既に方向転換しこちらに向かい始めようとしていた。

 前方上空に現れた『剣』は再び魔構式を展開。

 先程よりも強大な魔力の剣を―――薙ぎ払う。

最後までお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、いいね・評価頂けたら幸いです。

評価は広告下の☆をタッチすれば出来ます。

続きが気になる方がいらっしゃいましたらブックマークをよろしくお願い致します。

皆様が読んでくれることが何よりの励みになりますので、至らぬ点もございますがこれからもよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ