外伝・戦闘より恐ろしい戦い ~天使のような小悪魔と小悪魔のような天使~
「朝日君。かわいいお客さんだ」
政界を引退した農田だが影響力がないわけではない。
福島県の某市にあるこの家は元避難地域にあるのだが時々怪しい客が。
そんな中でも農田が好意的に接するのが明日香であり。
「朝日さん。こんにちは」こうやってモジモジして照れるこの娘である。
この子は明日香の親友で近葉優花ちゃんという。
お母さんが現役のキャバクラ嬢だけあってその恰好は母の趣味を反映し、露出度の高い黒で統一されていて髪も栗色。明日香と並ぶと好対照だ。
ちなみに見た目は小悪魔だが中身は明日香の正反対の純情にして引っ込み思案。
二人の人格を交換したら見た目通りになる。
「あれ? 明日香は?」昨今は大手Web検索会社が自動運転する無人式『自動車』が普及し、子供でも安全に移動が可能だ。
「きょ、今日は勉強が忙しいって!?」なぜに疑問形?
なぜか顔が赤い彼女は綺麗な文字で丁寧に書かれた無地に罫線のないノートを取り出す。
「その。あの。受験対策に勉強を教えてもらいなさいってお母さんが!」
ちなみに明日香のノートは彼女と好対照でアニメのプリントの入ったノートに彼女が描いた漫画キャラの図解が彼方此方入っている。どちらも成績は悪くないらしい。
「教えてやりたまえ。どうせ今日は非番だろう」着物を着てにこにこ笑う農田は孫が来たかのように喜んでいるが彼の家族は震災の津波でいなくなっている。
あのころと比べて飛躍的に復興が進んだ。
震災を知らない世代も増えてきた。かつて原発事故が起きた。メルトダウンが起きた。除染技術が進んだ現在では放射能が恐ろしい存在だったと知らない人間も多い。
「もっともっといろいろ教えてほしいのです。朝日さんのことも」俺の話? うーん。うーん。別に話せる話はないしなぁ。
「とーふちゃんの活躍の話。私はまだ小さかったけど明日香から聞いているの」
まさか明日香の奴、しゃべっていないだろうな。まぁ周知の秘密なんだろうけど。
ところで優花ちゃん。
最近顔が赤いけど体調が悪いなら休んでいいのだけどな。
後日。
明日香の機嫌が凄く悪かった。
何故だ。




