外伝・戦闘より恐ろしい戦い ~女のビキニは戦闘服~
「暑い。熱いんだよ」
俺は毛が濃いほうじゃないがそれでも産毛が焼ける嫌な感じが鼻につくような気がするし、汗もかけば喉も乾く。こんな日は涼むに限る。
ない唾をのみこみ、刈り上げたわずかな髪を指先で撫で上げ、半長靴から足を出してアイスクリームを咥える。
ああ。アイス最高。
安物のビニールプールをベランダに出し、野菜用の日よけネットをかけておけばかなりクーラー代の節約になる。
そんなベランダは夏場のマイルーム。
夕立がちょっと気になるが。
じりじり来る猛暑は洒落になっていない。
『みらい』事件後核融合炉二号機の建設が急ピッチで進んでいるとはいえまだまだ平和には程遠……。
「ビキニ着ていこう」
俺の平穏は彼女の一言で破られたのである。
「まだ早い」
「じゃ、全裸」
満面の笑顔で挑発的にほほ笑む明日香。
「幼すぎるわっ?! 」何を考えているんだろう。
確かに大昔は大地従兄ちゃんたちと海で遊んだが。
ばしゃ。ああ。ベランダが水浸しじゃないか。
半眼で下から睨む俺に明日香は涼しい顔。
大きく開いたワンピースの胸元をパタパタしたかと思うとこれ見よがしにロングスカートの端で汗をぬぐって見せる。
ギリギリでパンツは見えないが何をしているのやら。
「ああ。股間に血を注いじゃうのね。わかるわかる。朝日の気持ち」
「わかっとらんわっ?! 誰がそんなことすっか?!」
最近、こいつどんどん生意気になるんだよなぁ。
とはいえ、学校の勉強はそこそこできるみたいだし将来は心配していないけど。
そんな彼女はくってかかる俺を無視するようにしゃがみこみ上目づかいで見上げて少し赤みを帯びた鼻先を俺に向けて呟いた。
「じゃ、私の股間に白くて熱いのを注ぐつもりなのね」「ぶばぁああああああ?!」
思わずアイスを噴きだす俺に頬を染める明日香。ナニを考えているのだ。
「明日香君。朝日君をからかうのはやめたまえ」
最近。俺は農田の家にお世話になっているのだが、秘密のはずの俺の居場所をどこからか嗅ぎつけては彼女はこうしてやってくる。おそらく沙玖夜さんの入れ知恵だろうが。
いい歳こいたおっさんの俺だが、子供のようにムキになって彼女とやり取りをする日々は童心にかえった気がして意外と楽しく。
「とっとと帰れ! もう勉強は終わっただろう?!」「え~。寂しいくせに~」
そうしてなぜかうるんだ目で告げる。
「寂しくなったら。私を思い出して良いのよ」
「どういう風に?」「あああん。わかっているくせにぃ♪」
あ~。まぁその。いなくなったらいなくなったでほっとするというか寂しいのは。
たぶん事実だ。




