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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
祝賀編。巨大ロボよ。スーパーロボットになれ。(最終章)

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最後の切札

 「……!!」俺は声ならぬ叫びを放った。

 轟音と共に俺の目の前で吹っ飛ぶ『みらい』。

 いくら核融合炉が放射能汚染が少ないと言っても!


「緊急事態!核融合炉『みらい』が吹き飛びました!」

「自衛隊出動!」「市町村職員は避難誘導をお願いします!」

「警察は治安出動。および誘導を!」「消防も指示に従ってください」

「海上保安庁、少しでも船を出してください!」

「北海道、青森県の方は速やかにラジオと最寄の市町村の職員の指示に従い、避難してください。

 また、マスク、長袖など可能な限りの防護をお願いします!」


「……わが国が誇る核融合炉がエコテロリストの魔手により破壊された。

 速やかに市民は誘導に従い避難せよ。軍は引き続き占守島に援軍に向かえ」


「ロシアと日本の国境付近にて試作核融合炉が炎上。人民軍は……」

「緊急事態。ロシアと日本の国境にて核融合炉が炎上」


 ……。

 燃える『みらい』から。炎の中から巨大な人影が姿を現した。

 いや、『人』ではありえない。長く、太い腕、短い脚。頭のない胴。

 禍々しい凶器の数々を装備した。巨大なゴリラのような機体。


 放射能汚染環境下において軍事行動を行うために開発された兵器。

 ゴリラを基にデザインされ、走行時は四足歩行をもって圧倒的な機動力を発揮し、

 戦闘時はその怪力をもって武器を巧みに操る。



 放射能汚染環境下特別歩兵(HOKTH)。

 その通称に違わぬ『咆哮』を上げ、其の機体は瓦礫の上で勝ち誇っていた。

「遅かったな。旧式」

 奴は炎の中、勝ち誇っていた。


「お前たちの『みらい』は」

 機敏に跳ね、元になった生物と同じ動きで俺に近づいてくる。


「燃えてしまったぞ」

 奴の単眼が、笑ったように見えた。


 ……『HOKTHホウコウ』。

 放射能に汚染された世界でも殺し合いを続けるための。其のために産まれた。兵器。



「……015式突貫銃」声が小さすぎて、音声認識が反応しない。

 ……なんだよ。こんな、こんな。こんなときまでっ!!!!


「殺し合いかよっ?!!!!!!!!舐めんなぁああああああああっ!!!!!

 ……ぜろっっぉぉ!!!いちごおおしききぃぃ!!とっかんじゅううううっっ!!!」


 俺の射線を軽々と飛び越える『咆哮』。殺し合いの始まり。……だ。


 ……悪い。神無月さん。……俺、また人殺すかも。

 激しい衝撃を感じながら俺は二丁の銃のトリガーを引き続ける。

 弾切れ。即座に排莢。腰だめの薬莢に015式突貫銃をぶち当てて更に射撃。


「……あたらっ??!ないっ??!!!」「遅い!遅い!遅い!遅いぞ旧式っ!!」

 人間とゴリラでは運動能力そのものが違う。力もまた同じ。

『咆哮』は易々と俺の射撃をかわし。


「はははははっ???!!」大量のミサイルを放つ。

「ボンバーネット!!!!!!」特殊網で出来た爆薬つきの網。

 本来は構造物破砕用に使うものだが、小型ミサイル迎撃にも使えなくはない。


「ほう。読んでいたか……くくく」

 ゴリラ野郎は瓦礫の上でピョンピョンと跳ねて挑発する。


「……」ふん。

「……ほう。ヤマタノオロチの支援を自ら切ってマニュアル操作に換えたか。

 確かにそれでは私には貴様の手が読めんな」

 やっぱり、……読んでやがったか。


「……そういうこったろうと思ったからな」「だが?!!」

『咆哮』から激しい火線がほとばしる。慌ててかわす。


「遅いっ!遅いっ!遅いっ!所詮マニュアル操作だなっ!

 フルコンピュータ制御の『咆哮』の敵ではないっ!!!!」


「……!!」近くの停止中の無人機を乗っ取り、奴の背後から攻撃させるが。

「はははっ!!旧式!腕が動いているぞっ!!!」見抜かれているっ!?

 トーフはボタン操作や無人重機を使用する場合、機体に動きが反映されてしまう欠陥がある。

 が。他者への攻撃を前提としていないので、まったく問題視されていなかった。

 むしろその動作の滑稽さを国民が愛したからでもあるが。


「『咆哮』の腕は、全ての動きはっ!!

 貴様ら旧式のデータから作られたソフトウェアによってコントロールされるっ!」


「感謝するぞっ!旧式っ!!!貴様らのお陰で、我らの理想が体現するっ!!!」

 激しい射撃が俺のトーフの胴を薙ぐ。とっさに飛んでかわすが、大きく転倒し、激しい衝撃に嘔吐した。


「まさか。てめぇ」

 俺は銃のトリガーを引く。

「遅いっ! おそいっ! おそいっ!!!」大量の火線が俺を襲う。

 ……なぶり殺しにするつもりか。


「おっと。剣は厄介だな」距離を詰めた俺の機体から腕と脚を使って軽々と離れ、

「……『人間』ごときがっ!!!『咆哮』に勝てるかっ!!!!!!」また、射撃が俺を襲う。


 ガンガンという激しい音、衝撃。たちまちへこんで行く俺のトーフ。


「神は、仰られた。鯨を。イルカを殺す日本人は滅びろと」どういう妄想だ。まったく。

「アダムとイブが神に背き、『罪』は大地を染めたが。

 ……大地に住まぬもの、そして其の中でも知恵を持つものは神への罪を持たぬのだっ!!!

 我が父祖はっ!!! B29に乗って戦っていたがっ!!! 墜落して日本軍の捕虜となり!!!

 人体実験の材料とされっ!! 片肺を取り出されっ!! 身体をバラバラにされてっ! 最後は殺されたっ!!!!!!!!!」

 ……そっか。

「罪人どもよっ!!!! 滅べっ! 地球を犯すウィルスよっ! 人間よっ! 滅べっ!!!」 


 正直。ようわからん。俺がわかるのは。

 命ってのは、そうだな。そんなふうに理不尽に。簡単に。……摘み取られてしまうものだが。

「……暖かくて、優しいもので……護りたいんだっ!!!!!!!!!!!!!!」

 ヤマタノオロチの射撃管制支援など何もない。だが、俺の射撃は『咆哮』のミサイルランチャーを砕いた。



「てめぇのオリジナル。舐めんじゃねぇ。THBFトーフの動きは。俺の全てだっ!!!!!!!


 ……全力でかかってきやがれっ!!!!!!!ゴリラ野郎っっ!!!!!!!!!」


 俺は剣を抜き、『咆哮』に斬りかかる。

 居合いと共に一ノ太刀、二ノ太刀、三ノ太刀、四ノ太刀、五ノ太刀。

 瞬間を持って五方星を描き、突撃にして斬を成す秘剣。


 が、『咆哮』の動きは俺の上を行った。

「遅いッ!! 遅いッ!!! 遅すぎるっ!!!!」


 凄まじい衝撃と共に吹き飛ばされ、うめく俺のトーフに奴は勝ち誇る。

「接近戦など挑ませてやると思ったか??! 戦は遠距離戦だっ!!」

 激しい銃撃の振動が俺の骨をバラバラにしていく。今までのは全て。遊び。


「罪びとどもよっ!! 裁きの光を見よっ!!! 『みらい』は燃えているぞっ!!」

 奴の声が、俺の薄れる意識の中響いた。……くそっ……たれ。


 やべ、意識が……とびそう。

「まけないで」あれ。どっかで。おまえ。「ゆ~びきり げ~んまん う~そついたら」


 ああ。お前か。明日香。もう無理かも。

「針 飲~ます!」

 ははは。うん。無理かも。俺は腕を振って、操作盤を叩く。

 笑えないな。エネルギー不足で、ほとんど動けないんだ。俺もトーフも粉々。もう。


「あ~? 娘 やらね~ぞ?」

 無理。大地ダイチ小父にいちゃん。たぶん、終わり。


「ほ~? ほ~? 朝日よ 諦めるのか~?」

 沙玖夜サクヤさん。ちょっとだけ、あこがれてました。ごめんなさい。クズで。迷惑でしたよね。


 『私たち人間の心は、安易に外に敵を求めるが。それは違う。

 自らの内に、自らとの戦いに、本質はあるのだ』

 農田。お前のこと、親父みたいに思ってたよ。

 『ないのが普通だ。ないから、あるのだ。それを見出して、生きるのが我ら日本人だ。

 欠点をただ排除するのではない。受け入れて内包し、共に生きるのだ。それが真の力となる」

 ナイナイ。絶対ない。俺の機体にあった無駄な機能をうめたのが、『咆哮』だ。

『人々の希望を胸に。未来を護って立つなら。どんなに情けなくても。それはスーパーロボットだ』

 ……ははは。いまさら農田の説教を思い出すなんてな。


「がんばって」「まけないでトーフちゃん」「おーい。隊長」「いきてかえってくるんやで~」

「生きて戻ってきて」「まだお前の仕事は残っているだろ!トーフ!!」

「フレー!」「命!」「フレー!」

「--。-」


 ?!……!!


 一気に視界が開いた。俺のTHBFと。『咆哮』を複数の『画面』が囲んでいる。

 その画面からは、国民の皆が思い思いのロボットアニメの歌を歌う姿が映っている。


 『咆哮』の猛撃。トーフの腕が千切れ飛ぶ。右。そして左。

「腕がなければ剣は振れぬなぁあああああああああああっ??!!!」

 生体部品がはじけ飛び、人口筋肉から『血』がほとばしる。


「がんばれ!」「まけるな~!」「いきてかえってきて~!」「ぶっとばせ~!」

「とーふたん!」「がんばなの~!」

「そこで負ける気じゃないよな~?!」「とふたん!」「俺たちが!ついているぜ~!」

「いけっ~!」「今逃げるけど!逃げないよ~!」「ぼく等」「とーふたんといっしょに戦う!」

 ……俺は思いっきり操作盤を叩いた。まだ。まだ。まだ諦めてたまっか?!!


「次は、脚だっ??!! 見ているかっ?! 見ているかっ?!

 見ているだろうっ! 愚かなる日本人どもよっ!! 神の裁きをみろっ!!

 貴様らの『守護神』はっ! 情けないなっ!! これがっ! 現実だっ!!

 なにが核融合炉によってエネルギー問題の解決だっ?! なにが戦争放棄だっ?!

 なにが平和だっ?! なにが復興だっ! 経済発展っ??! 調子に乗るなっ! サルどもっ!!」


 必死で残った片足をばたつかせる。大地を蹴って飛び上がり、『咆哮』に向かい。

 天を仰いで、転んだ。


 剣は砕け、両腕は失い、片足は喪われ、エネルギーは尽きた。

「ハハハッハハハハ!!!!!!!!! お笑いだなっ!!!」


 炎の中哄笑を上げる『咆哮』。

「貴様らの守護神。『トーフちゃん』の『中身』を知っているか??!

 知らないだろう?! サルどもっ!

 ……其の名は『ハルカナル アサヒ』!! 小娘を居眠り運転で轢き殺した、クズよっ!!」

 奴の哄笑が響く。


 ……。

 そうだな。俺は善でもヒーローでもねぇ。

「其の顔、その情けない姿をっ!!みせてやるっ!!このクズの中に入ったクズを切り出してっ!

 放射線にまみれてもだえ死ぬ姿をっ!!!貴様らに見せてやるっ!!!」


 そうだな。俺は善じゃねぇ。

 ……人殺しだからな。


「だからっ!!!!!!! 命はっ!!!!! まもるっ!!!!!!!!」

 気力を振り絞って。叫ぶ。


 ドカッ! 『咆哮』は俺のトーフを踏みつけた。らしい。……。

「ゆっくりみていろ。豆腐がドロドロになる姿をなっ!!……020式!! ダイヤモンドカッター!!!」


「ああああああああっ!!!」「トーフたん!!」「いや~~~!!」「らめえぇぇ~~!!」

「だめ!」「あああああ~!!」

「放射能で皆しんじゃうの~?!」「もうだめなの?」「もう、逃げるのはいや~!」

「トーフたん!!」「らめええええ~!!」「もういい!よくやった!」「トーフたんを壊さないでぇ~~!!」


 ガリガリと言う音。成すすべなく削られていくトーフの装甲板。

 うん。そうだな。俺は人殺し。悪。てめぇは正義の為に戦う。正義の味方。うん。


「諦めないで」

 ああ。明日香。


「謝らないで。私、全部許してあげる。だから」

 判っている。


「死んだ人たちの、物語に。意味を作ってあげて」

 うっさいな。判っているよ。明日香。


「それが贖罪なの」

 そうだな。


「『私が』あさひおにいちゃんを護ってあげるから」

 ……ああ。


「勝てええええええええええええええええっっ!!!!!!!!!」

 ―――少女は自宅のTVの前で絶叫した。その声は。俺の。俺の耳になぜか届いていた―――


 俺の両手は操作盤を激しく叩いた。両手は。……『飛ばされた』んじゃねぇ!!

 こっちの『手』をみせねぇ為に!!! 『飛ばした』んだよっ!!!!!!!! 


 これがっ! これがっ! 秘密のっ! 秘密の切札だっ!!!!!!!!!!!!

 トーフの胸部装甲が内部から吹き飛び、時速1500キロで射出された弾頭が『咆哮』の胸部を強打する。

『咆哮』の胸部装甲が砕け散り、生体筋肉が露出し……『咆哮』は動きを止めた。


「トーフにはな。電源が落ちていても、使える武器があるんだよ」

 トーフに唯一搭載された内蔵兵器。015式スプリング式射出弾頭(通称ロケットパンチ)。一門。


「莫迦野郎。さっきから福田が画像通してモールスでJAKQって連発してたんだよ」空を見上げながら俺は呟いた。


JAKQジャッカーとは、PlayingCards(プレイングカード)における

 ジャック、エース、キング、クイーンの頭文字を意味する。

 日本ではこういうんだ……切札トランプってな」


 砕け散ったトーフの外部装甲。

 両手を失い。片足を失い。外部装甲の支えをなくして動けなくなって横たわるトーフ。

 顔面部装甲も弾け跳んだ其の素体は。『俺が轢き殺した少女にそっくりな顔で』微笑んでいた。

(次回予告)

2015年。日本国は。人類はスーパーロボットの開発に成功した。

次回。『すぱ☆ろぼ!!』最終話。


「最終話。すぱ☆ろぼ!!」

命は。輝くもの。

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