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PLAY AND BACK  作者: 塩見ヒモン


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沈黙の呪い

うちの家族は、幽霊が出ると噂される場所や、不気味だと言われる建物によく足を運んでいた。人々が「まだ何かがさまよっている」と囁くような場所ばかりだった。


けれど、ぼくは一度も怖いと思ったことがなかった。廃墟になったビルや、忘れられた墓地をどれだけ一緒に歩いても、幽霊なんて本当に現れたことは一度もなかったから。


わざと相手を挑発しているわけじゃない。ただ、証明するほどの恐怖心を、そもそも持ち合わせていなかっただけだ。


怪談というものは、いつもぼくには馬鹿げた話にしか聞こえなかった。真実というより、誰かの想像力が寄せ集められて出来た物語みたいに思えたから。


その頃、うちの家族は十二月の日本旅行の計画で忙しくしていた。リビングの隅には、まだ何も詰められていない空っぽのスーツケースが置かれていて、荷物が入れられる日を待っていた。


数ヶ月前、九月のレバラン休暇にも、家族でジョグジャカルタへ旅行していた。マリオボロ通りを歩いたり、ボロブドゥール寺院の古い石のレリーフを眺めたりした帰りに、いつもの「肝試し」も忘れずに寄った。今回の行き先はスダユ駅だった。


不思議なことに、その旅の間、お父さんとお母さんは何度も、交互に耳が聞こえなくなった。まるで、目に見えない何かが二人の隣をすれ違うたびに、耳を奪っていくみたいだった。


その現象が繰り返し起こったせいで、最終的にぼくたちは霊媒師を呼んで、家までついてきたかもしれない何かを追い払ってもらうことにした。霊媒師によれば、それはスダユ駅からずっと憑いてきた「耳の聞こえない霊」だったらしい。霊媒師は、無事に追い払ったから、もうこれ以上ぼくたちを悩ませることはないと請け合ってくれた。


空港へ向かう前、ぼくたちは必要な服や道具をスーツケースに詰めて、ひとつずつファスナーを閉めていった。


日本へ出発する前日、ぼくは今回はどこの心霊スポットに行くのか聞きたくて、お父さんとお母さんを探していた。


そういえば、日本でどこの怖い場所に行くのか、まだ聞いてなかったな。そんなことを考えながら、タイルの床に自分の足音が小さく響いていた。


リビングに着くと、そこは完全に空っぽだった。ソファのクッションはきちんと整えられたまま、誰も座った形跡がなかった。


「お父さん? お母さん?」


自分の声が壁に跳ね返って、いつもより小さく聞こえた。なぜか家の中が、普段より静かで、重く感じられた。まるで空気そのものが、ぼくの周りでどろりと固まってしまったみたいだった。


いつもなら、外を通るバイクや車の音、あるいはお母さんがフライパンを熱するときの、あの安心するようなヘラの音が聞こえてくるはずだった。でも今は、四方八方から静けさだけが耳に押し寄せてくる。


うちの門の前をいつも押し車で通る物売りたちの、あの馴染みのある呼び声さえも、完全に消えていた。うちは小さな交差点にあって、普段はもっと賑やかなはずなのに。


「もしかして、部屋にいるのかな」ぼくは自分を落ち着かせようと、小さくつぶやいた。


急いで両親の寝室へ向かった。手のひらにはもう汗がにじんでいたけど、そこにも二人はいなかった。焦って膝をつき、ベッドの下まで覗き込んだ。クローゼットの扉も勢いよく開けた。何もない空間を見つけるたびに、心臓の音が速くなっていった。


何もない。どこを探しても、本当に何もなかった。


家じゅうの隅々を走り回りながら、二人の名前を叫び続けた。胸が上下する速さが増していくのに、返ってくる答えは一つもなかった。


「お父さん……お母さん……どこにいるの……」


パニックがゆっくりと喉元まで這い上がってきて、まるで拳で締めつけられているみたいだった。


「誰もいないなんて、おかしい。近所の人に聞いてみよう」自分にそう言い聞かせながら、玄関のほうへ体を向けた。


考える間もなく外へ飛び出した。裸足の足の裏に、冷たい歩道の感触が強く当たった。


けれど、玄関を出た瞬間、左側から一台のバイクが猛スピードで突っ込んできた。エンジンの音が、あまりにも近くで唸っていた。運転手はちょうど、うちのすぐ横の交差点を曲がろうとしていたらしく、門の前の歩道を危険なほどの速さで斜めに走り抜けようとしていた。


避ける間もなく、バイクがぼくの肩をかすめた。腕に鋭い痛みが走った。運転手はバランスを崩して地面に転んだけど、幸いその瞬間、道はそれほど混んでいなかった。


「歩くときは左右をちゃんと見ろよ! 家から出てくるのに全然注意してないじゃないか! ずっとクラクション鳴らしてたのに、一度も振り返らなかっただろ!」


「クラクション? そんな音、一度も聞こえなかったけど」まだ衝撃で震えながら、ぼくは小さくつぶやいた。


運転手は悪態をつきながら体を起こし、鋭い手つきでジーンズについた砂利を払い落とした。バイクに傷がないか手早く確認したあと、また跨って、何も言わずに走り去っていった。あとには排気ガスの匂いだけが残った。


その騒ぎに気づいた近所の人たちが、次々と家から出てきて、ぼくの周りに集まってきた。


「大丈夫か、坊や?」誰かがしゃがみ込んで、ぼくの顔を覗き込みながら聞いた。


別の人は、もっと柔らかく、でもはっきりとした口調で注意した。


「歩道だからって油断しちゃだめよ。家を出るときは、ちゃんと確認してから走らないと。この辺り、さっきの人みたいに歩道を猛スピードで走るバイクが結構多いんだから」


ぼくは何も答えられなかった。手の震えは止まらず、喉も詰まって言葉になりそうになかった。自分の鼓動がどくどくと耳の中で鳴り響いて、周りの声すらかき消してしまいそうだった。


しばらくして、お父さんとお母さんが真っ青な顔で家から飛び出してきて、まっすぐぼくのところへ駆け寄ってきた。近所の人たちが、さっき起きたことを慌ただしく説明してくれた。


二人はすぐにぼくを強く抱きしめた。


「ずっと呼んでたのよ」


その声は少し震えていて、安心と恐怖が入り混じっているのが分かった。ぼくが本当に大けがをしていたかもしれないと気づいて、余計にそう感じたのだろう。


お母さんの手が背中に回されるとき、震えが伝わってきた。まるで、手を離した瞬間にすべての危険が本当になってしまうとでも思っているみたいに、きつく抱きしめられていた。お父さんの息も、どこか乱れていた。いつもの落ち着いた表情の裏に隠そうとしている恐怖が、呼吸のリズムから漏れ出していた。


二人の間に立ち、その温かさに包まれながらも、ぼくの頭の中では、ある疑問だけがずっと消えずに回り続けていた。


もし本当にずっとぼくの名前を呼んでいたのなら――なぜ、あの家の中で、一つの音も聞こえなかったんだろう。

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