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魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった  作者: 悪癖


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73/73

第73話 未知があるなら、調べるだけだよ

虚界研究部は、相変わらず僕の部屋みたいな扱いになっている。


 


正式には部活の部室なんだけど、実質的には研究室だ。


 


設備も、機材も、だいたい僕仕様。


 


「……これ、本当に学校の部室なのよね?」


 


澪が、部屋の奥に積まれた機材を見て呟く。


 


 


「一応ね」


 


僕は特に気にせず答える。


 


 


机の上には、見慣れない形のデバイスがいくつか並んでいる。


 


壁際には、小型の発魔ユニットと観測機材。


 


天井には、フェーズレーダーの簡易版。


 


 


完全に普通じゃない。


 


 


「一応じゃないでしょ……」


 


澪がため息をつく。


 


 


「これ、完全に私物化してるじゃない」


 


 


「してるよ」


 


 


僕はあっさり認める。


 


 


 


実際、その通りだから。


 


 


 


戦いが終わったあと、いろいろあって。


 


 


この部室は「天原理久の研究拠点」として扱われることになった。


 


 


名目上は学校施設。


 


 


でも実態は――


 


 


「好きに使っていいって言われてるし」


 


 


「それが問題なのよ」


 


 


 


しかも。


 


 


「必要なものは申請すれば出るし」


 


 


「国の予算で、ね」


 


 


澪が補足する。


 


 


「ほんと、とんでもないことになってるわよ」


 


 


 


まあ、そうなんだろうけど。


 


 


僕としては、便利になっただけ。


 


 


 


「で、今日は何やってるの?」


 


 


澪が椅子に座りながら聞いてくる。


 


 


その手には、いつの間にか用意されたお茶。


 


 


 


「観測の準備」


 


 


僕はデバイスを操作しながら答える。


 


 


 


「また何かやる気?」


 


 


「やるよ」


 


 


 


そのやり取りの横で、太陽がソファにどかっと座る。


 


 


「はー、疲れた」


 


 


 


ジャージ姿。


 


 


完全に部活帰り。


 


 


 


「今日も練習?」


 


 


「おう。マジきつい」


 


 


 


言いながら、澪の横からお茶をひょいっと取る。


 


 


「ちょっと、それ私の」


 


 


「いいじゃん一口くらい!」


 


 


「ダメに決まってるでしょ!」


 


 


 


いつものやり取り。


 


 


 


太陽はサッカー部と兼部。


 


 


澪は陸上部に復帰して、同じく兼部。


 


 


 


だから、二人とも毎日ここにいるわけじゃない。


 


 


 


「でもまあ、こうやって来るよな」


 


 


太陽が言う。


 


 


 


「だって落ち着くし」


 


 


 


「……否定はしないけど」


 


 


澪も小さく頷く。


 


 


 


結局、ここは変わらない。


 


 


戦いが終わっても。


 


 


日常に戻っても。


 


 


 


「で、理久は?」


 


 


太陽がこっちを見る。


 


 


 


「何観測してんの?」


 


 


 


「まだ準備中」


 


 


僕は適当に答える。


 


 


 


「また変なの見つけたのか?」


 


 


 


「見つけるつもり」


 


 


 


「お前ほんとそれだな」


 


 


太陽が笑う。


 


 


 


澪も、少し呆れたように言う。


 


 


「まあ、そういうところが理久よね」


 


 


 


 


部室の中は、静かで。


 


 


でも、どこか賑やかで。


 


 


 


戦いが終わったあとでも、変わらない空気が流れている。


 


 


 


――ただ一つ。


 


 


変わったことがあるとすれば。


 


 


 


「次、何見るかな」


 


 


 


僕の興味が、少しだけ先に進んだことくらいだ。



――――――



休日。


 


グラウンドは、やたらと人が多かった。


 


「……ほんとに来たのね」


 


隣で澪が少し呆れたように言う。


 


 


「来るって言ったでしょ」


 


僕は適当に答える。


 


 


太陽が出る試合。


 


地区大会の準決勝だったか、その辺。


 


 


正直、サッカー自体にはそこまで興味はない。


 


 


でも。


 


 


「まあ、観測対象としては面白いよ」


 


 


「観測って言い方やめなさい」


 


 


 


スタンドに座る。


 


 


ホイッスルが鳴って、試合が始まる。


 


 


 


太陽は、前線。


 


 


ポジションとか詳しくは知らないけど、ゴールに近いところ。


 


 


 


「……動き、速いわね」


 


 


澪がぽつりと呟く。


 


 


 


実際、その通りだった。


 


 


以前よりも明らかに加速が鋭い。


 


 


切り返しも無駄がない。


 


 


視線の動きも、周囲の把握も、全部が一段上がってる。


 


 


 


「まあ、あれだけ戦ってたし」


 


 


僕は軽く言う。


 


 


 


対ヴォイド戦。


 


 


命のやり取り。


 


 


反応速度も判断も、あのレベルに最適化されてる。


 


 


 


「普通の試合なら、余裕で通用するでしょ」


 


 


「余裕って……」


 


 


澪が苦笑する。


 


 


でも否定はしない。


 


 


 


試合は拮抗していた。


 


 


点数は0-0のまま、後半。


 


 


 


相手も強い。


 


 


守備も固いし、連携も取れてる。


 


 


 


――けど。


 


 


「来るな」


 


 


僕は小さく呟く。


 


 


 


太陽がボールを受ける。


 


 


相手ディフェンダーが二人寄せる。


 


 


普通なら詰む位置。


 


 


 


でも。


 


 


「――っ!」


 


 


一瞬の加速。


 


 


足の置き方、体の向き、重心移動。


 


 


全部が最短で繋がる。


 


 


 


ディフェンダーの間を抜ける。


 


 


「うわ……!」


 


 


澪が思わず声を漏らす。


 


 


 


そのまま、ゴール前。


 


 


キーパーが出る。


 


 


 


「そこか」


 


 


僕は何となく理解する。


 


 


 


太陽は迷わない。


 


 


 


振り抜く。


 


 


 


――ゴール。


 


 


 


ネットが揺れる。


 


 


 


一瞬、静止して。


 


 


 


「うおおおおおおお!!」


 


 


歓声が爆発した。


 


 


 


太陽が両手を上げて走る。


 


 


チームメイトが飛びつく。


 


 


 


「……やったじゃない」


 


 


澪が、少しだけ嬉しそうに言う。


 


 


 


「まあね」


 


 


僕は特に感動もなく頷く。


 


 


 


「順当」


 


 


「もうちょっと何かないの?」


 


 


 


試合はそのまま終了。


 


 


1-0。


 


 


 


太陽のゴールで勝ち。


 


 


 


「……全国、行けそうね」


 


 


澪がぽつりと呟く。


 


 


 


「行くでしょ」


 


 


僕はあっさり言う。


 


 


 


あの動きなら。


 


 


この先も、普通に勝つ。


 


 


 


 


グラウンドの中央で、太陽がこっちを見つける。


 


 


大きく手を振る。


 


 


 


「おーい!!」


 


 


 


僕は軽く手を上げる。


 


 


 


その顔は、いつも通りで。


 


 


でも、少しだけ違って見えた。


 


 


 


戦いのあとじゃなくて。


 


 


 


ただの試合で、勝った顔だった。



――――――



テレビをつけたのは、たまたまだった。


 


特に目的もなく、リモコンを操作していて、流れで止まっただけ。


 


 


「――女子100メートル決勝、間もなくスタートです」


 


 


実況の声。


 


 


画面には、見慣れた顔が映っていた。


 


 


「……ああ、今日か」


 


 


澪。


 


 


スターティングブロックの前で、軽く体を揺らしている。


 


 


 


「理久、それ見るの?」


 


 


太陽が横から覗き込む。


 


 


「まあね」


 


 


 


場所は部室。


 


 


放課後、いつもの感じでだらっとしてた時間。


 


 


テレビがあるのも、いつの間にかここに設置された設備の一つ。


 


 


 


「すげえよな、全国大会だろ?」


 


 


「うん」


 


 


「しかも決勝とか」


 


 


 


太陽がやけにテンション高い。


 


 


まあ、同じ“競技者側”だし、分かるのかもしれない。


 


 


 


画面の中で、選手たちが並ぶ。


 


 


緊張感のある空気。


 


 


 


「……速そうね、みんな」


 


 


太陽がぼそっと言う。


 


 


 


「そりゃ全国だし」


 


 


僕は適当に返す。


 


 


 


でも。


 


 


 


「澪が一番速いよ」


 


 


 


 


「え?」


 


 


太陽がこっちを見る。


 


 


 


「なんで分かんの?」


 


 


 


「見れば分かるでしょ」


 


 


 


澪の立ち方。


 


 


力の抜き方。


 


 


呼吸。


 


 


 


無駄がない。


 


 


 


あの状態なら、スタートも加速も、全部最適化されてる。


 


 


 


「まあ、見てれば分かるよ」


 


 


 


実況がカウントダウンに入る。


 


 


 


「On your marks…」


 


 


 


選手たちが構える。


 


 


 


「Set…」


 


 


 


空気が張り詰める。


 


 


 


――パンッ!


 


 


 


スタート音。


 


 


 


全員が一斉に飛び出す。


 


 


 


その中で。


 


 


 


「……あ」


 


 


太陽が声を漏らす。


 


 


 


澪だけ、明らかに加速が違う。


 


 


 


最初の一歩。


 


 


そこからの伸び。


 


 


 


他の選手がまだ“走り始めている”段階で。


 


 


澪はすでに“トップスピードに入っている”。


 


 


 


「速っ……!」


 


 


太陽が思わず声を上げる。


 


 


 


そのまま、差は開く一方。


 


 


 


中盤。


 


 


後半。


 


 


 


誰も追いつかない。


 


 


 


そのまま――


 


 


 


ゴール。


 


 


 


 


「――日本新記録!!」


 


 


 


実況の声が弾ける。


 


 


 


スタジアムがどよめく。


 


 


 


澪は、ゴールラインを越えて、数歩。


 


 


そのまま減速して、ゆっくりと息を吐いた。


 


 


 


「……マジかよ」


 


 


太陽が呆然と呟く。


 


 


 


「日本新って……」


 


 


 


画面には、タイムが表示されている。


 


 


明らかに、これまでの記録を更新していた。


 


 


 


「……すごいわね」


 


 


太陽が言う。


 


 


 


「すごいね」


 


 


僕も頷く。


 


 


 


「でも、まあ」


 


 


 


少しだけ間を置く。


 


 


 


「想定内」


 


 


 


「は?」


 


 


 


太陽が変な声を出す。


 


 


 


「いやだって」


 


 


僕は画面を指す。


 


 


 


「身体の使い方、完全に最適化されてるし」


 


 


「魔法少女として戦ってた影響、もろに出てる」


 


 


 


反応速度。


 


 


筋出力。


 


 


バランス。


 


 


 


全部が、競技用にチューニングされたみたいになってる。


 


 


 


「普通にやれば、こうなるでしょ」


 


 


 


「いや普通じゃねえだろ!!」


 


 


 


太陽が全力でツッコむ。


 


 


 


画面の中では、澪がインタビューを受けていた。


 


 


少し照れたように笑って、何か答えている。


 


 


 


「……あいつ、戻ってきたな」


 


 


太陽がぽつりと呟く。


 


 


 


「何が?」


 


 


 


「なんかこう……ちゃんと“競技者”って感じ」


 


 


 


 


僕は少しだけ考えて。


 


 


 


「前からそうでしょ」


 


 


 


そう答えた。


 


 


 


ただ。


 


 


 


前より、ずっと強くなってるだけ。


 


 


 


それだけの話だ。



――――――



その日、部室の机の上に封筒が置いてあった。


 


「……誰の?」


 


澪が不思議そうにそれを持ち上げる。


 


差出人の名前を見て、少しだけ表情が緩む。


 


 


「透花からだ」


 


 


僕が先に答える。


 


 


「え、ほんと?」


 


 


太陽も身を乗り出してくる。


 


 


 


封筒は丁寧な字で宛名が書かれていた。


 


 


やたらと綺麗な文字。


 


 


ああいうの、性格出るよね。


 


 


 


「開けていい?」


 


 


澪が一応聞く。


 


 


「いいんじゃない」


 


 


「いや理久宛なんだけど?」


 


 


「読めばいいでしょ」


 


 


 


澪が少しだけ呆れた顔をして、それでも封を開ける。


 


 


中から、数枚の便箋。


 


 


 


「……えっと」


 


 


軽く目を通してから、澪が読み上げ始める。


 


 


 


「“お元気でしょうか。こちらに戻ってから、少しずつ生活も落ち着いてまいりました”」


 


 


透花らしい書き出し。


 


 


やけに丁寧。


 


 


 


「“現在は、医療の勉強を本格的に始めております”」


 


 


「医療?」


 


 


太陽が首を傾げる。


 


 


 


「“正式な医師資格を取得するため、基礎から学び直しております”」


 


 


澪が続ける。


 


 


 


「へえ……」


 


 


太陽が感心したように言う。


 


 


 


「やっぱり、回復役だったしな」


 


 


「ええ」


 


 


澪も頷く。


 


 


 


「魔法がなくても、人を助けられる形を選んだのね」


 


 


 


手紙の続きを読む。


 


 


 


「“魔法に頼らない医療は、思っていた以上に難しく……”」


 


 


「まあ、そうだろうね」


 


 


僕が軽く言う。


 


 


 


「“ですが、その分やりがいも感じております”」


 


 


 


透花の声が、何となく頭の中で再生される。


 


 


 


「“いずれは、こちらでも多くの方を救えるよう努めてまいります”」


 


 


 


「……透花らしいわね」


 


 


澪が小さく笑う。


 


 


 


「真面目すぎるくらい真面目」


 


 


「いいじゃん、それ」


 


 


太陽が言う。


 


 


 


「なんかカッコいいし」


 


 


 


最後の方に目を通して、澪が少しだけ声を柔らかくする。


 


 


 


「“皆さまと過ごした時間は、今でも大切な思い出です”」


 


 


 


一瞬、空気が静かになる。


 


 


 


「“またお会いできる日を、楽しみにしております”」


 


 


 


読み終わる。


 


 


 


澪がそっと手紙を畳む。


 


 


 


「……元気そうね」


 


 


 


「だね」


 


 


 


太陽も頷く。


 


 


 


「ちゃんとやってんだな」


 


 


 


僕は特に何も言わず、手紙を受け取る。


 


 


 


文字をざっと眺める。


 


 


 


内容は、だいたい聞いた通り。


 


 


 


でも。


 


 


 


「……まあ、頑張ってるんじゃない」


 


 


 


それだけ言って、机に戻す。


 


 


 


「それだけ?」


 


 


澪が少し呆れたように言う。


 


 


 


「何か言うことないの?」


 


 


 


「別に」


 


 


 


僕は肩をすくめる。


 


 


 


「やることやってるなら、それでいいでしょ」


 


 


 


それ以上でも、それ以下でもない。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


手紙の最後の一文だけは、少しだけ印象に残っていた。


 


 


 


――またお会いできる日を。


 


 


 


「……そのうち行けばいいか」


 


 


 


誰に向けたわけでもなく、そう呟いた。



――――――



放課後。


 


部室の照明は落としてある。


 


窓の外は、もう夕方を越えて夜に近い。


 


 


でも、部屋の中は暗くない。


 


 


机の上に展開された“それ”が、淡く光っているからだ。


 


 


空間が、切り取られている。


 


 


正確には、切り取られているように“見える”。


 


 


薄く歪んだ透明な層の中に、別の風景が映っている。


 


 


山。


 


 


空。


 


 


見たことのない植物。


 


 


見たことのない空気の色。


 


 


 


「……重力、地球より軽いな」


 


 


僕は椅子に座ったまま、視線を固定する。


 


 


風の流れ。


 


光の反射。


 


影の落ち方。


 


 


全部を、同時に処理する。


 


 


 


――異世界。


 


 


ネメシスが侵略していた先の一つ。


 


 


アストラから断片的に聞いた情報をもとに、座標を再構築して、観測状態に持っていく。


 


 


理論的には面倒だけど、実際にやる分にはそこまででもない。


 


 


 


「……生態系は単純そうだな」


 


 


動いている生物を一つ捉える。


 


 


四足。


 


 


外殻あり。


 


 


捕食行動は確認できない。


 


 


 


「興味薄い」


 


 


 


指先を軽く動かす。


 


 


観測対象を切り替える。


 


 


 


空間が、滑るように変わる。


 


 


 


今度は都市。


 


 


石造りの建物。


 


 


人型の生物。


 


 


衣服の構造が違う。


 


 


 


「……文化レベル、中世程度」


 


 


 


会話らしき音を拾う。


 


 


言語構造を解析。


 


 


意味を組み立てる。


 


 


 


「……ああ、魔力依存型か」


 


 


 


空間に漂うエネルギーの流れ。


 


 


地球の魔力と似ているけど、性質が少し違う。


 


 


 


「このタイプ、多いな」


 


 


 


少しだけ見て、すぐに興味が薄れる。


 


 


 


また、切り替え。


 


 


 


次。


 


 


 


暗い。


 


 


ほぼ光がない。


 


 


地面が存在しているのかも曖昧。


 


 


 


「……ああ、これ無理だな」


 


 


 


即座に切る。


 


 


観測に適さない。


 


 


 


 


そんなことを繰り返す。


 


 


 


見て。


 


 


判断して。


 


 


切り替える。


 


 


 


ただ、それだけ。


 


 


 


背後で、小さな音がする。


 


 


 


振り返らなくても分かる。


 


 


 


アルゴだ。


 


 


 


床に置かれたトレイ。


 


 


その上に、湯気の立つカップ。


 


 


 


「……ありがと」


 


 


 


アルゴは何も言わない。


 


 


でも、理解はしている。


 


 


 


これは、最近の改良。


 


 


 


日常生活補助機能。


 


 


観測中でも、最低限の動作を代行する。


 


 


 


「便利だな」


 


 


 


軽く呟いて、カップを手に取る。


 


 


 


一口。


 


 


 


温度、適正。


 


 


味も問題ない。


 


 


 


 


視線は、また前へ戻る。


 


 


 


別の世界。


 


 


別の空。


 


 


別の“何か”。


 


 


 


未知は、いくらでもある。


 


 


 


「……次」


 


 


 


指を動かす。


 


 


空間がまた、書き換わる。


 


 


 


終わりはない。


 


 


 


でも、それでいい。


 


 


 


 


これが。


 


 


 


僕の、日常だから。

ここまで『魔法少女しか見えない怪物を、天才中学生が科学で観測してしまった』を読んでいただき、本当にありがとうございました。


 


まずは、最後までお付き合いいただいたことに、心から感謝をお伝えします。


 


本作は、「見えない怪物を、科学で観測する」というシンプルな着想から始まりました。

そこに「魔法少女」という王道要素と、「理解することそのものを楽しむ主人公」という少し歪んだ軸を掛け合わせて、物語として組み立てていきました。


 


理久という主人公は、最後まで一貫して「興味本位で動く存在」でした。

世界を救ったことすら、彼にとっては“結果”でしかない。


 


その温度差――

世界が彼を英雄と呼ぶ一方で、本人は「次は何を調べようか」と考えている。


 


このズレこそが、本作の核だったと思います。


 


また、澪、太陽、透花といったキャラクターたちは、その理久の周りで“普通”を保ち続ける存在として描きました。

戦いを経て成長しながらも、最終的にはそれぞれの場所へ戻っていく。


 


世界は大きく変わったけれど、彼らの日常はちゃんと続いていく。


 


そのバランスを意識して、エピローグと最終話は構成しています。


 


 


今回の物語は、「終わり」でありながら、「終わりではない形」で締めました。


 


ヴォイドとの戦いは終わった。

でも、理久にとっての“未知”はまだ尽きていない。


 


むしろ、ここからが本番です。


 


異世界という広がり。

観測という行為の先にあるもの。


 


彼がどこまで行くのかは、あえて描き切らずに残しました。


 


読者の中で、それぞれの“その後”を想像してもらえたら嬉しいです。


 


 


最後にもう一度。


 


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


 


またどこかの物語で、お会いできることがあれば嬉しく思います。


 


それでは。


 


――未知があるなら、調べるだけだよ。

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