第61話 災厄の化身ルク=エリオス
敵が、“溶けていく”。
黒い影――ヴォイドが、光と雷と重力に押し潰され、次々と霧散していく。
ネメシス兵も同じだ。
突っ込んできた瞬間には、もう遅い。
「中央、さらに押せ!」
「了解!」
ヴァルキリアの声と同時に、重力が増す。
地面が沈む。
そのまま、前線ごと押し返す。
「左翼、制圧完了。次のポイントへ移行します」
雷華の声が淡々と響く。
速い。速すぎる。
もはや“移動”じゃない。“瞬間移動”に近い。
「封鎖、維持しておりますわ。逃げ場はありません」
セレスティアの空間制御が、完全に戦場を掌握している。
逃げることも、回り込むこともできない。
つまり――
「詰みだね」
僕は軽く呟いた。
「……ほんとに、一方的ね」
澪が呆れたように言う。
その顔には、さっきまでの緊張はほとんど残っていない。
代わりにあるのは、驚きと――少しの安堵。
「これが……世界のトップクラス……」
「そこに“統一指揮”が乗ってるからね」
僕は肩をすくめる。
「そりゃ強いよ」
事実。
戦場は完全にコントロールされていた。
どこで何が起きるか、全部見えている。
誰がどこを担当するか、全部決まっている。
「右、三秒後に増援来るよ」
「把握、迎撃配置済みです!」
「中央、少し引いて。詰めすぎ」
「了解、調整します!」
指示を出すたびに、戦場が“形を変える”。
それも理想的な形に。
「……これ、もう勝ちじゃね?」
太陽が呟いた。
額に汗を浮かべながらも、口元は笑っている。
「まだ早い」
即答する。
「こういう時に崩れるのが一番まずい」
「えー……」
不満そうな声。
でも、その直後。
「第二波、ほぼ壊滅!」
誰かの報告が入る。
「第三波も削り切ります!」
「このまま押し込める!」
士気が上がっている。
いい傾向だ。
「……でも」
澪が小さく呟く。
「ちょっと、出来すぎじゃない?」
その言葉に、僕は少しだけ目を細めた。
「うん」
同意する。
「出来すぎ」
順調すぎる。
想定以上に。
「ネメシス側の反応が遅い……?」
澪が首をかしげる。
「いや、遅いんじゃない」
僕は視線を遠くに向ける。
虚界の奥。
歪んだ空の向こう。
「“見てる”」
「え?」
「様子見」
そう。
これは防衛じゃない。
「観察されてる」
その瞬間だった。
空気が、変わった。
「……っ?」
誰かが息を呑む。
さっきまで流れていた魔力の“流れ”が、ぴたりと止まる。
風もないのに、空が静止する。
「なに……これ……」
澪の声が震える。
「理久……?」
「……来る」
短く答える。
同時に、フェーズレーダーの表示が“乱れた”。
検知不能。
解析不能。
それなのに――
「いる」
確信だけがある。
次の瞬間。
空間が、裂けた。
――音もなく。
まるで、そこに“最初から穴があった”みたいに。
「――侵入者か」
低い声。
響いた瞬間、背筋が凍る。
魔力の“質”が違う。
今までの敵とは、明らかに。
「なっ……」
太陽が言葉を失う。
「これ……」
澪も同じだ。
言葉が続かない。
裂け目の中から、“それ”が姿を現す。
人の形。
でも、人じゃない。
黒と金の混ざった装束。
その全身から、溢れ出る魔力。
重い。
圧倒的に重い。
「……あれが……」
誰かが呟く。
名前を口にするのを、ためらうように。
でも。
その存在は、隠す気がない。
むしろ。
「面白い」
ゆっくりと、口元が歪む。
「ここまで来るとはな、人間」
その声が、戦場全体に響く。
一人の声なのに。
全員に届く。
逃げ場がないみたいに。
「……ルク=エリオス」
僕は、はっきりとその名を口にした。
四天王。
広域殲滅の化身。
「……あれが……四天王……」
澪が呟く。
その瞬間。
ルクが、軽く手を上げた。
ただ、それだけ。
それだけで――
「っ!?」
地面が、沈んだ。
いや、違う。
空間そのものが、押し潰された。
「全体、防御!」
反射的に叫ぶ。
次の瞬間。
――爆ぜた。
光でも、雷でもない。
純粋な“魔力”の奔流が、戦場を飲み込む。
「うそ……」
誰かが呟く。
さっきまで優勢だった戦場が。
一瞬で、塗り替えられる。
「……いいね」
僕は、息を吐いて。
それでも、笑った。
「やっと“本命”だ」
その一言で。
戦場の温度が、変わった。
“それ”は、戦場の理を塗り替えた。
ただ手を上げただけ。
それだけで、空間が潰れた。
「――ぐっ!」
全身にかかる圧力。
呼吸が一瞬止まる。
「な、に……これ……!」
澪の声がかすれる。
さっきまで“環境が重い”なんて話じゃない。
今は違う。
これは――
「攻撃だ」
僕は即座に結論づける。
「全体、防御維持! 出力落とすな!」
思考共有で叩き込む。
その瞬間。
「……ッ!」
セレスティアの展開した空間障壁が、軋んだ。
見えない壁に、ひびが入る。
「うそ……もう……!?」
「耐えろ!」
短く言う。
余計な言葉はいらない。
今は“維持”がすべてだ。
「ヴァルキリア、中央の圧力を相殺!」
「……やる」
低く応じる。
次の瞬間、重力が“ぶつかった”。
押し潰す力と、それを押し返す力。
空間がきしむ。
「雷華、遊撃。直撃は避けろ、削りに徹しろ」
「了解」
返事と同時に、雷が走る。
だが――
「……ちっ」
短い舌打ち。
雷が、逸れる。
正確には、“当たっているのに抜けている”。
「干渉、されてる……?」
澪が息を呑む。
「いや」
僕は否定する。
「“効いてない”だけ」
それだけ。
シンプルに、格が違う。
ルク=エリオスは、動かない。
ただそこに立っているだけ。
それだけで、戦場全体を支配している。
「……終わりか?」
低く、退屈そうに呟く。
その声だけで、背筋が冷える。
「まだだよ」
僕は小さく笑う。
「これから」
その瞬間。
「全体、再編成。第一防衛陣形から第二へ移行」
指示を流す。
即座に、隊列が変わる。
前衛が一歩引き、層を厚くする。
後衛は射線を分散。
「受けるな。“流せ”」
フェーズシールドの設定を共有。
位相可変。
“当たらない”防御。
「了解!」
応答が重なる。
次の瞬間。
ルクが、わずかに視線を動かした。
それだけで。
「――消えろ」
空が、落ちた。
上空から、巨大な魔力の塊が降ってくる。
隕石みたいな質量。
いや、質量以上だ。
「来る!」
「分かってる!」
セレスティアが叫ぶ。
空間障壁を多層展開。
その数、三重、五重、七重。
通常なら、どんな攻撃でも止まる。
だが――
「――ッ!!」
一瞬で、三層が消し飛ぶ。
「まだ……!」
さらに展開。
だが、追いつかない。
「ヴァルキリア!」
「……押し返す」
重力が、上へと向かう。
落ちてくる魔力と、ぶつかる。
空中で、止まる。
ほんの一瞬。
「今!」
雷華が突っ込む。
雷が、直線を描く。
そのまま、ルクへ。
だが。
「遅い」
ルクの指が、軽く動いた。
それだけで。
雷が、弾かれた。
「――ッ!?」
軌道が逸れる。
空間そのものが、歪められた。
「空間制御……!?」
澪が叫ぶ。
「違う」
僕は即答する。
「“力”でねじ曲げてるだけ」
理屈ですらない。
ただ強いから、そうなる。
それだけ。
「……面白いな」
ルクが、初めて一歩踏み出した。
その瞬間。
戦場の圧力が、跳ね上がる。
「――ぐっ!」
複数の魔法少女が膝をつく。
「出力……上げろ……!」
誰かが叫ぶ。
でも、足りない。
明らかに。
「理久……これ……!」
澪が振り向く。
その目に浮かんでいるのは、焦り。
「……分かってる」
僕は短く答える。
視線は、ずっとルクに固定したまま。
「解析、開始してる」
すでにデータは集まっている。
魔力の流れ。
出力の変化。
空間への影響。
でも――
「足りない」
まだ足りない。
「もっと見せろ」
小さく呟く。
それが聞こえたわけでもないのに。
ルクが、こちらを見た。
「……貴様か」
初めて。
明確に、僕を認識する視線。
「面白い」
その口元が、歪む。
「ならば――」
腕を上げる。
今度は、さっきとは違う。
もっと、収束した力。
「試してやる」
次の瞬間。
一点に集束した魔力が、放たれた。
一直線。
逃げ場なし。
「――っ!」
「理久!!」
澪の叫び。
でも。
「問題ない」
僕は動かない。
代わりに。
「そこ、二歩左」
指示を出す。
その瞬間。
「了解!」
ヴァルキリアが前に出る。
重力で軌道をずらす。
「セレスティア、右側面カバー」
「任せなさい!」
空間を折り曲げる。
「雷華、抜けた分を削れ」
「……了解」
三人の動きが、完全に噛み合う。
魔力の一撃が、わずかに逸れる。
直撃コースから外れる。
「――ッ!」
それでも。
掠っただけで。
地面が、消えた。
「なっ……」
太陽が絶句する。
爆発でもない。
消滅。
その部分だけ、世界から削り取られたみたいに。
「……はは」
思わず、笑いが漏れる。
「いいね」
最悪だ。
最高に。
「ちゃんと“ボス”してる」
その一言に。
澪が信じられないものを見る目を向けてきた。
「こんな状況で何言ってるの!?」
「冷静な評価」
即答する。
「勝つために必要だから」
そのまま視線を戻す。
ルク=エリオス。
あれは、ただの強敵じゃない。
構造そのものが違う。
でも。
「だからこそ、面白い」
解析対象としては、これ以上ない。
「全体、耐えろ」
静かに言う。
「まだ攻めるな。観測優先」
その指示に、一瞬の沈黙。
でも。
「……了解」
「持ちこたえます」
「やるしかないか……!」
全員が、応じた。
劣勢。
明確な。
それでも――
戦線は、まだ崩れていない。
「いいね」
僕は小さく呟く。
「まだ、戦える」
そして。
「……全部、暴いてやるよ」
視線の先。
災厄の化身を、まっすぐに見据えた。
「――第二層、維持しろ!」
叫びが飛ぶ。
だが、その声は“押し潰される”。
目に見えない圧が、戦場全体にのしかかっている。
さっきまでの戦いとは、まるで別物だ。
「ぐっ……!」
澪が歯を食いしばる。
光弾を放つ手が、わずかに震えている。
「ミオ、無理に撃つな。姿勢優先」
「……分かってる!」
短く返しながらも、澪は射撃のリズムを落とす。
いい判断だ。
今は火力じゃない。
“崩れないこと”が最優先。
「セレスティア、封鎖は最小限でいい。広げるな、維持しろ」
「……っ、了解!」
空間の輪が縮む。
広く支配するんじゃない。壊されない範囲で“残す”。
それだけでいい。
「ヴァルキリア、圧は受けるな。流せ」
「……了解」
重力の向きが変わる。
真正面から押し返すのをやめ、斜めに逃がす。
「雷華、遊撃継続。直撃狙うな、“動き”を削れ」
「……了解」
雷が走る。
今度は一直線じゃない。
細かく、何度も、削るように。
だが――
「……ちっ」
当たっている。
それでも。
効いている手応えが、薄い。
「やっぱり硬いな……」
僕は小さく呟く。
いや、“硬い”じゃない。
「減衰してる……?」
魔力の流れを追う。
ルクの周囲。
常に、何かが循環している。
流入と流出。
「……なるほど」
少し、見えた。
「どうしたの、理久!」
澪が叫ぶ。
「何か分かったの!?」
「少しだけ」
短く答える。
でも、それを言語化する暇はない。
「全体、注意。次、来る」
その直後。
ルクが、再び手を動かした。
今度は、ゆっくりと。
空を“掴む”みたいに。
「……?」
違和感。
さっきまでの攻撃と違う。
収束じゃない。
拡散。
「――散れ」
その一言。
次の瞬間。
空が、砕けた。
無数の“光”が降る。
いや、光じゃない。
全部、魔力の塊。
それが、雨みたいに降ってくる。
「うそ……!」
澪の声が震える。
「範囲が……!」
広すぎる。
逃げ場がない。
「全体、分散!」
即座に指示。
固まるな。
一箇所にいれば、まとめて消える。
「各自、最小単位で回避行動! 防御は“抜ける”前提で!」
「了解!」
「散開!」
隊列が、ほどける。
それでも。
降ってくる。
止まらない。
「――ッ!!」
一つが地面に着弾する。
その瞬間。
地面が、消えた。
爆発じゃない。
削り取られる。
まるで“存在しなかった”みたいに。
「やばっ……!」
太陽が飛び退く。
ほんの一瞬前まで立っていた場所が、ぽっかりと空洞になっている。
「これ、かすったらアウトじゃねぇか!」
「その通り」
僕は即答する。
「だから当たるな」
「無茶言うな!?」
叫びながらも、太陽は動いている。
悪くない。
ちゃんと生き延びる動きになってる。
「ソラ、補助!」
「了解。回避支援開始」
人工ピクシスが、太陽の動きを補正する。
軌道予測。
着弾予測。
わずかなズレを修正。
「っ、助かる!」
「当然です」
機械的な声。
でも、その精度は高い。
「右側、崩れてる!」
誰かの叫び。
視線を向ける。
ネメシス兵じゃない。
味方だ。
数人、回避が遅れている。
「……間に合うか」
一瞬の判断。
「セレスティア、そこ二点、空間歪めろ!」
「――ッ、やります!」
空間が、わずかに曲がる。
降ってくる魔力弾の軌道が、ずれる。
ほんの少し。
でも、それで十分。
「逃げろ!」
「は、はい!」
間一髪。
着弾が逸れる。
「ふぅ……」
澪が息を吐く。
でも、その顔は青い。
「こんなの……いつまで……!」
その言葉。
正しい疑問だ。
「……時間稼ぎだよ」
僕は静かに答える。
「え?」
「こっちは“解析中”」
ルクを見る。
相変わらず、動かない。
ただ、攻撃をばら撒いているだけ。
「だから――」
もう一度、データを見る。
魔力の流れ。
循環。
減衰。
「まだ足りない」
もっと。
もっと情報がいる。
「全体、耐えろ」
再度、指示を出す。
「崩れるな。それだけでいい」
それがどれだけ難しいか。
全員、分かっている。
それでも。
「……了解」
澪が答える。
「やるしかないでしょ」
「当然ですわ」
セレスティアも応じる。
「この程度で崩れるほど、鍛えていません」
「……続行」
雷華は短く。
「……問題ない」
ヴァルキリアも。
いいね。
士気はまだ死んでない。
でも――
「……飽きたな」
ルクが、呟いた。
その一言で。
空気が、変わる。
今までの攻撃は、あくまで“広域”。
ばら撒き。
でも、今のは違う。
「次、来るよ」
僕は低く言う。
「さっきより、重いの」
その瞬間。
ルクの周囲の魔力が、“集まった”。
さっきとは比べ物にならない密度。
空間が、軋む。
「……っ!」
全員が、息を呑む。
「……いい」
ルクが、こちらを見る。
明確に。
戦場全体じゃない。
一点。
「貴様らは、潰す価値がある」
その言葉と同時に。
魔力が、収束する。
「――来る!」
僕が叫んだ瞬間。
それは、放たれた。
それは、“線”だった。
空間を引き裂く、一本の光。
いや、光ですらない。
純粋な魔力が、極限まで圧縮された“死”。
「――っ!!」
思考が一瞬で加速する。
回避は不可能。
直線、超高速、範囲は狭いが――貫通力が桁違い。
「ヴァルキリア、真正面は捨てろ! 角度で逃がせ!」
「……了解!」
「セレスティア、二点折り! 軌道、曲げろ!」
「やってますわ!」
「雷華、側面から“削れ”! 減衰狙い!」
「……了解」
三つの動きが、同時に走る。
だが――
「――遅い」
ルクの声。
次の瞬間。
線が、通った。
「――――」
音が、消える。
空間そのものが、一瞬“無”になる。
そして。
「っ、あ……」
澪の息が漏れる。
視線の先。
戦場の一部が、丸ごと消えていた。
地面も、空気も、敵も、味方も。
ただ、“穴”だけが残る。
「……は?」
太陽が、理解できないという顔で呟く。
「何だよ……これ……」
「……直撃じゃない」
僕は静かに言う。
「かすりだ」
それで、この威力。
もし直撃していたら。
「……」
誰も、言葉を発さない。
その沈黙を、ルクが楽しむように見下ろす。
「どうした」
低い声。
「終わりか?」
その問い。
挑発ですらない。
ただの事実確認。
それくらいの差がある。
「……まだだよ」
僕は答える。
短く。
はっきりと。
「終わってない」
その瞬間。
澪が、ぐっと拳を握る。
「……当然でしょ」
声は震えている。
でも、目は折れていない。
「こんなところで終わるわけない!」
光弾が放たれる。
連続で、何発も。
正面からじゃない。
斜めから、側面から、死角を突くように。
「……いい動きだ」
僕は小さく呟く。
直撃は狙ってない。
“反応させる”ための攻撃。
実際。
ルクの指が、わずかに動く。
その瞬間。
魔力の流れが、変わった。
「――そこか」
見えた。
ほんの一瞬。
でも、確かに。
「理久!?」
澪が振り向く。
「何か分かったの!?」
「まだ断定はできないけど――」
視線はルクから外さない。
魔力の循環。
外からの供給と、内側の制御。
「“受けてない”んじゃない」
今までの違和感。
攻撃が効かない理由。
「“流してる”」
だから、削れない。
だから、貫けない。
「……面白い」
ルクが、わずかに笑う。
まるで、こちらの思考を読んだみたいに。
「気づいたか」
その一言で、確信に変わる。
「やっぱりね」
僕は笑う。
「なら、やりようはある」
完全じゃない。
でも、“入口”は見えた。
「全体、聞け」
思考共有を強める。
全員に、直接叩き込む。
「正面から削るな。無駄」
「え……?」
戸惑いの声。
当然だ。
今までずっと、削ろうとしていた相手だ。
「流されるなら、“流しきれない形”にする」
言葉を選ぶ時間はない。
直感で、最短で伝える。
「一点じゃなく、複数同時。タイミングをずらせ」
「それって……!」
澪が息を呑む。
「そう」
僕は頷く。
「“処理落ち”させる」
完全に流すには、処理が必要だ。
なら。
「処理しきれない量を、叩き込む」
その瞬間。
戦場の空気が、変わる。
劣勢のまま。
それでも。
「……やるしかないでしょ」
澪が前を向く。
「了解ですわ」
セレスティアが応じる。
「……やる」
雷華。
「……潰す」
ヴァルキリア。
全員の意識が、一つに揃う。
「いいね」
僕は小さく笑う。
「やっと“戦い”になってきた」
だが。
その動きを見て。
ルク=エリオスは。
「……遅い」
と、呟いた。
その瞬間。
魔力が、さらに膨れ上がる。
さっきまでとは、比べ物にならない密度。
「――っ!?」
全員が息を呑む。
「理久……これ……!」
澪の声が、明確に焦る。
「……ああ」
僕も、認める。
これは。
さっきまでの延長じゃない。
「本気だ」
ルクが、腕を広げる。
空間が、悲鳴を上げる。
「では――」
その口元が、歪む。
「見せてやろう」
魔力が、収束する。
戦場そのものを巻き込む規模で。
「本当の“殲滅”を」
その一言で。
絶望が、現実になった。
「……っ」
それでも。
僕は、目を逸らさない。
「いいよ」
小さく呟く。
「全部、見せろ」
ここからが、本番だ。
解析も。
戦いも。
そして――
逆転も。
お読みいただきありがとうございました!
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と思っていただけましたら、
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