ヴィンセル視点
アレンシアとローレンスが屋敷へと潜入している頃、ヴィンセルもまた、動いていた。
「叔父上、今よろしいですか?」
特殊部隊室の奥にある団長室へとやって来た。
「おい。
仕事の時は団長と呼べ。
それと、昨日はご苦労だったな。
で、どうした?」
書類を捲る手を止めて、眉間に皺を寄せて問い掛けてくる叔父に対し、オレは深呼吸をしてから話し始めたのだ。
「団長は知っていたのですよね?
アレンシアの事を」
「・・・・・。
お前、何故それを?」
「やっぱり。
実は昨日の任務で、アレンが斬られましてーー「何!?どうして昨日報告しない!?怪我の具合はどうなんだ!!?」」
話し終わる前に、鬼気迫る勢いで問い詰めてくる叔父に唖然とした。
だって、特殊部隊とは、命の危険がある事を叔父が一番理解しているからだ。
・・・これはいったい、なんだ?
アレンに特別な感情が無ければ、こんな風になる筈がない。
これが一隊員だったら、冷静に対応しているのだろう。
「団長、話しは最後まで聞いてください。
アレンは斬られていません。
服に掠っただけです」
すると、明らかに安堵した表情を見せたのだ。
「・・・叔父上?」
「なんだ?そして団長だ」
「いいえ、今は甥として聞きたいのです。
アレンに特別な感情をお持ちですか?」
すると、オレと同じオレンジ色の瞳がかち合った。
「アイツは教え子だ。それ以上の感情はない」
「そうですか。
実はその任務で、アレンの肌を見てしまいましてね。それで、女と知ったのですよ。
だから、責任を取ろうと思うのです。
叔父上、宜しいですか?」
すると、鋭い瞳でギロリと睨まれ『お前、アイツに何かしたのか?』と抑揚のない声で聞いてきた。
「何もしていませんよ。そんなに怒らないでください。
でも、結婚前の女性の柔肌を見てしまったのですよ?責任を取るのが、男として当たり前でしょう?」
そう言うと、叔父は頬杖をつき『アイツが責任取れと言ったのか?それに、義務から求婚したって、頷くような女じゃないぞ。まぁ、程々に頑張れよ。それと、この事は口外するな』と言い、書類に目を戻したのであった。
オレは『分かっていますよ』と返し、団長室を出てから考えてみる。
本当に叔父上は、アレンに教え子以上の感情はないのだろうか。
・・・・・・。
叔父上の方が、一枚も二枚も上手だからな。
本気で隠されたら分かる訳がない。
もしかしたら、さっきの言動だって全て演技かもしれないしな。
それと、さっきは勢いで言ってしまったが、まさか、自分の口から責任を取るなんて言葉が出るとは思わなかった。
それに、アレンの事をずっと男だと思っていたのだ。
いきなり女だと分かった今、どう接して良いのか分からない。
そして、先日の光景を思い出す。
男には無い、谷間を間近で見てしまった。
・・・・・・。
バツの悪さを感じ、違う事を考えなければと思うのだが、なかなか上手くいかない。
それに、安心して微笑んでくれた時は、可愛かったな・・・。
・・・・・・!!?
え!?
可愛かったって・・・。
ちょっと、待て。
オレは、アレンの事を可愛いと思ってるのか!?
・・・嘘だろ?
次会う時、どうすればいいんだ・・・。
ヴィンセルは、初めて家族以外の女性と接した為、どうしていいのか分からず、恋なのか、そうじゃないのかの判別さえつかないのであった。
そして、その後は部屋へと帰り、悶々と考えながら、途方に暮れたのである。




