ローレンス視点
「兄上、参りました」
「ああ、入って来い」
扉の向こうから声が聞こえたので、レノンに開けてもらう。
「こんな時間に悪い。
だが、今日特殊部隊が持ち帰った物を整理したくてな。
悪いが付き合ってくれ」
そう言う兄上は、俺に椅子を勧めてから静かに話し始めたのであった。
「まずは、これだ。
ビンゼフ子爵の別邸にあった魔石とダントン伯爵の屋敷で見つけた魔石。
調べさせたところ、同じ物と判明した。
それでな、今日、その屋敷で魔石の密造現場を見たそうなんだ」
それを聞いた時、アレンが担当した場所だとすぐに分かった。
「それで、何があったのですか?」
兄上は両手を組み、促す俺に相槌を打ち、話し続けた。
「子供達が、空の魔石に魔力を込めていたそうなんだ。
これを聞いた時に、アーデンヴァルト王国が過ったんだが、多分、間違えないだろう」
【アーデンヴァルト王国】
通称、魔法の国とも呼ばれている。
この国の者達は、大なり小なり、皆魔法が使える。
そして、絶対的な魔力を誇る女王が君臨し、何者にも侵略を許さない、平和で豊かな国であった。
悪意ある者が、国境を越えようとすると、烈火の如く燃え上がり、死に伏すという。
アーデンヴァルト王国は、女王なくしては成り立たない国と言われていたが、15年程前に反乱があり、女王は討たれてしまった。
そして、そこからが地獄の始まりだったのだ。
大臣達が私腹を肥やし、民は嘆き苦しむ、貧富の差が激しい国へと成り下がったのである。
・・・だが、それだけではない。
女王が居なくなった事による弊害があったのだ。
鉄壁の守りを誇っていた国が、女王がいなくなった途端に丸裸となった。
それを機に、略奪や侵略をしようと考えた国は、侵攻を始めたのである。
だが、魔法が使える民を、そう容易くねじ伏せる事は出来なかったのだ。
そして現在は小康状態となっている。
話は戻るが、アーデンヴァルトの民は、魔力がある為、高い価値で取引される。
だから最近は、能力が未発達な子供の誘拐が多発しているそうだ。
【人身売買】
うちの国では禁止されている行為である。
「ローレンス、この帳簿を見てくれ」
兄上が差し出して来た帳簿の画像を見ると(買取金額三人)と記載があった。
「これは、人身売買ですね」
「ああ。
だから金が無く、干魃と言う理由で減税を願い出たのであろう。
そして今は、人身売買で得たアーデンヴァルトの子供に、紛い物の魔石を作らせている事は間違えない」
「そうですね。正式に屋敷を取り調べるんですか?」
「そうしたいのは山々なんだが、この事は、氷山の一角に過ぎないような気がしてならない。
叩くなら、黒幕に逃げられる前に一気に叩き落としたいと考えている。
何か、いい方法はないか?」
・・・確かに。
ダントン伯爵が、なんの伝手もなく、成し遂げられる事ではない。
「では、人身売買の元を聞いてみるのはどうですか?」
「・・・。
それをダントン伯爵に聞けと?
・・・聞ける訳がないだろう」
「いいえ、子供に聞くんですよ」
「・・・なるほど。
だが、接触すれば保護しなくてはならない。
ダントン伯爵に話されたら厄介だからな。
でも3人保護したら、流石にバレないか?」
「ええ。
だから、屋敷の者が連れ去ったように見せかければいいんです。
屋敷の内部情報はアレンが知っているので、聞いてみます」
すると兄上は思い出したのか『確か、お前の専属だったな。分かり次第、報告を頼む』と言い、その場はお開きとなった。
俺は帰りながら考える。
アレンの元気がなかったのは、きっと、ひどい現場を見て心を痛めているのだろう。
であれば、その元を取り除いてやりたい。
子供を保護すれば、アレンの心は晴れるし、情報も手に入る。
一石二鳥だな。
そう考えを纏めて、明日アレンに聞てみようと決めたのであった。




