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私とヴィンセルは王宮へと戻り、証拠の品を提出した。
私は、紛い物の魔石が作られている現場を見たので、その事も一緒に伝えたのだ。
それから私達は別れ、隊服の申請をしてからローレンス様の部屋へと帰ったのである。
ノックをしようとした、その時。
扉が開き、ローレンス様が現れた。
すると、いきなり抱き締められたのだ。
突然の事に、身動き一つ出来なかった。
されるがままになっていると、ローレンス様の後ろから凄い音がした。
それで我に返った私は、離すように伝えたのである。
と思ったら『おかえり』と愛妻に対して言うような優しい声と顔で言われたのだ。
まさかの先制パンチを食らってしまった。
そうして呆けていると、また凄い音がしたのと共に、レノンさんの声が聞こえた。
・・・え?
レノンさん、居たの?
・・・え!!?
この状況は気まず過ぎる!
私はローレンス様に再度離すように伝えた。
すると『嫌ではないのだろう?』と言う。
・・・確かに言った。
けど、時と場所を考えないのはどうかと思う。
だから、私は苦言を呈したのだ。
なのに・・・。
「では今は二人きりだし、存分に抱き締めても良いのだろう?」
と言い放ったのだ。
そして、気付いた。
私の言葉は、ローレンス様の言う通りだった事に。
だから、慌てて訂正したのである。
そう伝えると、やっと離れてくれたのだった。
けど、私の耳の怪我に気付いたようで問い詰められた。
それに対し、一つを話せば、全てを話さなくてはならないような気がしたので、簡潔に伝える事にした。
すると、思っても見ないことを言われたのだ。
私は、ローレンス様が人の気持ちに疎い事を知っている。
だからこそ、私の小さな変化に気付いた事が、どれほどにすごい事なのかが分かった。
本当に、私の事をよく見てくれているのだろう。
私は居た堪れなくなり、なんでもない事のように答えたのだった。
それから部屋へと帰り、深呼吸をする。
今回の任務では色々な事があった。
今度、師匠に女だとバレた事を伝えなくてはならない。
ヴィンセルは『安心して』とは言っていたが、師匠に黙っている事は出来ないだろう。
「・・・はぁ」
女だとバレないかって相談したばかりなのに、あっさりとバレてしまったのだ。
きっと、メチャメチャに怒られる。
・・・クビになったら、どうしよう・・・。
・・・取り敢えず、今クヨクヨしても仕方ない。
クビと言われたら、師匠に泣き付いてでも、なんとかしてもらおう。
そう思う事にして、気持ちを無理やり切り替えたのであった。




