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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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3


「今日はアレンのせいで、とんだ1日となったな」


ビルは、エールを片手に、つまみのソーセージを食べながら、ぼやいた。


もちろん入隊式は無事に終わり、今日から正式に王国所属の騎士となったのだ。

その後、お疲れ会として3人で飲み屋へ来ている。


「悪かったって。ここは払うからさ!」


「お!まじか?じゃあ、たらふく飲んで食わないとな!」


「ああ、いいよ!その代わりと言っては何だけど、遅刻しそうな時は、また声を掛けてくれない?」


「・・・・・。

ただでは起きないその精神が、いっそ清々しくて何だか尊敬して来たわ」


(あき)れ気味に言ってはいるが、面倒見の良いビルは、きっと声を掛けてくれるのだろう。


そう思い『()め言葉として受け取っておくよ』と笑みを浮かべて答えたのだ。


そして、そんなやり取りを、見ていたはずのゲイルが、エールをチビチビと飲みながら言ったのである。


「何の話、してたの?」


・・・え?

もう酔ってるのか?


思わずビルと目を合わすと、同じ事を思ったのだろう、ビルがゲイルに聞いた。


「今日の話だよ。まだ一杯目だろう?もう酔ったのか?」


そうなのだ。

まだ飲み始めて30分も経っていないのだが、ゲイルの薄茶色の瞳は(すで)にトロンとしている。

そして、いきなり何かを思い出したかのように話し始めたのだ。


「あ!そう言えば見たんだよ。訓練場で。

遠目だったけど、間違いない。

あれは、ローレンス王子だったよ!」


いったい何の話だろう・・・。


王子が何の用もないのに、訓練場へ()()()()来るはずもない。

それに、私からしたら、雲の上の存在だ。

会った事さえないのだから。


・・・これは酔っぱらっているな。


「ゲイル?無理して飲む事はないよ。ほら、料理もいっぱいあるし好きなの頼んで」

そう言い、メニュー表を渡したのだった。


ゲイルはご機嫌なのか、鼻歌交じりに、あれこれ見ながら何を頼むのかを考えている。


まさか、こんなに弱いとは思わなかったけど、楽しそうだから、まぁいいか。


「ゲイルは王子と会った事あるのか?」


ビルは気になったようで、酔っ払いに聞いている。


「ん?・・・まあ、にゃん(なん)回かね。貴族のあちゅ(あつ)まりで会ったかにゃ()?」


呂律(ろれつ)が回っていない。

・・・完全にアルコールに呑まれてしまった。


机に水が入った瓶があるので、コップに注ぎ渡してやると『ありがとう』と言い()()()()飲んでいる。

水が無くなったのか、無言でコップを差し出して来たから、注いでやる事3回。


アルコールを中和出来たようで、コトリと机にコップを置いて話し始めたのだった。


「伯爵家以上が参加する新年会で、何回か挨拶をさせてもらってるんだよ」


王国騎士団は貴族出身にしかなれない。

嫡男は爵位を継ぐが、次男以降は自分で生計を立てなくてはならないので、騎士とは報酬が良い花形(はながた)の職業なのだ。


私達3人も貴族出身だが、ゲイルは伯爵家、ビルと私は子爵家なので高位貴族が招かれる会など、全くもって想像もつかないのである。


「今日、ローレンス王子を見たって、本当か?」


ビルは余程興味を持ったのだろう。4杯目のエールを頼みながら聞いている。


「うん。確かに見たんだ。

けど、すぐに何処かへ行かれてしまったよ」


ゲイルは頼むものが決まったようで、肉メインの料理を注文していた。


その後、二人は王子の話をしていたが、私は全く興味がないので、聞きながら飲みに(てっ)する事にしたのだ。


そして、明日は休みだからとの事で、かなりの時間を過ごしてしまったのである。

・・・当然、お代も半端(はんぱ)ない。


騎士が高給取りと言っても、(もら)えるのは来月だ。


・・・今月は節約しなきゃな、自炊で(しの)ごう。


二人を見ると、ビルは少し酔っているのか、ただでさえ、大きい声が、更に(うるさ)くなっている。


ゲイルは完全に酔いが覚めた様で、いつもの調子を取り戻していた。


まぁ、今日は楽しかったし、同僚との円滑な人間関係を築く為の必要経費と思う事にしよう。

そう前向きに思い、お代を支払ったのであった。


その後、みんなで寮へと戻り各部屋へと帰る。


部屋にはベッドとテーブルに椅子、クローゼットがある。

風呂、トイレ、キッチンは1階の共同スペースにあるので各自利用する事になっているのだ。


もう日付が替わってるし、お風呂入るの面倒くさいなぁ。


・・・でも、このままじゃ眠れないし、さくっと入るか。


眠たい身体に鞭を打ちながら、用意をして、1階の風呂へと向かう。

扉には()()(ふだ)が掛かっていたので、それをひっくり返し使()()()へと替え、鍵を閉めた。

そのまま、脱衣所で服を脱ぎ風呂へと入る。


青い魔石に触れると、赤へと色が変化した。

水がお湯へと変わり浴槽に溜まっていくのだ。


やっぱり風呂に入ると酔いが抜けてくるなぁ。


・・・はぁ。

本当に、騎士になれたなんて夢みたいだ。


辛い訓練にも耐えた甲斐(かい)があったな。


・・・そうだ。

落ち着いたら家と師匠に手紙を書かないと。


そう考え身体も温まったので、そろそろ出る事にしたのだ。


そうして浴室から出る時、鏡に映った自分に目をやる。


そこには、絶対に知られてはいけない、私の秘密があった。


・・・また、胸が大きくなったかな?


私が女としていられるのなら、嬉しい事なんだが、今はいらない。


せめてあと4年は、騎士として勤めたいので、女だとバレる訳にはいかないのだ。


また明日から気を引き締めて頑張ろうと思い、就寝したのであった。


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