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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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2

(さぁ、新しい自分の始まりだ!)


私は、雲一つない青空を部屋の窓から眺めながら、支給された真新しい制服に袖(そで)を通した。


(そろそろ時間かな?身だしなみは大事だし、ちゃんと確認しないとね)


そう思い姿見鏡の前に立ったのだ。


鏡には赤い髪に紺色の騎士服を着た青年が映っている。


(うん。良く似合っている)


ニ(・)ッ(・)コ(・)リ(・)としながら、思わず自画自賛してしまう程に浮かれてしまった。


(そうだ!ピアスって着けていても大丈夫なのだろうか?)


私は、外す事が出来ない左耳にある赤い石が付いたリングピアスを触りながら考えていると、ドアのノック音が響いた。


「アレン、起きてるか?そろそろ出る時間だぞ」


隣部屋のビルが声を掛けてくれた。


私は『今行く』と返事をして、急いで部屋の戸締りを始めたのだった。

しっかりと確認してから、外に出て部屋のドアのカギを閉める。


階段を下りて一階に行くと、ビル、それにビルの隣部屋のゲイルが待っていてくれた。


「おはよう!」


「やっと来たか。遅いぞ!今日は入隊式なのに遅刻は流石にヤバいからな」


ビルは頭を掻きながら呆(あき)れ気味に言っている。

そんなビルを横目に、ゲイルは『間に合ってよかったね』と優しく言ってくれたのだった。


この騎士寮に入寮してから1週間、みんなの人となりも段々と分かって来た。


口が悪くて煩(うる)いが、面倒見の良いビル。

細かい事は気にしない、大らかなゲイル。

その他にもいるのだが、先に行ってしまったようだ。


「二人とも待たせてごめんね。それじゃあ行こうか!」


「おいおい。遅れて来たくせに仕切るなよな!」


「まぁまぁ、落ち着いてビル。アレンも悪気はないよ」


「悪気がないから言ってんだよ!」


とまぁ、いつもの調子で寮を出て、石畳の道を三人で歩く。

そして、曲がり角の酒場を通り過ぎた時に、ビルが口を開いた。


「なぁ?今日の入隊式が終わったら、飲みに行かないか?」


「うん、いいよ!ゲイルは?」


「そうだね。あんまりお酒は飲んだ事ないけど、僕も行くよ」


そんな話をしていると、訓練場が遠くに見えてきた。


近づくに連れ、既《すで》に大勢の人で埋め尽くされているのが見てとれた。

騎士以外にも、周りには華やかなドレスを着たご令嬢達が沢山いる。


(なんか、すごい事になっているな。

この中を掻き分けて、訓練場に入らないといけないのか・・・)

それに、色んな香水の匂いが混ざって、気持ち悪くなりそうだ。


私は心配になり、横を見ると二人とも声には出さないが、眉間に少し皺(しわ)が寄っていた。


多分、同じ事を感じてるんだろうな。


「早く行かないと間に合わなくなる。二人とも急ごう!」


時間が無いのはもちろんだが、この場所を早く通り過ぎたいので二人に声をかけた。


すると『ったく。余裕がないのは誰のせいだと思ってるんだ?』とビルは文句を言いながらも、一刻も早く、匂いから解放されたいのか、かなりの速さで歩き始めたのだ。


それに、ゲイルと私が続く。


ほどなくして女性陣という花畑を通り抜け、やっとの事で訓練場へと到達したのであった。


(スーハー、スーハー)

香水の匂いにやられそうな頭を復活させる為に、ゆっくりと深呼吸をする。


前に居る二人を見ると、同じく疲れ果てていた。

ビルなんて、文句を言う気力もないのか、ぐ(・)っ(・)た(・)り(・)としている。


(香水って、混ざると凶器になるんだなぁ・・・)


なんて意味のない事を考えてしまう程に、強烈だったのだ。


だが、まだ始まってもいないのに、疲れている場合じゃない。


その後、二人に『じゃあ、またあとで』と話し、それぞれ指定された場所へと移動した。


(うん、段々と匂いも抜けて頭がスッキリしてきたな)


そして冷静になると、今度は緊張してきてしまった。


(・・・他の人はどうなんだろう)


気になった私は、周りを見回したのだ。


すると皆、それぞれ思う事があるのだろう・・・。

下を向いている人、ソワソワしている人、手のひらに何かを書く真似をしている人。

・・・色んな人がいる。


今、ここにいるみんなが同期になるのだ。


期待と不安が入り交じった感覚に、昔の自分がフッと頭を過(よぎ)る。

思わず癖で、ピアスに触れてしまった。


(・・・そう言えば、ピアスの事、何も言われなかったな)


それから、瞼(まぶた)を閉じ、深く深呼吸をした。


・・・失敗は許されない。


今までの努力を無駄にしない為にも、上手くやらなければ。


私はピアスから手を離し、拳を握り締めて、真っ直ぐに前を向いたのである。


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