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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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13

寮へと帰る道すがら、これからの事を考えた。


期日は1週間


そんなに荷物がある訳ではないから、荷造りは1日で済む。

だが、王宮へ荷物を持ち込む事に時間が掛かりそうなので、徐々に運ぶしかないな。


それと、みんなへは何て言おうか・・・。


どうしようかと、考えが纏まる前に寮へと着いてしまった。


玄関扉を開けると、各々のメールボックスが設置されているのだが、そこに目を遣ると、私宛の手紙が振り分けられていたのだった。


先日出した手紙の返信が来たのかな。


そう思い手に取ると、私が出した手紙が、宛先不明で返って来ていたのだ。


宛名を見ると、ジェームズ・マイアー。

・・・師匠だったのである。


え?

何かあったのだろうか。


心配だが、すぐに帰れる距離ではない。

どうしようか、と悩んでいたら、声を掛けられたのだ。


「アレン、特殊部隊の事は、そんなに気にするな。

王宮を守るのも、騎士の立派な仕事だろ!

それにな、今日はみんなで、沢山ご飯を作ったんだ。

だから、一緒に食べようぜ」


そう言って、私の肩を2回叩いて励ましてくれたのは、ビルだった。


きっと、師匠の事を心配している私を、特殊部隊で悩んでいると思ったのだろう。


本当に優しい奴だな。


「ありがとう。

じゃあ、着替えてくるよ」


そう笑顔で伝えると、ビルも白い歯を見せて笑ったのであった。


そして私は、手紙を握りしめて自分の部屋へと戻る。


師匠の事は、今考えても仕方がない。

みんなが待っているし、着替えて早く行かなくちゃ。


そう思い、私は手紙を机に置いてから着替えるのであった。


そして、下へ降りると、アルト、ビル、ゲイルが待っていた。


机の上には、数多くの料理が並んでいる。

みんなだって、希望の部署に就けた訳ではない。

それなのに、私を気遣ってくれる優しさが、心に()みたのだ。


この寮から出るのは、やっぱり寂しい。

みんなと一緒に食事をしたり、話しをしたり、これから先も、当たり前に出来るものだと思っていた。


私は、そんな優しい彼等に、嘘を吐かなくてはならない。


それが、特殊部隊の機密であり、制約だからだ。


(なご)やかに食事が終わり、みんなでお茶を楽しむ。

私は今だと思い、口を開いた。


「今日はありがとう。

とても楽しい食事会だった。

それと、みんなに話さなくてはいけない事があるんだ」


そう言い切り、一口お茶を飲み、また続ける。


「私は、1週間のうちに、この寮を出る事になった。特殊部隊は王宮の警護をしなくてはいけないだろう?

なので、24時間稼働の交代制になるから、王宮内にある寮へと移動を命じられたんだよ」


そう伝えると、アルトが口を開いたのだ。


「え?アレン、いなくなるの?」


アルトの言い方だと、騎士を辞めるようなニュアンスに聞こえる。


そしてビルも私と同じように思ったのか、アルトに向かって声を掛けたのだった。


「それじゃ、辞めるみたいに聞こえるだろうが。

寮が変わるだけで、同じ騎士なんだ。

会えなくなる訳じゃない」


「ありがとうビル。

アルト、ゲイルも本当にありがとう。

私はこの寮に来て、みんなに出会えた事を感謝しているよ。

ビルも言ってくれたけど、会えなくなる訳じゃないから、これからも宜しくね」


すると、ゲイルから嗚咽(おえつ)が聞こえて来たのだ。


「アレンが、居なく、なるの、寂しいよ。

でも、仕方がな、い事なんだよね?

それに僕達は、仲間で友達だ。

これからも、ずっと、それは変わらないよ」


・・・嬉しかった。


私は、お金の為にこの仕事を選んだのだが、それだけではない、大事な事に気付かされたのだ。


嘘で固めた私自身を後ろめたい。

本当は女で、名前もアレンシアなのだと。

彼等に知って欲しいと心が思う。


でも、私はグッと歯を食いしばり、その気持ちに蓋をした。


「ゲイル、ありがとう。

そう言ってくれて、嬉しいよ」



いつか、本当の自分を話した時、彼等は、私を友として呼んではくれるのだろうか。


嘘を吐いている私が、望んで良い事では無い。

そんなのは承知の上だ。


だが、今だけは・・・。

そう願わずには、いられないのであった。


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