31 旅路
オレ達は終業式の翌日だが、両親は今日旅立つ。
そんな2人に小遣い進呈だ。
「父さん、これ」
「お、何だ」
「これでお土産買ってきて、なんてね」
「お前、そんな無駄遣いは」
「貯めて貯めて無理してどうにかなって、預金残してどうするの。オレはオレで稼ぐんだし、自分達の事も考えてよね」
「ああ、済まないな」
「昔ならとっくに元服だろ」
「そうだなぁ」
「さあさあ、お母さんが待ってるよ」
「ああ、行って来るよ」
「行ってらっしゃい、フルムーン」
「ああ、ありがとな」
無理矢理100万持たせて家の外に出す。
小遣いぐらいは無いと侘しいだろうからな。
そいつでたっぷりリフレッシュしてくれば良いさ。
しかしな、ファンシーショップって、そんなに流行らないのか?
小さな店ならやれると思ったけど、近くに競合店でもあるんじゃないのかな。
サイトでよくよく調べてみると、大手のショップが近くにあるじゃねぇか。
何だよその立地はよ。
もっとよく考えて店を借りろよな。
しかもその競合店、親父の元会社じゃねぇのかよ。
何か義理でもあるのか? そんな近くで店とか。
まさかとは思うけど、支店扱いされてんじゃないだろうな。
資本は自前で支店扱いとか、大手に利用されるだけだろ。
とことん舐められてるんじゃないのかよ、親父。
これはいかんな、何とかしてみるか。
大手か……おんやぁ?
何だこの株の値動きは。
どうにも仕手の銘柄と連動しているようなんだが、何か関連でもあるのか?
まあいいや、こいつも餌食にしよう。
小額だけど連動で買って売り予約と。
親父の古巣には悪いが、とっとと潰れてくれ。
後はこれだな。
今年の年末に最安値、7月に上がって8月に下がり、9月で上がって後は……あれ。
これ、何かトラブルになるのか? 先が無いような。
おっかしいな、予測が変わったのか?
ふむ、まあいいや、こいつに全力投入してやろう。
もし、赤字でのどうのこうのなら、対策になるかもだしな。
ゴミになるならそれもまたよし。
目指せ50パーセントオーバーってか。
来年の年末で全力買い……TOBスタートで良いか。
予想では130円前半だけど、ここは140円で募集だな。
よし、メモしておこう。
そんなこんなで、その翌日。
手ぶらで旅行に行くのはどうなんだろうな。
【倉庫】ある限り、オレは手ぶらで問題無いと。
まあ、教えてやっても良いんだけどな。
例えば、前世の記憶とかさ、クククッ。
まあこれも転生のようなものだし、嘘じゃないか。
「おーい、ミツヤ」
「お前、荷物はどうしたんだよ」
「オレは手ぶら」
「着替えとかどうするんだよ」
「現地で買う」
「何かそういうも良いな」
「まあいい、行こうぜ」
「ああ」
「ほい、財布」
「お前、これってあの時の」
「実はここにもう1つ」
「どんだけ持ってんだよ」
「まだまだあるぞ」
「お前、かなり儲けてんだな」
「まあまあかな」
「良いよなぁ、オレも儲けたいぜ」
「成人まで待て」
「ならよ、サイトで買うのはどうなんだ」
「あれも成人縛り」
「そうなのかよ」
「そのうち稼げそうなのを紹介してやるさ」
「頼むな」
さて、おもむろにこの紙袋から……うん、やっぱり美味い串肉。
「お前、何食って……うお、でけぇ」
「1本やる」
「サンキュ……しっかしやけにでかい肉だなこりゃ」
「うん、美味い」
「うお、マジうめぇ」
ううむ、周囲の奴らの注目を浴びちまうな。
美味そうに見える? 実際、美味いんだけどな。
売るとしたらいくらかな。
1個400円として2000円か。
まあ別に金とかどうでもいいし、500円でも問題無いか。
むしろタダで配っても良いぐらいだな。
どっかの施設に大量に渡すとか、うんうん。
串肉配給センターってか、クククッ。
しかしこれ、持ちが良いと言うか何と言うか。
なんせでかい肉が5つだから、なかなか減らなくて。
周囲の注目を浴びながら、美味い美味いと夢中で食う2人。




