107 古都
観光のせいか、特に会話が多いです。
10日の旅行を終えた面々はそれぞれに帰途に就く。
現地解散して各自で帰るというのも珍しいが、自主性を尊重とかするらしい。
そんな訳でオレ達は素直に帰らず、そのまま西への旅に出る。
それと言うのもシナリオのせいでやれなかった、京都の観光がやりたいとオレが言い出したのと、また関西に行きたいというミツヤの希望が合致した為だ。
それぞれのしがらみを切ったが為に、もう邪魔は入らないと思っての事。
「さあ、いざ、京都へ【転移】」
「やっぱ、味気無いぜ」
「けど、楽だったろ? 」
「そりゃそうだけどよ」
もう何も遠慮は要らないと、ホテルも【暗示】で楽々予約。
例の料亭にも【暗示】でクリア。
予約無しでも少し待つだけで食える事になり、ミツヤは相変わらずすぐに食っちまい、オレは料理を楽しんだ。
「やっぱ量が少ないぜ」
「どうにも味わう料理は苦手のようだな」
「料理自体が最近よぅ」
「それは言わない事にしようぜ。折角の料理が拙くなる」
「それも成り切りかよ」
「人に成り切って、人の味覚のつもりで味わえば、どんなに味気なくても美味く感じるものさ」
「そいつも修練ってか、まだまだだぜ」
ふと、思い立ってケータイであれこれ見てはメールしていく。
最近、送ってなかった優良株の情報と、競艇の大穴情報。
派手な大穴と小穴をいくつか送り、ちょっとした仕手っぽいのを送っておく。
後は暴落時期を……やっぱり経済が少し変になっているのかもな。
ああ、管財人を切っちまったから、仲介者も消えちまったから、またぞろ変になっているのかもな。
まあもうどうでも良いけどよ。
ミツヤを京都のゲーセンに置いて、少し用事があると仕事場に。
サイトを見ると派手な事になっていて、慌てて調整しまくった。
それと共に別名義に全額送金だ。
かつて抹消しようとして、小銭だけ残しておいたネトギン4社に分散して送金依頼。
もう石田にも余分な金をやる事もないと、全て送金の運びとなる。
桜崎は何とか保っているが、オレからの連絡が無いので戦々恐々と言ったところか。
さて、後はこれに残金を注ぎ込んで……さて、旅の続きといきますか。
ゲーセンに戻ると何やらトラブルのようで。
「ええから来いっちゅうとるんじゃあ」
「いやや言うてるやろ」
「じゃかましい、おい、さらうど」
「へいっ」
【誘導調整】
そこらの野次馬の中から一番赤っぽい奴に誘導し、そいつがさらわれていく。
「ふぃぃ、参ったぜ。うっかりがあるから手が出せねぇしよ」
「何をやったんだ」
「それがよ、オレが両替してたら金を寄こせって言いやがってよ」
「財布使ったか? 」
「あ、札束から1枚抜いて。それでかよ」
「見せたら欲しがるのが自由業だ」
「そうだったぜ」
それからあちこち観光巡りを開始して、初対面だろうと何だろうと【暗示】で全てクリアしていく。
拝観制限すらもクリアし、普段では見られないレアな観光になっていった。
「接写、接写」
「うっく、オレはまだ飛べねぇぇ」
「ふうっ、至近距離からの撮影はこれに限るな」
「飛ぶ魔法を何とかしねぇとな」
「それはやはり風魔法のある世界じゃないときついだろ」
「それでやれねぇのかよ」
「待て待て、今、何か開発してやる」
「そんなにすぐやれるのかよ、研鑽の次元が違うぜ」
【共用飛翔】
「うわっ、ちょ、これ、うお」
「スキルレベルはオレ準拠だ。だからコントロールは楽だろ」
「本当は難しいのかよ」
「当たり前だろ。オレの精神疲労は今2倍だ」
「わりぃ」
「ほれ、接写接写」
「お、おう」
「よし、このまま上空に行くぞ」
「良いのかよ」
「構わんさ。この程度。さて、【共用隠蔽】」
「そりゃ何だ」
「見え辛いようにしとかんとな」
「ふぇぇ、桁が違うぜ」
「さあ、行くぞ、付いて来い」
「おっし」
にわかに始まった空中遊泳。
気配と存在感を限りなく小さくし、共に古都の空の散歩が始まった。
空からの観光もなかなかにおつなもので、余計な喧騒が無いから快適だ。
ミツヤも自前のスキルが欲しくなっているようで、やはり体験させた事は無駄ではなかったと思える。
人間は他人の物を欲しがるが、ミツヤは自己開発する気になっているようで何よりである。
すっかり日が暮れるまで楽しんだ後、ホテルに帰って部屋に入る。
「ああ、楽しかったぜ」
「それは良かったな」
「絶対、あれはものにすんぜ」
「意欲になって何よりだ」
「意欲出まくりだしよ」
【共用】は意外と簡単だったな。
ステータスのシステムを【解析】したらすぐ理解したし。
それの応用だから良かったが、自己開発するならそれを支援するスキルも欲しいな。
ミツヤはすぐに寝ちまったが、オレは開発のほうに気が向いて、しばらくそれを考えていた。
そのうちにオレのスキル開発能力をレンタルすると言うか、作業場を貸すイメージで【補助】を開発。
そのうちに使ってみようと思いつつ、軽い精神疲労からそのまま寝てしまう。
「あ、裸の女が」
「うーん」
「ちぇ、コージには効かねぇか。ならば、裸の男が」
「お、何処だ何処だ」
「うぇぇぇ、マジかよっ」
「クククッ」
「起きてたのかよ」
「ミツヤの波が変動したからな」
「そういうのを感じて意識を浮上させるって言うのも大事だな」
「いわゆる目覚ましみたいな感じに自らにセットする感覚と言うかな」
「全ては思い込みってか」
「思えば成せる」
「うっし」
「さあ、何か開発してみろ【補助】」
「えっと、うお、何だこりゃ。すげぇぇ、スキルが、ああ、こうすりゃ良いのか。うお、すぐに、なんかよぅ、これ、とんでもねぇぜ。よし、これで」
【切断】
「はふうっ」
「あれがコージの開発環境かよ、とんでもねぇぜ」
「使っていればそのうち自前の環境もそうなるさ」
「何かよ、スキルがずらりと並んでよ、それの組み合わせもすんなり進むと言うかよ、イメージのままに組み合わさって。マジすげぇぜ」
「飛べそうか」
「いや、前に考えてたスキルなんだけどよ」
「ああ、楽しみにしてたやつな」
「名付けて分身の術」
「ほぇ? 」
「いやな、自分の偽者の姿を出せる魔法でよ、それ出して逃げたらうっかりもねぇと思ってよ」
「ああ、絡まれた時にかよ」
「そうそう、ただ姿はそっくりだけど、幻みたいなもんでよ、しばらくしたら消えちまうんだけどよ」
「つまりこうだな【分身】」
「うげ、あんのかよ」
「オレもこれで逃げようっと」
「まさか、今、開発したのかよ」
「イマジネーションだな」
「はぁぁ、やっぱ、慣れてる使い手だとああなるんだな」
「数分で消える幻のはずだ」
「効果は同じだな。分身の術……ぽわん」
「イメージが悪くねぇか? 何か出来損ないみたいだが」
「うっく、そこまでは考えてなかったぜ。しかもこれ、すぐには消えねぇし」
「オレは消えるぞ【切断】」
「そういうのも開発しねぇとな」




