10.これが不安、か【2】
「私が何処までお役に立てるか分かりませんが、私で良ければ…。」
と、ここまで言って気付きました。私が今言おうとした言葉は、まるでプロポーズではないですか。
「俺はメルが良い。」
「っ?!」
言葉を途中で止めた私に、ヴォルの飾りのない言葉攻撃でした。耐性のない私はその都度息を呑んでしまいます。ほ、本当に恥ずかしいですね。たまにストレートな発言をされるので、こちらの気持ちがブンブン振り回されます。
ヴォルは私に恋愛感情を抱いている訳ではありません。…ヴォルは私に恋愛感情を抱いている訳ではありません。…ヴォルは私に…。本当、呪文のように繰り返しますよ。いつか勘違いしそうで私自身が怖いです。
「で、では船に乗りましょう。あ、手続きが必要ですか?」
話を進めましょう。希望的妄想が暴走してしまう前に、です。
「分かった。手続きは昨日の乗船券があるから何とかなる。」
漸くベッドからヴォルが起き上がりました。ふらつくこともないので、本当にもう大丈夫そうですね。そうして私達は荷物をまとめ、宿を後にしました。
本当にこれに乗るんですよね?私は首が痛くなる程に高いマストの先を見上げます。この前見たものより、より高級感がヒシヒシと漂って来るのですが。
そんな私の戸惑いをよそに、ヴォルは受付の男性と話しています。どうやら昨日の乗船券を払い戻し、変更してもらっているようです。ヴォルは人当たりがよい口調ではないと思いますが、何故か周りの人は皆が親切なのです。やはり、人は見た目が重要なのでしょうか。
「これに乗る。」
「あ、はい。」
呆気なく、と言った感じがしなくはないのですが。ヴォルが大丈夫なら、それで良いのでしょう。だいたい私はお金もないですし、ヴォルについていくだけですから。
乗客用の階段を上り、木製の巨大な船に乗ります。船の下の方は貨物用で、マグドリア大陸からグレセシオ大陸への輸入品が殆どを占めています。乗客の荷物の僅かと、運搬用のウマウマさんなどが残りのスペースですね。
「ぅわーっ。」
船の甲板から見回すと、高い場所という事もあって海の遠くの景色まで眺められました。海は青がずっと続いています。反対側にはスワケット港の町並みが見えました。
「あまり乗り出すと危ない。」
腰の辺りを支えられて驚きましたが、いつの間にか私は甲板から身を乗り出すように景色に見入っていたようです。
「あ、ありがとうございます。…すみません。」
荷物を全てヴォルが持って下さっているので、私は迷惑を掛けないように大人しくついていかなければなりませんでした。そして私を支える為、右手に持っていた荷物は既に足下に無造作に置いてありました。もしかしたら投げ捨てたのかもしれません。




