8.精霊とは違う【4】
「…あまり変わらない。」
何ですかね。それって、答える意味がないような気がしますけど。少しだけムッとしてしまいます。
「俺にはメルが必要だ。」
「っ?!」
…なんとまぁ、かなりの大打撃です。ヴォルは、自分の容姿が周りに与える影響を分かっているのですか。私は真っ赤になったであろう頬を両手で覆います。
「どうかしたか。」
「っ…、卑怯ですよ…。」
「卑怯…。」
「その顔で…そんな事言って…、断れる訳ないじゃないですか…っ。」
私は熱い顔を両手で挟んで隠すように俯きつつ、ヴォルに抗議の視線を向けました。
「顔…。」
「そう言う貴女こそ。頬を赤らめ、潤んだ瞳で上目遣い。男を誘っているのですか?そうやってヴォルティ様を誘惑したのですか。」
「っ?!」
突然横から聞こえた声に、勝手に身体が緊張しました。この声、あの片眼鏡の…。ギギギッと音が出そうなくらいゆっくりと声の主を見ます。
…っ!いつの間に隣の席にいたのですか?!って言うか、誘惑?私がヴォルを、ですって?
「冗談じゃないですよっ!!私の方が誘拐されてきたのにっ!」
怒りのあまり、周りの状況が見えませんでした。目の前の二人が押し黙った時、こちらに向けられたザワザワとした音と視線にハッとします。そういえばここ、公共の食事処でした。
「聞き捨てならないですね。ヴォルティ様を侮辱すると言う事は…。」
「ベンダーツ。」
言葉を続けようとした片眼鏡を制したヴォル。何を言われるのかは分かりませんが、いくら私でもここで言い争いをつづけるのは得策とは思えませんでした。
「失礼致しました。ここでは他の方々にご迷惑が掛かるので、店の外で話しませんか。」
高圧的な態度です。先に口を挟んできたのは片眼鏡の方なのに、です。
「…必要ない。ベンダーツ、俺はお前に帰れと言ったが。」
ムムッとして言い返そうとした私より先に、冷たい言葉と視線を向けたヴォルです。ヴォルってこの人の事、
かなり嫌いですか?いえ、私も嫌いですけど。
「そのご指示には従いかねます。」
頭を下げながらも、その口調は全く下手に出ていません。良い性格をしていらっしゃいますね。
「……。」
無言のヴォルです。この整った顔で真っ直ぐ感情のこもっていない視線を向けられたら、私なら怖くて心臓が暫く活動休止してしまいそうです。
「どちらにせよ帰られるのでしたら、私も同行させていただきます。」
「断る。」
即答のヴォル。ですが片眼鏡も一歩も引きません。修羅場、でしょうか。




