4.無自覚め【4】
「すみませんでした。」
とにかく頭を下げます。確かにヴォルは何も悪くはなかったですし。
「…早く乾かすぞ。」
「…はい。」
ヴォルはそれ以上何も言わず、温風を作り出してくれます。この人、顔だけではなくて本当にモテるのではないでしょうか。然り気無い心配り、押し付ける事のない優しさ。言葉が少なくて無愛想で俺様な感じですが、見た目だけではない惹き付けられるものがあります。
「どうした、メル。」
知らずにヴォルをジッと見ていた事を、声を掛けられて気付きました。駄目ですね、私。必要以上にヴォルに好意を寄せていっています。
「あ、何でもないですっ。ま、魔法って便利だな~とか思っていただけでしてっ。」
少しだけシドロモドロになりながらも、誤魔化す私。これは嘘ではありませんし…、言えない事もあるのですから。
「そうか。俺は物心ついた時から身近にあったが。」
初耳です。ヴォルの個人情報って、本当に貴重なんですから。
「そうなんですか?セントラルって、魔法を使える人が多いのでしょうか。」
「そうではない。…俺の特殊環境がそうさせたのか。」
ん?今、不思議な言葉が聞こえました。特殊環境?何でしょう。聞いても良いのでしょうか。
「あの…。」
「…俺は精霊に好かれていたからな。」
そう言ったヴォルの瞳は、何故だか少しだけ寂しそうでした。それもすぐに見えなくなってしまいましたが。
「精霊言語って、他の魔法を使う人も話せるのですか?」
「そうだ。基本的に魔法を習って、それを形にする言葉を身に付ける。」
「基本的って、ヴォルは違うのですか?」
「…あぁ。」
あれ?聞いては駄目でしたか?
「俺は人から学んだ訳ではない。」
「すみません、色々聞きすぎましたっ。」
ヴォルの瞳に痛みを感じ、私は咄嗟に謝っていました。問えば話してくれますが、話したくない事も中にはありますよね。
「メルは………。いや、良い。」
何かを言いかけたヴォルですが、途中で口をつぐんでしまいました。何でしょう。気になりますが…、あまり質問ばかりは良くないですよね。あ、服もだいぶ乾いてきました。もう透けていません。
「服、乾いたようです。お腹空きましたね。お昼にしませんか?」
ここは空気を読みましょう。ヴォルが口をつぐんだという事は、その話はしたくないと言う事です。私はわざと元気な声で告げます。
「そうだな。」
ヴォルも自分の服を確認し、魔法を終了させます。フワリと元の湿った空気が全身を包み、少しだけ寒く感じました。でも、空腹には敵いません。泳いだ事もあり、私のお腹はもうすぐ悲鳴をあげそうになっていました。




