1.メルとなら構わない【3】
いくらヴォルがその様な状態に慣れているとはいえ、私は初めてなのですよ。男性の前で自分の貧相な身体を見せるなど、そんな大それた事はとてもじゃないですが出来ません。
「問題、大有りなんですっ。」
純粋にお風呂に誘ってくれていたとしても、この状況って物凄く恥ずかしいではないですか。
「…脱がないのならば。」
ひたすら拒絶していた私に業を煮やしたのか、いきなり私の腰に手を掛けたかと思うとバシャン!!
…何が起こったのか、全く理解出来ませんでしたよ。息が出来なくなるまで。
「っは!」
慌てて空気を求めました。気付いたら私、球体になっているお湯のその中にいます。どうやらヴォルに放り込まれたようですね。って。
「何するんですかっ!」
涙目になって怒鳴りました。少しお湯を飲んでしまいましたが、これが純粋な水である事を知っているので身体に害がない事は分かります。
「服を脱ぎたくなかったのだろう。」
「そ、そんな事を言っているのではありませんっ。」
「Kono kuukan wo kakuri suru.」
ヴォルが結界の魔法を唱え、その装備を取り始めます。えぇっ!?な、何を…。またしても状況が飲み込めません。目を見開いたまま硬直していた私は、漸くヴォルが服を脱いでいるのだと分かりました。
「ちょ、ちょっとヴォルっ!?何をしているのですか?」
「服を脱いでいる。」
「そんな事は分かりますけどっ。」
「俺も入る。」
やっぱり…。この人、私を何だと思っているのでしょう。突然目の前で男の人に服を脱がれて、平気でいられる訳がないじゃないですか。
「わ、私出ますからっ。」
慌てて球体の中を泳ぎ、お湯の中から脱出しようとしました。でもそんな私の行動より、ヴォルの素早さが上回っています。えぇ、分かっていましたけど。
「キャッ?」
後ろから羽交い締めにされ、みっともなくジタバタと暴れました。でもヴォルは私をしっかりと掴まえたまま、低い声で一言告げます。
「逃げるな。」
って言うか、逃げたくなる気持ちにさせたのは誰ですか?振り返りたくても振り返れない現状に、私は一人でパニックでした。




