墓穴を掘る2
リサがそう発した瞬間ピカッと刺された。
俺は体が固まってしまったが、うーんと決意した。
「それは“聖犠牲”(サンクチュアリ)という技で、体中の魔力を溜めて放出する技なん
だ。相手はボアドッグスの変異モンスターで再生能力があった。相手は強力だったけど、
一撃で倒す気持ちで撃ったら、四方の木が全部飛んだくらいの威力で撃った。」
これは世界を救う大事な話だし、話そうか迷ったけど、皆ならいいと思ったんだ。
「僕は魔王を倒せと言われただけで、倒せるかわからない。“光”の恩恵を授かっている
というけれどこれだけ突出しているのは木を再生させたり、この前も死んでいた猫を生き
返らせたりする力があったからなんだ。」
あれは2日前。猫を“死者蘇生”で治した。放したが、なつくので学園長に
渡した件だ。
その話をすると、皆あ然としていて
「地形を変えて、天候を操るのか。」
「生き物を生き返らせるなんて一級魔導士のすることだし。学園長が言っていた元気な猫
の話か。」
二人とも呆然としているぞ。子供の頃の絵本だと簡単にしていたことだと思うのだが。
岩を溶かしたのは鍛錬だが、池を創ったのは育った町に水路を引くためだ。生き物も影
響がないように少し自然から恵んでもらうんだ。やりすぎと言われると困る。
リサは、
「今、考えられるのは精霊降霊祭の前で精霊と契約する前よね。6歳の時。
それで“シュルトウォルテインの守木”を創造してしまったと。やっぱり勇者か。」
珍しく顔が引きつっている。怖い目でこっちを睨んでいる。
「5歳だよ。」
うっかり忘れて口走ってしまった。
「え~!!」
「やっぱり、当時のA級冒険者が歯が立たなかったボアッドグスを倒したのはアルス。
あの憧れの勇者なんです。」
皆は盛り上がって、シルベーヌが感激していた。
なんかやっちゃったなと思ったが、こんな時がくるなとは思っていたんだ。
リサは自分の魔法を説明した。
「私は五大元素は中級魔法までかな。大技を覚えていないだけではなくて、向いていない
属性は威力が弱いのね。最初に風属性が使えないって言ったのは使えないのではなくて、
アルセイスと契約した次の日、風魔法で大嵐を起こして裏の山を禿げ山にしたからなの。
それ以来、風魔法は出来るだけ使ってこなかった。それで他の属性は魔術書にあるよう
なのはだいたい使えるのよ。
攻撃魔法は中程度よ。私たちは元々、先頭に立ってせん滅する役割はなかったから。
私は子供の頃から魔法の研究にはまっていたわ。創造魔法の複合魔法を得意にしたりし
て、氷の魔法は雪のドームをつくってみたり、アイス・ブリッジを作ったりした。雷は木
に落として燃やしたくらいの威力はあったわ。
でも、本当に水魔法が得意でこの間記事になったジャイアント・トリガーフィッシュを
倒したとかちゃんとやればできるわ。
あとは、家督。王室の秘技ね。“太陽の光”や“太陽の砲火”
これは使えないことになっているけど、なにかあっても困るしね。
“閃光”は王家の伝統だからいいけど、何発も撃てないわ。
魔法力は28万くらいよ。
“聖なる歌声”とか“愛情の安らぎ”が使えて、回復したり状態異常を治せるわ。
剣の腕前は二段。“火炎斬撃”や“岩斬破”が使える。
実戦はまだだけどみんなに遅れないように頑張るわ。」
リサはこれだけの内容をあっさりと言ってのけた。裏の山と言えば三山五山といい、そ
のうちの一つは丘山と呼ばれる。一面草の生えた山があるがあれはリサがした事だったの
か。6歳か5歳頃か、天才っているんだな。それからリサは怒らせないようにしよう。
魔法研究も熱心だったんだな。小さい頃から探求して魔法を究めようとしていたんだ。
宮廷魔導士でもてこずるような水の魔物、ジャイアント・トリガーフィッシュを水魔法で
倒すなんてどれだけの威力なんだ。
そして、剣の腕前も一流、本人は謙遜してるが師団長くらいの腕前は持ってて、戦場に
行かせたくないからと二段の免許皆伝という事にしているらしい。
考えてみればこんなすごい人たちとパーティーを組むのか、と少し頭がクラクラする。
「アルス、あなたはすごい人よ。
さっきの話、精霊なしでも山一つ消し去る事ができるって事でしょう。」
それは正直できると思う。そこまで破壊するような事はしていないけど。
「でも、リサの魔法力はすごいレベルが高いよ。皆にも教えればいいのに。」
王家の秘伝とか語り草になっているくらいだからそれも広めていいと思うけど。
それにリサの観察眼はすごい。
「まだまだね。王家の伝承の魔法というのは伯爵や貴族の使うものよりも強力な魔法よ。
あの時なんか精霊を初日から使いこなすなんてとか、魔物を召喚したのではとかいう声も
あったわ。人は異質なものを見ると排除したくなるし、この国では魔法で強い力を持てば
誉めるけど、過ぎたるは巨悪のきっかけって言葉があるでしょう。
私は国民にもっと素朴なところも優れているところも目をかける優しさを持って育って
欲しいのよ。だから最近生まれた「福祉」って言葉に魔法のある生活が秩序を持って成り
立たないかな、と思っているの。ここで話した事は内緒よ。“凪”で遮音して正解だった
わね。みんな話せないような事ばかり。
パーティーはアルスとレオナルドが前衛で私とシルフィーは後衛ね。」
話がまとまった俺たちは“凪”を取り、先生に報告した。
「それでは冒険は一週間後ですが、皆さん気を引き締めて。なにか連絡があったら担任ま
で報告するように。解散。」
それでその日の授業は終わった。
みんな用事があるとかで今日は別れた。




