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「では思い付く転生者の技術はそんなもんか?」

「そうですね、、、正直もっと頑張ってもらいたいところですよね」

「本当にそうじゃ。お主らは本当に役立たずじゃ」


 蒸気機関とまでは行かなくともせめて馬車のサスペンションくらいは作っておいて欲しかった。

 まあ、俺も無理なんだけどね。

 普通の鉄とバネの鉄とどう違うの?

 焼き入れとかで変わる?


 はっ!

 馬車に貢献できる知識ならある!

 前輪は小さく後輪を大きくする事で直進性を上げ、荷台の振動を防ぎ、旋回性能を上げる事ができるのだ!

 教育テレビか何かで見たぞ。


 俺は慌ててメモを取る。

 相変わらず炭だから不便だ。


 ジジイたちに鉛筆について知らないか聞いてみたが知らないとの事。

 使えんエルフだ。


「僕はもう思いつきませんが、そうおっしゃるのなら何かあるのでしょう?」

「まあな。転生者のもたらしたものは色々あるが、ワシらが一番役に立ったと感じたのは馬の蹄鉄じゃな」

「そう、アレには驚いた!」

「え、蹄鉄ですか?」


 何で?


「ピンと来んか。馬のひづめは案外弱くての、方舟の外で飼うと自分の糞を踏んだくらいで脚の病気になって使い物にならなかったんじゃ」

「何故、方舟で大事に生かしてあったのか不思議だったくらいじゃ。外に出しちゃいかんのかと思ったわい」

「へー、そうなんですね。他には何かあります?」


 ふたりは腕を組んで首を傾げた。


「あとは、ぼちぼちじゃな」

「小麦は毎年牧草と交互に植えると良いとか、小麦の育たなくなった土地でも大麦やカラス麦なら育つとか、そうした農業系の知識が多いかの」

「蹄鉄もそうじゃが、鉄が不可欠と教えてくれたのは大きな貢献と言えるかもな」

「王都にはカビから薬が作れるとか言って研究しておるのも居るが、完成はいつになるやら、、、」


 おお、なんだっけ?

 抗生物質の何かだよな。

 ウイルスには効かないが菌には効く筈だ。

 そのうち梅毒をもらいそうなアウグストの為にも開発を急いで欲しい。


 完成させたらマジでノーベル賞ものだよな。

 これは本当に人類に貢献できる。

 俺の挽肉器とは雲泥の差がある。


「まあ結局、転生者はいつもアレができるコレができると言うが、なかなか実現はせんのじゃ」

「そうじゃな。となると世界を先に進めるには、そこそこに裕福になり、ほどほどに戦争をし続けるしかないのじゃろうな」


 うーん、それはそうなのだろうけど、そう聞くとなんだか無力感が増すな。

 もっと役に立つ、貢献できることはないもんかね?


 薬を作ってるのが居るなら外科手術かね。


「あの、怪我をした時に傷口を縫い止めると治りが早いとかって皆さんご存知ですかね?」

「誰でも知っとるわい」

「リサは魔術でやりよるぞ」

「ありゃ大したもんじゃ」

「血を多く失ってからでは手遅れになるからの」


 え、そうなの?

 前に治癒魔術は無いって教わったけどな。

 あるけど少し治癒力が上がる程度、だったかも。


「あ、今のは他言無用じゃぞ?」

「誰かに知られたら何処ぞのお偉いさんの専属とされてリサの自由がなくなるからの。弟子のお主もそれは本望ではあるまい」


 なるほど、それで俺にも内緒にしたのか。


 あ。

 ひとつの可能性に思い当たった。

 ポリオリでの落ち葉はらいのパーティで長官に殺されそうになったあの件。

 あの時はヴィート氏のおかげで刺されなかったけど、治せる自信があったからあの賭けに出たのか!

 やべえな長官。

 いや、ヤバくなかったな、長官。


「しかしオミクロン貴様、リサなら治せると油断して無茶をするなよ?」

「そうじゃ。切れた血管や傷が自身の力で癒着するまで魔力を注ぎ続けるのじゃ。傷の深さによっては治る前にリサの魔力が切れてリサもろとも死ぬことになるぞ?」


 マジか。

 そりゃあ、身近な人にもうっかり言えないな。

 頼られても断らざるを得ないって場面もあるだろう。

 本当に仕方がなくて断っても、恨まれる未来がはっきり見える。


 これは絶対に内緒だな。

 てか俺に漏らすなよジジイ共。


「だからオミクロン、貴様も使えるようになっておいてリサを守れよ?」

「そうじゃ。リサが倒れては我らに酒が届かなくなってしまうからの」


 ふたりのゲオルグ爺を殴るべきか感謝すべきか心が揺れる。

 一応文句は言っておこう。


「酒のためって一言がなければあなた方を尊敬できたんですけどね」

「今のは貴様に余計な重圧を与えぬための配慮じゃ。感謝せい」

「そうじゃ、シリアスになり過ぎんことが長生きのコツじゃぞ」


 うーん、アドバイスとして間違ってはいないのだろうが飲み込みにくい。

 やはり尊敬するのはやめておこう。


「ところで、おふたりはいま何歳なんです?」

「ワシは二百じゃ。端数は忘れた」

「ワシは三百じゃ。大体な」

「え、エルフの寿命って百とか言ってましたよね?」

「最近のエルフはな。ワシらは違う」

「若いモンは根性が足りんのじゃ」


 マジか。

 なんか急に尊敬しても良い気がしてきた。


「オミクロン貴様あと何日この里におれる?」

「その期間に間に合うようみっちり仕込んでやるから覚悟しておけ」



 こうして俺の《治癒魔術特訓編》が始まったのだった。


お読みいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
気合いで寿命が伸びるんですか?!?笑
馬関係ならあぶみもですね。 シヴィでも技術ツリーの一つに入れられるほど重要。
お?ただの嫌味な偏屈ジジイだけで終わらない感じですね。 ちょっとは見どころがありそうで良かった。
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