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 小屋の中にはさっきの老人の他にふたりいた。

 ひとりはさっき外の小屋にいた若いひとだ。

 もうひとりはこの家の家主らしき老人よりもずっと歳上に見えるご老人。

 みんなフードを被っているので耳は見えない。


「まあ、座れ。茶でも飲め。ああ、荷物はその辺に置くといい」


 言われるままに荷物を棚に置いてテーブルにつく。

 木のマグカップからは湯気があがっている。

 夏でも熱いお茶なのはおじいちゃんあるあるだよな。

 

 口をつけて驚いた。

 甘い!

 このダイレクトで余計な香りも味もしない甘さは砂糖だ。

 この世界で砂糖はかなりの高級品なのだ。

 やけに冷たい人たちかもと思ったけどやっぱり歓迎されてるかも。


「それで?」

「あ、こちらがその手紙です」

「随分時間が掛かったがリサはいま何処に?」

「おそらくカイエンかと」

「カイエンか、そりゃ時間も掛かるわな!」


 エルフのご老人ふたりが己の額をぴしゃりと叩いた。

 遅いってそういう意味か。


「お主もカイエンから?」

「私は王都で手紙を託されましてこちらへ参りました」

「そりゃご苦労だったの。で、お主は?」


 若いエルフは黙って聞いている。


「オミクロンと申します。漁村の産まれでリサ様に拾われまして、ポリオリにてリサ様の弟君の付き人なぞをやっております」


 失礼のないように、でも簡潔に答えた。


「それなら何故王都に?」

「アカデミーに入るためです」

「なるほど、試験は?」

「合格しました」

「ふむ」


 若い男が立ち上がった。


「怪しいところはないようですな。では私はこれで」

「うむ、ご苦労」


 老人ふたりが残った。


「では早速手紙を開けさせてもらおうかの」


 机の上に用意してあったレターオープナーで丁寧に封を切った。


「どれどれ、ふむふむ、、、うむ読めん。済まんが代わりに読んでくれ」

「ワシらは老眼がキツくてな」


 手紙を渡される。

 このふたりはボケでいるのかふざけているのか判断が難しい。


 手紙を受け取って開く。

 どれどれ、、、なんじゃこりゃ。


「ええと、、、読みますね?」

「うむ、早よせい」

「“拝啓 師匠方へ 件の事業は滞りなく着々と進めておりますのでどうぞご心配なきよう。くれぐれも進捗の確認やら催促やらは慎んで頂けますよう重ねて強くお願い申し上げます。敬具”」

「それだけか?」

「少し続きが、、、」

「読め読め」

「“どうせ老眼で読めぬのに手紙なんぞと方々から怪しまれるモノを送ってきおって迷惑極まりない。これを代読させられている哀れな若者は節度を知らぬ哀れな老人どもに何か暇つぶしの遊具でも与えておけ。さもないとこの企みは日の目を見ないこととなるぞ。それくらい爺い共にも分かるだろうに”と」


 老人たちは目をしばしばさせた。

 そして唐突に笑い出した。


「怒ってる怒ってる!」

「リサは可愛いのう!」


 きゃっきゃと笑って手を叩いている。

 本当にこいつらエルフなんだろうか。


「お主は何か知っとるか?」

「知っとるだろ」

「いえ、僕は何も」

「何でも良いから知ってる事を言え」

「本当に何も」

「じゃあ、お主にカイエンまでお使いを頼もうかのう?」

「そうじゃ。手紙を書くからその返事を受け取ってまたここに持って来てくれ」


 凄く嫌。

 もう旅はこりごりだよ。

 それに手紙は書くなって書いてあったでしょう?

 まあ、俺が知ってる程度の情報なら大丈夫か、、、


「多分ですけどシュトレニアからバーゼルへの通商路を築こうとしてるみたいですよ」

「何故じゃ、ワシらはシュトレニアなんぞの酒では満足せんぞ」


 知らんがな。

 てか酒なのか。

 面倒なのでポリオリとシュトレニアが婚姻で繋がることも説明する。


「何故シュトレニア経由なのだ。リサなら船があるのだから船でコマッキオまで来れば早かろう」

「そうじゃ、そうじゃ」


 俺に言っても仕方ないだろう。

 なんだかジジイどものわがままを聞いていたら腹が立ってきた。


「リサは案外、頭が弱いの」

「顔は良いのに残念じゃ」


 なんかもう疲れたし余りにも失礼だし、長官の代わりにキレてもいいよね?

 俺は座ったまま腕を組んだ。


「ちょっと聞いてりゃ酷過ぎませんか?

あなた達の酒の為に長官の命を危険に晒せと?

安全も利益も考えずに言うことを聞けと?」


 そこまで言ったら止まらなくなった。

 机を叩く。

 バン!


「そもそも船には定期的に軍の積荷チェックが入るんです。それに軍に所属してる船がマシュトマを素通りしてコマッキオに向かったらあからさまに怪しまれますよ?

そもそもエルフと繋がりがあると王都に知られた場合、困るのはあなた方なのでしょう?

それを守ってくれてる長官に対して頭が弱いってどういう事です?」


 そこまで言い切って流石に不味かったかもと気持ちが冷めた。


 老人ふたりが目をしばしばさせている。

 そしてまた笑い出した。


「怒ってる怒ってる!」

「コイツも可愛いの!」


 何だコイツら。

 面倒くさ。


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― 新着の感想 ―
古代中国の物語でよく描かれた仙人はこんな感じだったそうですね。 不老不死ゆえの生を楽しむために好奇心旺盛、メンタルは子供の様だと。
手紙の追記部分がちょっとわからない どうせ老眼で読めぬのに手紙なんぞと方々から怪しまれるモノを送ってきおって迷惑極まりない。(これは老人達への文句で良いとして) これを代読させられてる哀れな若者は(…
これは恐らく文章では伝わらないウザさが滲み出る言い方なんだろうなあっと想像しつつ そもそもなんでエルフと文通しているんだっけ?っていう根本部分がわからなくなってる
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