第3話 『女王のお仕置き』
「んん……ボルド。うまくなったな」
ブリジットは一糸纏わぬ姿でベッドにうつ伏せになったまま、気持ち良さそうに吐息まじりの声を漏らした。
ボルドはそんな彼女の腰を両手の親指で指圧していく。
いつものように寝室で2人きりで過ごす夜の時間。
今夜ボルドはブリジットの要望で、彼女の体をマッサージしていた。
ブリジットとの生活に慣れるにつれ、ボルドは彼女から求められる事柄が増えてきた。
最初は夜伽の相手を務めるだけだったが、今では札遊びや盤上遊戯の相手の他、こうしてマッサージ役なども務めている。
元々マッサージは小姓の仕事であったが、ブリジットはボルドにやってほしいと言うようになった。
そこでボルドは試しにやってみたのだが、自分よりも背丈が大きく筋肉でたくましい彼女の体を揉みほぐすのは容易なことではなかった。
最初はちっともうまく出来ずにブリジットに苦笑されるばかりだったボルドは、これではいけないと一念発起し、小姓らからマッサージの手ほどきを受けたのだ。
ボルドはその生真面目さと理解力の高さで、学んだことをすぐに吸収した。
彼はたちまちのうちにコツを掴み、彼女の体を揉みほぐすために握力を鍛えるなどの訓練も欠かさなかった。
そのため今では上達し、随分とブリジットに喜ばれるようになっていた。
だがこうして美しい素肌を晒すブリジットを前にすると、ボルドには悩ましいことがあったのだ。
鍛え上げられ筋肉のついたブリジットの肉体は、その一方できめ細やかな白肌と腰のくびれや尻の張り、そして豊かな胸のふくらみなど、女性の曲線美に満ち溢れている。
もう幾度となくブリジットと愛の交わりを繰り返してきたボルドだが、今でもこうして彼女の美しい裸体を前にし、なおかつその手で彼女の肌に触れていると、ついつい男としての欲望が首をもたげてくる。
(だめだ。集中しないと。ブリジットを癒やすことに集中するんだ)
ボルドは彼女の疲れを取るべくマッサージに集中するが、こういう時にブリジットは肌に触れるボルドの指の動きから、彼の気持ちを読み取ってしまうのだ。
彼女はムクリと身を起こすと、じっとボルドの目を見つめる。
それから彼女の視線はボルドの腹の下へと落ちていき、その目が細められた。
「ボルド……何でそうなっている? マッサージの最中だというのに」
そう言って妖艶な笑みを浮かべると、ブリジットはボルドに迫り、その唇を奪う。
「んむっ……」
「ぷはっ……」
そして長い長い接吻の後、ブリジットはボルドのそれに手を伸ばした。
「あっ……」
思わず腰を引きそうになるボルドを見て、ブリジットはその目に少しばかり意地悪な光を宿し、艷やかな唇をゆっくりと開く。
「仕方のない奴だな。お仕置きだ。容赦しないからな」
「ブ、ブリジット。そのような……ああっ!」
この夜はブリジットに激しく攻められ、ボルドは成す術なく愛と快感の沼の中で身を震わせるのだった。