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エピローグー3

「言っておきますが、我が日本政府は、末端に至るまで、一切、今回のスペインへの義勇兵派遣には、公式には関与しておりませんので。「白い国際旅団」の中に、海兵隊を中心に、日本の予備役軍人が多数いるのは、全くそれぞれの個人の自発的意思に基づくものです」

「ほう。英の三枚舌外交も顔負けの主張をするな。そんな主張をする弟子には、師匠として、日本海兵隊を破門するように、フランス陸軍に言わねばならん」


 土方勇志伯爵は、ペタン元帥と旧知という事もあり、厚顔無恥ともいえる主張を笑いながら言った。

 ペタン元帥も、それに合わせて、笑いながら言い返した。

「それは勘弁してください」

「勘弁ならんな」

 2人は、更に冗談を言い交わした。


「冗談はそれくらいにして、日本もいろいろ大変なようだな。中国内戦は激化する一方、ソ連は虎視眈々と満州から朝鮮に掛けて侵攻する隙は無いか、とうかがっている。日本も気が気でないだろう」

「その通りです」

 ペタン元帥の言葉に、土方伯爵は肯かざるを得なかった。


「かといって、我がフランスも余裕は全く無い。世界大恐慌からの脱却を最優先しないといけなかったからな。それに、フランス国民の厭戦感情は、かなり深刻だ。世界大戦の被害が大きすぎた。ドイツ政府が、アルザス、ロレーヌには手を出さないから、オーストリアやズデーデンを寄越せ、と言ったら、フランス国民の大半が、諸手を挙げて賛成するだろう。自国が被害に遭わないのなら構わないとしてな」

「本当に厄介ですな」

「全くだ」

 ペタン元帥と土方伯爵は、更に会話した。


「私の見る限り、何とか我がフランスがドイツに陸軍や空軍で対抗できるようになるには、1939年の後半以降になる。それも何とかだ。優位を持って戦えるとなると、更にそれ以降になるな。ああ、勿論、英米日が、フランスを全面支援するというのが大前提だ。何しろ、ソ連というバックがドイツにはいる」

「難儀な話ですな。かといって、日本だって余裕はありません。ソ連の圧力を日本は強烈に受けています。更に満州には、米国からすれば、鉄道や油田といった利権が直接ある上に、日本の陸軍力は大したことが無い、という現実に鑑みれば、米国の支援の一部は、満洲に向けざるを得ないでしょうね。更に、米国の国民の間には、フランスの国民以上に、厭戦気分が蔓延しています。ユーラシア大陸全てがドイツとソ連の手に落ちても、米国が平和であり続けられるのなら、構わないのではないか、という主張が、公然となされています」

 ペタン元帥と土方伯爵の会話の内容は、深刻さを増し、突っ込んだ内容になった。


「ともかく、オーストリアとチェコは、一時的にドイツの手に渡さざるを得まい。そのことに、フランスの国民が憤激して、対ドイツ戦争を叫ぶのなら、まだ何とかなるかもしれないが、おそらく一部の国民の主張に止まって、世論の大勢にはならないだろうからな」

「同感ですな」

 ペタン元帥の言葉に、土方伯爵は肯かざるを得なかった。


「当面は、自分の職務に専念しつつ、第二の世界大戦に備えるしかないだろう。私は、スペインの地で、できる限り頑張ってみる気だ。うまくいけば、いざという時、スペインがフランスに味方してくれるかもしれないからな」

「いろいろ大変でしょうが、成功をお祈りします。私は、日本に帰って、できる限りのことをしてみます」

「もしもの時は、サムライが来援してくれることを期待しているぞ」

「その前に、日本に降りかかる火の粉を払う方が先になるでしょうが」

「確かにな。だが、我がフランスは、パリが落ちようと、フランス本土が制圧されようと戦い抜いて見せる」

 土方伯爵に、ペタン元帥は断言した。

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