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エピローグー2

 アラン・ダヴー中尉が帰国した頃、土方勇志伯爵は、スペインで思わぬ人物と再会を果たして、挨拶を交わしていた。


「久しぶりだな。土方」

「ペタン元帥、お久しぶりです」

 フィリップ・ペタン元帥、言うまでも無く、(第一次)世界大戦におけるフランス陸軍の英雄の一人であり、ヴェルダン要塞攻防戦や最終攻勢では、日本海兵隊と共闘したという、日本海兵隊の組織自体とも縁のある人物である。

 また、2人は、第一次世界大戦末期、ペタン元帥は、ベルギー解放軍の参謀長として、土方伯爵は、ベルギー解放軍の隷下にある日本第一海兵師団(戦車師団)師団長として、直接の親交があった。


「どうして、わざわざスペインの地に」

「フランス政府から、君ならフランコとも右派同士で、気が合うだろう、と言われて、スペイン大使として赴任してきた。お互いに、そう望んだ、というのもあるがな。フランス政府は、右派の希望の星として、担がれる危険のある私を体よく国外に追い出したかった。私自身、そんな気はないのに、右派の希望の星として担がれたくなかったので、この際のスペイン行を希望した」

「そういうことですか」

 土方元帥は、ペタン元帥に問いかけ、それに対する答えを聞いた土方伯爵は思わず笑い、ペタン元帥もつられて笑った。


「それにしても、欧州情勢はきな臭くなる一方ですね」

 土方伯爵は、ペタン元帥の欧州情勢に対する考えをこの際、聞こうと考えた。

 ペタン元帥は、フランス陸軍内に隠然たる力を持っている。

 ペタン元帥の考えを聞けば、フランス陸軍が、欧州情勢をどう捉えているのか、ある程度は分かる筈だ。


「全くその通りだな。ドイツと、そのバックにいるソ連の動きは座視できなくなる一方だ。マジノ線建設が潰れて良かったよ。お蔭で我がフランス軍は機動力のある陸軍を編制できそうだ。ただ、まだまだその準備は不十分で、後、少なくとも2年は掛かりそうだがな」

 ペタン元帥はぼやいた。


 第一次世界大戦後、ヴェルサイユ条約により、ドイツの軍備は、大幅に制限されたが、それによってフランスは安心できなかった。

 ナポレオン戦争後の少子化の流れに苦しんでいるフランスは、ドイツに対して、軍人として動員可能な若年人口では、常に劣勢な状態にドイツ帝国成立以降は、おかれてしまっていたからである。

 それに、第一次世界大戦による大量の死者は、フランス国民に退嬰的な世論を形成させ、独仏国境線に要塞線を築くことで、戦争を阻止しようという意見を台頭させたのである。

 だが、ペタンらは、大反対した。


「全く難攻不落の要塞等、建築不可能だ。東洋の矛と盾の話ではないがね。クリミア戦争でセヴァストポリ要塞が落ち、日露戦争で旅順要塞が落ちたように、要塞と言うのは何れは落ちるものだ」

 ペタン元帥らは、そう言って、独仏国境線に要塞線を築くという、いわゆるマジノ線(1930年当時のマジノ陸相が、強く独仏国境線の要塞線建設構想を主張したことから、独仏国境線の要塞線については、マジノ線と呼ばれるようになった。)建設に反対した。

 独軍やソ連軍に対する諜報活動や、第一次世界大戦末期の戦訓、更に日本が南京事件や満州事変によって得た戦訓を観察したことから、将来の戦争は機動戦が主流になり、戦車や航空機が主役になると、ペタン元帥らは喝破した。


「我々は、英海軍ではないからね。我がフランス陸軍は、優秀な弟子には、師匠と言えども、それなりに敬意を払い、教えを乞うものだと考えるのさ。このスペインでも、日本海兵隊は、我がフランス陸軍の優秀な弟子として活躍したそうではないか」

「はは、全く敵いませんな」

 ペタン元帥の皮肉交じりの言葉に、土方伯爵は笑い転げた。 

 ご都合主義と言われそうですが、史実でも(事情は異なりますが)ペタン元帥は、スペイン内戦終結後にスペイン大使として赴任していますので、史実に準じた行動ということで。


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