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第10章ー3

 私の調査能力不足から、この当時のスペインの売春事情が分かりませんでした。

 それ故、間違っている描写の可能性が大です。

 本当にすみません。

 結局、バレンシアは2日余りの戦闘で、スペイン国民派の手に落ちることになった。

 これには様々な要因が絡み合っていたが、最大の要因は、スペイン国民派の急進撃により、バレンシア市街を防衛するためのバリケード構築等の準備が、ろくに整っていなかったことだった。

 また、バレンシアを防衛する部隊を、かき集めるのにもスペイン共和派は失敗してしまっていた。

 もう少し、バレンシアから離れた地点で食い止められる筈が、スペイン国民派の急進撃の前に、どうにもならずに混乱することが多発したのである。


 それに、寛大な降伏条件(降伏後、武器を自発的に全部引き渡すのなら、防衛軍の兵の生命は完全に保証する等)を、土方勇志伯爵が示したのも大きかった。

 土方伯爵としては、西地中海有数の港、バレンシア港を、マドリード攻略の際の西地中海からの補給路を完全確立するためにも、無傷で手に入れたかったこともあり、寛大な降伏条件を示した。

 充分な防衛準備が整っていないバレンシア防衛軍からしてみれば、渡りに船の好条件だった。


 バレンシア陥落から3日後、アラン・ダヴー少尉は、バレンシア港近くの秘密娼館「饗宴」を探し出し、訪れる決心を固めて、バレンシア郊外に設けられた駐屯地からの外出許可を申請していた。

 駐屯地が、バレンシア市内に設けられていないのは、兵の略奪等を避けるためだった。


 その申請を受けた高木惣吉中佐は、眉を動かして、ダヴー少尉に理由を尋ねた。

「どんな理由だ。明かせない理由か」

「いえ、死にゆく同朋からの最期の依頼を果たすためです」

 高木中佐の眼力に押されたダヴー少尉は、理由を思わず正直に話してしまった。

「まあ、いいだろう」

 高木中佐は、ダヴー少尉の外出を許可した。


 マルランから、細かい住所を聞いていなかったので、秘密娼館「饗宴」を探し出すのに、ダヴー少尉は思わぬ苦労をする羽目になった。

 ダヴー少尉は、秘密娼館と聞いていたので、看板は出ていないと思い込んでおり、「饗宴」という看板を見ても、それとはすぐに気づかなかったのである。

 念のため、と思って、ダヴー少尉が入ったのは、ある意味で僥倖とも言えた。


 ダヴー少尉は、思わずどぎまぎする羽目になった。

「饗宴」は、外見上は、単なる料理屋兼酒場だった。

 ぶっちゃけて言うと、バレンシアで船乗りが下船した際に、ちょっといい酒や料理を楽しむための店にしか、外見上は見えなかった。

 だが、中は完全に違っていた。


 中には何人もの女性が待ち構えていた。

 どう見ても、いわゆる娼婦だった。

 ダヴー少尉は、スペイン外人部隊少尉の軍服を着て、その店に知らずに入ったので、待ち構えている娼婦達にも動揺が走っていた。

 弱ったな、と20歳のダヴー少尉は思った。

 どういう態度を執るべきだろうか、仕方ない、腹を括るか。


「どんな酒と料理があるのか、教えてくれないか」

「はい、こちらがメニューです」

 娼婦の一人が、メニューを差し出した。

 ダヴー少尉は、1年近くスペインにいたので、スペイン語の読み書きは余りできないものの、片言が少し混じるが、何とか日常会話レベルのスペイン語が操れるようになっていた。

 娼婦の一人にメニューを読み上げてもらい、ダヴー少尉は適当な料理と酒を注文し、出てきた酒と料理を楽しむふりをした。

 その様子を見て、ダヴー少尉におずおずと娼婦の何人かが近寄ってきた。


「カサンドラ、というのは居るか」

 ダヴー少尉の問いかけに、20代半ばに見える娼婦の一人が答えた。

「私が、カサンドラです」

 ダヴー少尉の目から見ても、中々の美女だった。

「相手をしてくれないか」

 ダヴー少尉は、カサンドラに言った。

 カサンドラは肯いて、2階の一室にダヴー少尉を誘った。

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