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第10章ー1 スペイン内戦の終結

最終章の始まりです。

 最期の望みをかけたエブロ河での攻勢の失敗、ソ連軍軍事顧問団の引き上げ、「赤い国際旅団」の解散、とスペイン共和派にとって、1937年の9月は、明るい話題無しに終わろうとしていた。

 それに追い打ちをかけるように、スペイン国民派の攻勢は、ますます熾烈になっていた。


 エブロ河での大敗が、スペイン共和派の最後の抵抗の気力を粉砕したようだった。

 首都マドリードへのスペイン国民派への攻撃が、1936年秋に始まった際に、スペイン共和派政府は、マドリードから脱出して、バレンシアに一旦、置かれた後、バルセロナへと移転していた。

 そして、1937年夏にスペイン共和派の支配領域を分断した後、フランコ直卒のスペイン国民派軍は、カタルーニャ制圧を第一目標としていたが、その進撃は遅々としたものだった。


 エブロ河での大敗からの一連の出来事は、スペイン共和派政府側の軍隊の気力を失わせるに十分なものがあったが、フランコは軍人としては余り有能では無かった。

 実際、土方勇志伯爵とたびたび揉め事を引き起こしている。

 カタルーニャ戦線で、フランコに十分な軍事的才能が有れば、スペイン国民派は急進して、10月中にバルセロナは陥落させることができただろう。

 だが、皮肉にも、フランコは、まず第一に政治家であり、軍人としては二流だった。

 そのために、バルセロナ陥落は11月へとずれ込むことになる。

(もっとも、フランコの意志の強さは、超一流と言えた。だからこそ、フランコは、自らが亡くなるまでの30年余り、独裁政権等々の様々な国内外の批判を浴びながらも、それまで不安定極まりなかったスペインの政治を安定させることができたと言える。)


 11月初め、バルセロナは、スペイン国民派の手に落ちようとしていた。

 スペイン共和派政府の要人は、多くがバルセロナから脱出し、フランスへと落ち延びようとしていた。

 これには、多くのスペイン共和派を支持していた市民が従った。

 今や、スペイン共和派の軍隊を支えているのは、スペイン国民派への恐怖のみと言っても過言では無い状態になりつつあった。

 内戦で敗北した後、売国奴、祖国の裏切り者として、拷問の末に殺されるのではないか、という恐怖心を最大の理由として、スペイン共和派の軍隊に所属する兵達の多くは戦っていた。

 だが、その一方で、エブロ河の戦いで投降したスペイン共和派の兵は手厚く遇された、という噂も駆け巡っており、スペイン共和派の兵の闘争心を鈍らせもしていた。


 このような戦況は、結局、11月一杯まで続くことになり、11月末にスペイン国民派の諸部隊は、スペインとフランスとの国境に展開し、国境の管理業務に当たるようになった。

 それまでにフランスとの国境を超えて、スペイン共和派政府の要人と、それを支持する市民等、数十万人はフランスへと亡命して行った。

 

 そして、このことは、当時のフランス人民戦線政府に激震を走らせた。

 フランスは当時、社会党、共産党、急進社会党が協力して、人民戦線政府が成立していたのだが、この大量のスペインからの政治難民への対処について、国民同士も対立し、政府内にも対立が生じた。

 このスペインからの政治難民を保護し、フランスに受け入れるべきか否か、という問題である。

 スペインに帰れ、と追い返すことは難民を殺すのに手を貸すことだ、と主張する者、難民を受け入れる余裕はフランスに無い、と冷たい態度を示す者等が論争した。

 既に、スペイン北部戦線の崩壊に伴い、バスクを経由して多くの政治難民がスペインからフランスへと亡命していたのだが、それに追い打ちが掛けられたのである。

 これにより、フランス人民戦線政府は完全に崩壊の一途をたどる。 

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