第2話
「にしても、アバシリ。君って馬鹿なのかい?」
「へっ……?」
唐突な罵りに思わず間抜けな声が出る。
「ここは、ミラルの森だぜ?君ってやつは……あの気持ち悪くて馬鹿でかい蛾に素っ裸に近い状態で挑むなんて……余程の馬鹿しかやらないと思うんだがなぁ……」
「ミラルの……森??」
「あれっ!?まさか知らないの!?どこの箱入り娘……じゃない箱入り息子なのさ」
別に箱入りじゃないですけど……と言いかけたのをなんとか飲み込んで苦笑いを浮かべる。
聞いたことがない地名、謎のデカイ蛾、装備を固めた謎の男……
「ま……まさか!!」
「うわぁっ、いきなり叫ばないでよ。モンスターに見つかるだろう??」
「すっ、すみません……」
怒られて口を噤む。しかし、口元が緩んで気色が悪い笑みを浮かべる。
【異世界】
きっと……いや、絶対俺が長年憧れを抱き夢を見ていた世界。膨らむ想像。不意に背後から何かが近づいてきているような……気がした。
「あ、あの……アルさん」
「しーっ、黙って。僕が気づいてないわけないだろ、静かに何事も無かったようについてきて」
言われた通りについていく。時折後ろから木々が擦れるような音がする度に俺は情けない声を上げていた。アルさんは一度も俺の方を振り向かず、ただ前を向いて歩いていた。
謎の緊張感に包まれながら歩き続け数十分たった頃、大きな門とその前に立つ門兵が見えた。
「はぁ……」
「おぉー、やぁっと見えたなぁ!!アバシリ、これから思いっきり走るからな」
「……はいっ?」
「あぁ!!君は鈍足だったな!」
そう言って俺のブレザーの襟を引っ掴み走り出した。俺が蛾から逃げていた速さとは比にならない速度で……
「待ってくださいアルレッド様ぁぁぁ!!」
意識が飛びかけていた所に可愛らしい女の子の声が聞こえた。
「僕ストーカーはお断りなのー」
呑気に答えつつも速度は落とさないようだった。
激しい揺れに吐きそうになる。
「アル様っ!!待ってくださいませ!!」
「いーやーだ」
この会話を最後に俺の記憶は途切れた。




