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No.07

 視線をリオン兄達に戻すといつのまにか元の雰囲気に戻っていた。


「殿下! こちらにおられましたか!」


 唐突に恰幅のいいおじさんがユーリに話しかけてきた。そのおじさんはリオン兄を巻き込みながら、話し出す。

 それを一瞥するとテル爺はどこかへと歩き出した。


「私らには、あまり関係ない話だからの。外にでも行くか」


 テル爺はそうこぼすと大きな窓へと向かって行く。窓から見えるのは暖かな日差しが降り注ぐ緑の床と、丸いテーブルが置いてあるのが見える。豪華な服を着ている女の人たちが何人か固まっていて、その中に小さな子供達が顔を覗かせている。そしてもっと遠くの方に見えるのは土がなだらかに盛り上がった部分に子供達が集まって何かをしているのも見えた。

 徐々に大きな窓へと近づくと二箇所ほど大きく開いているのがはっきりと分かる。

 テル爺が窓の境目を超える。ブワッと空気の塊が私に押し寄せた。

 新鮮な空気が、鼻腔をくすぐり、視界が一気に広がる。


「!」


思わず、目を見開いて周りを見渡すと、様々な色彩が私を取り囲む。


「……! ……!」


すごい! すごい!


圧倒的な空気と色彩に気圧されながらも震えるような衝撃を体に覚えた。


「おー……、いい天気だのぉ」


テル爺が空を見上げて眩しそうに目を細めた。

 下を見ると、緑の床が眩しく見えた。触ってみたいけどちょっと尖っているように見えて、少しだけ“コワイ”。

でも、ちゃんとテル爺の足は緑の床についているから別にとても硬いわけじゃないだろうけど……。

 私がじっと地面を見ているのに気がついたのか、テル爺が言葉をかけてくる。


「お嬢ちゃん、下に降りてみるかの?」


「!」


コクリと勢いよく頷くと、テル爺が目元を緩ませながらゆっくりと私を地面に下ろした。

 屋根の中の地面とはかなり違うような感覚がする。硬い……けど、少しだけ柔らかいような? 緑のモノは私の重さでグニャリと曲がっている。足を退けると、またゆっくりと起き上がってくる。

一歩一歩と歩を進めると、同じように緑のモノがグニャリグニャリと曲がる。足をふみ鳴らすと緑のモノはそのまま地に伏してしまった。だが、徐々に戻っているようだ。

目が離せなくなるような魅力をその緑のモノたちから感じた。

テル爺に、緑のモノを指差して首を傾げる。


「ん? それか? それは草というんだ。……そうか、初めてみるのかの」


コクリと頷くと、笑顔のテル爺の顔がわずかに歪んだ。なんで、そう歪むのかわからなくて首をかしげる。

だが、テル爺はなんでもないと首を振って元の笑顔に戻っていた。

この“くさ” をもっと間近に見るためにしゃがみ込んで、指でつついてみる。

……少し硬いような気がする。でも、押していけば指を傷つけることなく折れていく。

 そんな私を後ろから和やかそうに見ていたテル爺が、私の背中をポンと叩く。


「お嬢ちゃん、どうだいあっちの丘の方に行ってみるといいんじゃないかの?」


そう言って指差すのは、遠くの方に見えているなだらかに盛り上がっているところだ。

今も子供達がワーワーと騒ぎながら走り回っている。でも、あの中に入ることができる気がしない……。

テル爺を見て首を振ると、テル爺がそうかと頷いた。


「じゃあ、一緒にそこらへんでも歩こうか」


 そう言って左手を私に伸ばしてくれた。その手をぎゅっと握ると、テル爺がそっと握り返してくれた。


 硬くて大きな、温かい手が私の右手を包んでくれている。私の歩幅に合わせえいるのか、とてもゆっくりとした足取りだ。でも、テル爺の一歩が私の歩幅とは違うので、追いつくために少しだけ足を早めなくてはいけない。

さっきと同じ草がずっと生えているから、じっと地面を見ながら歩いて行ってしまう。

 いつの間にか、地面に私とテル爺以外の影が差している。人間の影ではない、大きな影が、押し寄せる空気の波にゆらゆらと揺れている。

顔を上げると自分よりもテル爺よりも、大きな大きなモノがいくつもそびえ立っていた。


 うわあ!! 大きい!!


思わず“おどろいて”繋いでいる手をクイクイと引っ張るとテル爺が、ん? と目線を合わせてくれる。

繋いでいない方の手でモノを指差す。テル爺が目をそちらに向ける。


「ああ、あれはのぉ、木と言うんだ」


 “き”か。そっか、あの大きなものが木っていうのか。すごいな。

 思わず立ち止まりながら見上げる。木の上に乗っている、丸い形のくさの間から陽の光が漏れ出ている。

地面を見ると、草と木の形が揺れている。

地面に生えている草を取ろうと手を伸ばすが、テル爺と手を繋いでいるからきちんとしゃがめない。

手を引っ張られたのがわかったのかテル爺がこちらに合わせてしゃがみこんでくれた。

なんだ? とこちらを見るテル爺に地面に生えている草を指差してから、木の上に生えている草を指差してから首をかしげる。テル爺はあまり意味が掴めなかったようで私に首をひねってみせる。

もう一度、地面に生えている草と木に生えている草を指差して首をひねる。

テル爺は地面と木を何度か見比べると、ああ、と納得したように目を合わせて来た。


「あれはの、この草と同じものじゃない。あれは、葉っぱだ」


“はっぱ”? 葉っぱ! 同じじゃないんだ!


「お嬢ちゃん、見てごらん。鳥がおるぞ」


 とり?

 テル爺が指をさす方をみると、木の伸びている部分に真っ青なモノが止まっていた。ちょこちょことその辺りを動き回ったかと思えば、両の腕を広げてきから飛びたした。


落ちてくる!


 そう思って思わず立ち上がりそちらの方に駆け寄る。

……だが、鳥が落ちてくることはなかった。

悠々と宙を舞い、私の周りを一周回った鳥は上昇してどこかへと消えて行った。


すごい!!


様々のものが頭を埋め尽くした。広い広い際限を知らない空間と青い鳥がどこまでも自由に飛んでいく様に、言い切れないようなものが溢れ出す。

 じっとくうを見つめていると、後ろからテル爺がそっと側に立つ。こちらをチラッと見ると、私の隣に片膝をついて同じ景色を見るようにくうを見上げた。


「お嬢ちゃん、あの青くて際限のないモノはな、そらと言うんだ」


“そら”。

この何者もが犯しがたい、雄大なモノは“空”というのか。

目から涙が溢れでる。空が歪んで、ゆらゆらと揺れた。

少しの間だけ涙を流しながら空を見上げると、グイッと頰を伝う涙を払う。テル爺はその間何もせずに私を見守り続けてくれていた。

テル爺に顔を向け、手を差し出す。


「ん? どこか行きたいのかの?」


聞かれてコクリと頷いた。

優しく微笑むテル爺は、私の手のひらに大きなその手を重ねると立ち上がった。



今回もお読みいただきありがとうございました!!


今回はエルとテル爺のほっこり回です! ほっこり、しましたかね……?

しかも今回はエルがきちんと外に出ることが初めてと言うことで……。いやあ、良かった! 外に出せて!

次回は新しいキャラが登場します! さて、エルの人間関係が少しずつ広がっていくことに嬉しくもあり、ヤバイなと思う今日この頃です……。

たまに、各キャラの一人称を忘れてしまうことがあったりするんですよ……。他のキャラの一人称と混ざったりね……。

ともかく! 頑張りますので応援よろしくお願いします!


そういえば、少し前に気休めとして『白雪の継母〜白雪をいじめようと思う〜』(題名あってるかな……)を公表しました……。更新が遅いのに何やってんだって話ですけど……。良ければ、読んでやってください!

少しの気休めになるかと思います!


さて、ここまで読んでくれたこと重ね重ね御礼申し上げます!

ではでは、次回また会いましょう!

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