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ヒトメボレ〜君はどこにいるの?  作者: 秋葉隆介
第4章 ふたりで
40/54

第39話〜エスケープ。

R15な表現があります。

軽い陵辱シーンがあります。

年齢の満たない方はまわれ右をお願いします。

苦手な方はスルーをしてくださいな。

 サヨは目を覚ました。

 随分と長い間、そして深い眠りに堕ちていたようで、まだ意識がはっきりしない。茫洋とした視界に捉えられるのは、全く知らない部屋の様子だった。壁も天井もコンクリートが打ちっぱなしの無機質な部屋。そこに一つだけ存在する、マットレスが剥き出しのベッドの上に、どうやら自分が横たわっていることがわかった。

 

 ガチャリ。


部屋に響き渡る金属音と、自由に動かない手足に、自分が拘束されていることに気づかされる。サヨは暫くの間、自分の身に何が起こっているのか理解出来なかったが、意識がはっきりしてくるにつれ、身体の自由が奪われていることに、体の芯から恐怖を感じ始めていた。




 リュウスケは耳を疑った。美月がとても聞き捨てならないことを言い始めたからだ。

「あのコも今頃、お楽しみの最中のはずよ」

「何だって?」

 美月は妖艶な笑みを浮かべながら続ける。

「池内さんだって、今頃は楽しいことをしているはずよ。たぶん秀一とね。まあ、相手は一人だとは思えないけど?」

 信じられない程非道なことを、平然と言ってのける美月。黙りこくってしまったリュウスケに、美月はブラを取り去って、自慢のバストを揺らしながら近づいていく。

「だからもう諦めて、ね? ワタシとしよ? 楽しませてあげるからさ」

 美月はリュウスケの前に跪き、彼の顔をゆっくりと見上げる。が、次の瞬間—彼女の笑みが凍りつく。

 リュウスケは激しい憤怒の表情を浮かべていた。そのまま強烈な憎しみの視線を真上から注がれて、美月は思わず視線を逸らしてしまう。

「君はどこまで俺を怒らせれば気が済むんだい?」

 抑えられた口調が、かえって美月の恐怖心を増幅する。

「サヨちゃんはどこだ……」

 リュウスケは美月の両肩を掴んで揺さぶりながら、強い口調で詰問する。

「サヨちゃんは、どこにいるんだよっ!!」


 その時、勢いよく保健室の引き戸が開かれる。飛び込んできたのは彼の友人の一人、藤川だった。

「リュウスケ、お前なにやってんだ!」

 藤川は驚きを隠せない。何せ目の前では、上半身裸の女が、自分の友達と抱き合っている(ように見えた)からだ。驚くのも無理はない。

「お、お前、どうしてここに……」

 見られたくないシーンを藤川に見られて、リュウスケは動揺を隠せない。それを見て藤川は苦笑いを浮かべていた。そう、彼はある程度状況を理解した上で、この場所にリュウスケを呼びに来たのだ。リュウスケの慌てっぷりを楽しむ余裕があった。

「言い訳は後で聞いてやるから、早くサヨちゃんの所に行け」

 泳いでいたリュウスケの目がスッと定まり、藤川の顔を見据える。

「お前何か知ってんのか?」

「当たり前だ。だからここに来たんだろうが」

「サヨちゃんは… サヨちゃんはどこだっ!」

「高島のところにいるそうだ。場所は、分かるよな? 港の近くにある、無駄にデカい家だ。行けば分かるよ」

「サヨちゃんは無事なのか?」

「残念ながら、そこまでは分からん。無事だといいが……」

 思わず絶句するリュウスケ。不安が顔に表れている。

「だから! ここは俺に任せて早く行けっ! グズグズすんな!」

 藤川は励ますような強い言葉をリュウスケに投げた。

「わかった、頼んだよ。でもな、やり過ぎんなよ?」

 リュウスケは気遣うような笑顔を藤川に残して、保健室から勢いよく飛び出した。


 こんな時まで友達を気遣うリュウスケの優しさに、藤川は複雑な表情を浮かべていたが、自分を睨みつける半裸の女に目を向けると、不敵にニヤリと笑った。

「さあ、続きは俺としようじゃないか、高島美月さん… たっぷり楽しもうゼェ?」

 藤川はそう言って、後ずさりする美月にジリジリと近づいていった。




 リュウスケは駆けていた。

 全速力で走れば、高島の家まではものの5分程の距離のはずだ。何度も頭をよぎる不安を振り払いながら、リュウスケは道を急ぐ。

「リュウスケ!」

 家の前で待ち構えていたのは、アキラだった。

「遅かったな。待ちかねたよ」

 アキラは困ったような表情をしている。その顔に不安を覚えたリュウスケは、勢い込んでアキラに訊ねる。

「サヨちゃんはっ! サヨちゃんはどこだっ!」

「まあ落ち着けって。調べさせたところ、地下室に閉じ込められてるみたいだ」

「無事なのか?」

「多分、な」

「多分って… お前。どういうことだ!」

「だから、落ち着けって!確認したワケじゃないからな、確証はないが多分大丈夫だ」

 アキラは落ち着き払っている。それがリュウスケの不安を少し解いた。

「どうして大丈夫だって言える?」

「どうしてって、お前、大丈夫じゃない方がいいのか?」

「そんなワケないじゃないか!」

 リュウスケのいつになく怒気を含んだ言い方に、アキラは不親切な一言だったと、素直に反省の言葉を口にする。

「悪かった。俺の話を冷静に聞いてくれるか?」

 頷くリュウスケに、アキラは説明を始める。

「サヨちゃんを連れて地下室に入った男は、すぐに部屋から出たそうだ。その後は誰も出入りしてないことは確認済みだ」

「だから無事だっていうのか?」

「そういうこと」

 別の不安な要素もリュウスケの頭の中によぎったが、それを打ち消して、ひとまずアキラの推理に考えを委ねる。

「でもサヨちゃんは、どうやら眠らされてるみたいだ。ぐったりして抱えられるように部屋に入ったそうだ」

「睡眠薬でも飲まされて?」

「だろうな。高島のヤツ、ホントに手段を選ばねえな。怖えーよ」

 アキラは苦笑いを浮かべる。

「で、何で早く助けに行かないんだ?」

 リュウスケはアキラを問いつめる。

「それも俺に考えがある。確実にヤツを抑えるための作戦がな」


 作戦とはこうだ。

 秀一はサヨの目覚めを待って、彼女に手を下すつもりらしい。時間を見計らって地下室に向かうはずだ。そこに向かう秀一の後をつけ、決定的な瞬間に踏み込んで確実に抑える、ということらしい。万が一中から施錠された場合の合鍵も、既に入手済みとのことだ。

 リュウスケは、相変わらずのアキラの思考回路と行動力に舌を巻きながらも、頼もしさを感じずにはいられなかった。

「お、どうやら行動開始のようだぜ……」

 薄ら笑いを浮かべて、地下室へと向かう様子の秀一。二人は気取られないように、距離を取りつつひっそりとその後を追った。




 もう目覚めるころだね。いよいよボクのモノだ。

 覚悟したまえ、イケウチサヨ。

 まあ心配することはない。すぐにボクの虜になるからね。

 さあ、お楽しみの始まりだ!




 カチャリ。ギィィィ… バタンッ。


入り口の鉄製の重い扉が開いて閉まる音がした。


 カラン、コロン。カラン、コロン。


なぜか木製のサンダルのような音を響かせて、誰かがこっちに近いて来る。

 この部屋は、音が必要以上に響くらしく、それが恐怖を呼び起こす。

「やあ、お目覚めかい?」

 その声には聞き覚えがあった。サヨはそれですべてを理解する。

「高島君……」

「会えて嬉しいよ」

 秀一は下卑た笑みを浮かべて、サヨの頬に手を伸ばす。

 サヨは嫌悪感にゾワゾワと悪寒が走るが、気を取り直して秀一に問いかけた。

「なぜこんなことするの?」

「君が言うことを聞かないからだ」

 心底困ったような顔で秀一が続ける。

「少々痛い思いをしてもらってることは謝る。でも、最初からボクの言うことを聞いてれば、こんな目に遭うことはなかった」

「あなたの思うようにはならない、って言わなかったっけ?」

 サヨの反論に、秀一は呆れたような表情を浮かべて言い放つ。

「この状況で、良くそんなことが言えるもんだ。抵抗するなら、もっと辛いことになるよ」

 はっきりと怯えた表情に変わるサヨに、嗜虐心を煽られた秀一は満足げな顔をする。

「おとなしくしてれば、気持ちの良いところに連れて行ってあげるからね……」

 秀一はそう言って、サヨに覆い被さってくる。

 サヨは嫌悪と恐怖で体の底からの叫び声を上げた!


 きゃあぁぁぁぁっ!


断末魔の叫び声。だが……

 それはサヨの『願い』を呼び込むことに成功する。


 リュウスケ君! 助けて!!


入り口のドアが勢いよく開く音が聞こえる。サヨは思わずそっちを見やると、そこには愛しい人の姿があった。


 「そこまでだ、高島っ!」

 雄々しくたたずむリュウスケの姿に、サヨは大粒の涙を流し続けていた。


今日はやや長め。(苦笑)

美月のワナからの脱出と、サヨの救出までの過程を書いてたら、どんどん進んでしまいました。二人の恋路があまりにも順調すぎて書き始めたこの話ですが、思ったよりもストーリーへの入り込み方が深すぎて、気持ちよく書き進んでしまいました。

あと2話ほどで、この話終わらせようと思います。

もう少し、もう少しだけお付き合い願えたらと思います。

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