おまけ ははのばあい
思っていたより仕事が早く終わった。
るんるん気分で家に帰る。これなら子どもの作った昼ご飯を食べられるかもしれない。
鍵を開け、高いテンションのままに玄関の扉を勢いよく開いた。
「ただいまー!貴史、千紗都、風花ー!お母様が帰ったぞう!」
元気よく言った瞬間、ごちん、と如何にも痛そうな音が聞こえて、一拍おいて「お姉ちゃん大丈夫!?」と風花の叫びが聞こえてきた。
「な、なになに!?どうしたの!?」
リビングに駆け込むと、変に落ち着いた様子の貴史に出迎えられた。
「お帰り義母さん」
「ただいま!で、何かあったの?」
貴史の後ろでは、ソファの下で千紗都が額をおさえて悶絶していた。
風花はおろおろと千紗都の頭を撫でている。
貴史がなぜか何も答えないので、私は手っ取り早く結論づけた。
「あー・・・千紗都が寝ぼけてソファから落ちたのね」
違う!と千紗都から反論が飛んだが放っておく。
触れない方がいい気がしたのだ。ただの勘だが。
兄さんが悪い、ふざけんなお前の方が、お兄ちゃんお姉ちゃん落ちついて、などと段々ヒートアップしていくよくわからない口論をBGMに冷めた昼ご飯をつまんだ。おいしい。
家の電話が鳴る。旦那の正史からだ。
「あれ、千花さん?仕事上がったんだね、お疲れ様。僕も早めに上がれそうだから今日は家族で外食にしようよ」
賛成!じゃあまた後で、と即答して電話を切った。
子ども達の意見は聞かない。
家族の団らんは大切だ。
一人で納得しながら、三兄妹の方を見れば、まだ騒ぎ合っている。
千紗都が貴史にクッションを投げつけた。
だが、あっさり受けとめられて悔しがっている。
風花がなだめるが、貴史が更に千紗都を怒らせるので、ケンカっぽいものはまだ終わりそうにない。
うん。
今日も我が家は平和だ。
つたない文ですが、ここまで読んでくださってありがとうございました。
彼ら家族の名前の読み方は以下の通りです。
父 正史
母 千花
兄 貴史
姉 千紗都
妹 風花
風花は再婚後に生まれた子なので家族全員と血がつながってます。