悪役令嬢 ローズ編 saidルイ
sideルイ
ああ、かわいい。
俺はいつものようにうっとりと目の前で微笑んでいるローズを見て思う。
「ねえルイ。私の事、好き?」
「もちろんだよ」
いつだって俺は、完璧な王子の仮面を被っていた。
ローズに今ほどの愛を“一度目の人生″では伝える事が出来なかった。
どんな時でも、俺はローズのことを愛していたのに。
恋に落ちたのは、ローズと初めて会った日だった。
♡♡♡
「ルイ様って、結構やんちゃなのね」
「そうかなあ」
ローズと初めて出会った日、彼女はサラッとそう言った。
それまでは、猫を被った令嬢達としか話したことがなかったから新鮮だっただけかもしれないけれど。
「そっちのが、好き」
その一言に俺は全てを奪われた。
「どういうこと?」
「ルイ様、普段の微笑みより楽しい時の笑顔の方がルイ様っぽい。自然な感じがする」
確かに、いつも“王子″という仮面を被ってニコニコしていたのかもしれない。
「そんな事、言われたの初めてだよ」
ローズの前では、素でいられる、そう思ったのかもしれない。
「ローズ、ありがとう」
「う、うん」
なぜか、ローズの前では普通に笑えているような気がした。
きっと、あれが初恋の始まりだったんだろう。
「これからは、ルイって呼んで。ローズ」
「分かった、ルイ」
ローズが城を去るとき、彼女が自分の部屋に帽子を忘れている事に気がついた。
取りに戻り帰ってくるとローズはレイと話していた。
「レイ様のお兄様、とても面白い方ね」
「そう?」
「ええ、楽しかったわ。じゃあ、また学園で」
「またね、ローズ」
自分の事を話してくれていて半分嬉しく、ローズと同級生で気軽に話しているレイに嫉妬したのか、自分の心がモヤモヤしていた。
「ローズ、帽子忘れていたよ」
「ルイ、ありがとう」
「うん」
彼女の微笑みを見ていると、どうしても笑っていたくなり頑張って微笑んだ。
きっと、レイと微笑んで話している悲しみと嫉妬と自分に笑いかけてくれる嬉しさが混ざって上手には笑えていなかっただろうけど。
ーー今では良い思い出だ。
♡♡♡
一度目の人生は悲惨だったな。
「なんで侯爵家如きが私に話しかけているわけ?」
「す、すみません……」
一度目の人生では、ローズが侯爵家で最も位の高いレイツェルト家のベリー嬢にそう言ったのが王の耳に入ってしまった。
俺は、ローズが俺を愛してくれているのなら悪女でも構わなかったのに。
その事や社交界での態度が時期王妃に相応しくないと婚約破棄させられた。
「バイバイ、ルイ」
でも、違う者が婚約者になっても俺はローズしか愛さないと思っていたが……。
俺との婚約破棄が成立した日にローズはそう言い残して……毒薬を飲んで、死んだ。
すると、なぜかローズと初めて会った日に巻き戻っていた。
ニ度目の人生では一回目の人生で起こったような事態は避けようとした。
悪女にならないよう俺がローズを見張っており、実際ローズは悪女にならなかったが……。
「かわいいね、ローズ」
「レ、レイ様」
女遊びの激しい弟のレイがローズに言い寄っていた。
その後レイがローズの事を本当に好きになってしまって、仕方なく俺はレイを王族から排除した。
するとローズに「やりすぎだ」といわれ、婚約破棄された。
そして、また転生、転生を繰り返し、今に至る。
『おや、お困りですか?王子様。私が助けてあげる』
ーーそう言えば、人生が終わる前に毎回誰かに会っていたような?
「ルイ、私はあなたしかいないの」
まあ、忘れてしまってもいいか。
目の前の彼女が一度目の人生の時の彼女と重なる。
「俺はローズの事、何万回生まれ変わっても愛すよ」
もっと早く、愛をローズに伝えていれば良かった。
完璧な王子様の仮面なんてローズは必要としていないだろうから。
「ルイって私が1言うと10返してくるわよね」
「そう?」
きっと“俺″自身を見てくれているだろうから。
これ以上、ローズとの幸せな日々を壊したくない。
だからどうかーーローズが俺の元から離れませんように。
決意を固めた王子様の手には青く煌めく指輪が光っていた。




