表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『犬神物語』〜転生少女と不思議な絆〜 《改稿版》  作者: 犬神 匠
第四章 闇を裂く絆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/15

第13話『犬神に選ばれし者』

犬神神社の鳥居が見えてくると、ゲンキは嬉しそうに「ワン!」と一声あげて、ぴょいっと先に駆けだした!


「わっ、ちょっと待ってよ〜、ゲンキ〜!」


犬神神社の鳥居を抜けた、その瞬間——


ふっと、空気が変わった。


さっきまで聞こえていた車の音も、遠くの話し声も、

まるで水の中に沈んでいくみたいに、すぅっと遠ざかっていく。


風の匂いが変わる。


夕暮れの空気の中に、どこか懐かしくて――

でも知らない匂いが混ざっていた。


(……え?)


身体の奥が、ざわりと波打つ。


ヒカリと手を重ねたときに感じた、あの不思議な感覚が――また静かに広がっていく。


そして気づけば、鳥居の向こう側だけが、

まるで別の世界みたいに静かに揺らいで見えた。


私は一歩足を踏み入れて、周りをきょろきょろと見渡す。


「やっぱり……なんか、空気がピリッとしてる気がする……?」


そのとき、不意に視界の端に違和感が飛び込んできた。


「……あれっ?」


本殿の脇。

木々に半分隠れるみたいにして、小さな祠がぽつんと佇んでいた。


「こんなところに……祠なんて、あったっけ?」


眉をひそめながら、そろ〜りそろ〜りと祠に近づいていく。

見覚えがないはずなのに、なんでだろ……なんか、すっごく懐かしい気持ちになる……。


「ここ……なんか、すごく大事な場所な気がする……」


言葉にできない感覚だけが、ずっと身体に残っていて——


「やっぱり気づいたみたいね」


その瞬間、やわらかな声が背後から聞こえた。


「ひゃっ!?」


慌てて振り返ると、そこにはヒカリとシロが立っていた。


「ヒカリっ!? シロまで!? ど、どうしてここにいるの〜っ!?」


ヒカリはふんわり微笑んで、こっちを見つめてる。


シロは夕暮れの風に毛並みを揺らしながら、いかにも意味ありげに近づいてきた。


……なんか、急にラスボス感すごいんだけど!?


《フフ……このときを待ちわびたぞ、犬神千陽よ》


「えぇぇ!? なんか始まった!?」


ヒカリは祠に目を向けながら、静かに言った。


「あなたを導くためよ」


すると、シロがゆっくり前へ出た。


《犬神千陽よ――

目覚めの刻は、すでに訪れている》


ゆっくり目を細めながら、

シロは静かに続けた。


《結界を繋ぎ直さねばならぬ。

今、“境界”は少しずつ綻び始めている――》


夕暮れの風が、ざわりと木々を揺らす。


《このまま均衡が崩れれば、やがて深淵の闇は境界を越え、この地を呑み込むだろう》


(うわぁ……これ、理系派の隆之が見たら失神しちゃいそう……)


「ちょ、ちょっと待って待って待って!?

急に話のスケールがファンタジーすぎない!?」


私は両手をぶんぶん振りながら、慌ててシロへツッコんだ。


「つまり……この祠がヤバくなったら、町も危ないってこと!?」


《ふっ……。

貴様には、まだ言葉の真意までは届かぬようだな》


「そーいう回りくどい言い方やめてよ〜っ!」


ヒカリが小さくくすっと笑った。


「シロは昔から、大事な話ほど難しく言いたがるのよ」


肩をすくめながらそう言うと、ヒカリは静かに祠へ視線を向けた。


「今朝、先生が話していたでしょう?

百年前の大災害のとき、日向町だけがほとんど被害を受けなかったって」


夕暮れの風が、もう一度木々を揺らす。


「……この町は、ずっと護られてきたの。

犬神様の力によって」


その声は静かだった。

なのに、不思議なくらい耳に残った。


「だけど今、その力が弱くなり始めている。

このままだと……“境界”が崩れるかもしれない」


「えぇっ……!?

じゃあ、この祠ってめちゃくちゃ大事なやつじゃんっ!?」


「そのとおりだ、犬神千陽よ。

貴様は選ばれし者——今こそ、試練のときだ!」


「いやいやいや、ちょっと待って!?」


私は思わず両手をぶんぶん振った。


「なんでそこで“選ばれし者”になるの!?

なんで私じゃなきゃダメなのっ!?」


ヒカリは静かに私を見つめる。


「……確信したのは、あの時だった」


「え……?」


「あなたと手を繋いだとき……。

犬神さんも、何か感じてたんじゃない?」


その瞬間、あの日の感覚がぶわっと蘇る。


身体を駆け抜けた、不思議な熱。

頭の奥に流れ込んできた、知らない神社の景色。


「……あれって……」


思わず息をのむ。


胸の奥がざわざわして、さっきまでの冗談みたいな空気が、少しずつ現実に変わっていく。


「し、試練って……何をするの?

まさか、この祠の中に入ったりする感じ……?」


シロの前足がふわりと動くと、

空間に淡い光が走り、静かに一つの“かたち”が現れる。


浮かび上がったのは――白銀の首輪。


月の光をまとったような、澄んだ輝きがゆっくりと空中を漂っていた。


よく見ると、その首輪には四つの刻印が浮かび上がっていて、どれも静かに、でも確かな存在感を放っていた。


「……え?」


《犬神千陽よ、これを貴様に託す》


「ちょ、ちょ、まっ……なんで私が首輪!?!? 人間ですよ!? ほら見て、この手足! 二足歩行!!」


思わずその場で、くるっと一回転っ!


スカートのすそがふわっと広がって、


「ほらほらっ、ねっ? わたし、完全に人間スタイル!!」


って、ちょっと必死にアピールしちゃう。


しかし、シロはすっごい真顔で言った。


《これは犬神神社に伝わる秘宝――“犬神の首輪”。

貴様がそれを身に纏うとき、眠れる力は再び目覚めるだろう……》


「……いやいやいや、どー見ても犬用だよコレ!?

ゲンキにぴったりサイズだよ!?」


私はゲンキの方をチラッと見る。


「ゲンキにつけてもダメ〜?」


私は首輪を持ったまま、ゲンキのほうを見る。


するとゲンキは――ぷいっ。

あからさまに顔をそらした。


「えっ」


耳がぺたんと下がって、なんとも言えない微妙なお顔。

しかも、私と目が合った瞬間――


そろ〜り。


そろ〜り……。


じわじわ距離を取り始めた。


「ちょっ、なんで逃げるの〜っ!?」


思わず声を上げると、

ゲンキは「え、ボクは遠慮しときます〜」って顔のまま、さらにすっと視線を逸らす。


……もう、笑うしかなかった。


《フッ……逃げるか、犬神千陽よ》


「逃げてないってば〜!!」


ヒカリは微笑みながら「でも、きっと犬神さんになら似合うと思うわ」とか言ってくるし!


「もう……これが試練ってやつなの!?」


私はしぶしぶ首輪を受け取った。


――その瞬間。


じんわりとした温かさが、

指先からゆっくり身体の奥へ広がっていく。


「……あれ?」


不思議だった。


初めて触れたはずなのに、

理由の分からない安心感が広がっていく。

こんな不思議なこと、現実にあるわけないのに。


(なんで、この首輪……

こんなに落ち着くんだろう……)


頭の中がぐるぐるして、現実感がどんどん遠くなっていく。


それなのに、気づけば私はヒカリの横顔を見つめていた。

その横顔は、どこか静かで……

この場所の空気に、最初から馴染んでいるみたいだった。


「ねぇ、ヒカリ……あなた、いったい何者なの?」


気づけば、その言葉が口をついていた。

ヒカリは静かに、でもどこか優しげに答える。


「私は……あなたと同じ。

“犬神に選ばれし者”――そう呼ばれる存在よ」


その瞬間――何かが、静かに揺れた。


「……私と、同じ……?」


ヒカリの言葉は優しいのに、

まるで遠くから聞こえてくるみたいで、少しだけ寂しく感じる。


「じゃあ、ヒカリ……あなたの本当の正体って……?」


問いかけた声は、自分でも分かるくらい震えていた。


だけどヒカリは何も答えない。


ただ静かに――

私を見つめ返していた。


……まるで、“答えを知る覚悟はある?”って、

試されているみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ