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命の使い道 ~残された寿命を、きみたちへ~ 元勇者と五人の孤児  作者: @HIKAGE
第二章 底の底からの出発

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幕間 Subject Y

ルクサーン王国の東辺、森の息吹が絶え間なく響くエルフの集落。

リコリスの花びらと名づけられたフタリナ村――そこで私は産まれ育った。



他のエルフたちと同じように、静かに時を重ね、穏やかに生きてきた。



やがて、悠久の時を刻む川の流れのように、私もまた恋に落ち、そして愛した。



私たちエルフの長い命において、子を授かることは稀有な奇跡だ。もしその奇跡が訪れたなら、その喜びは言葉を超え、胸を焼き尽くすほどに強い。



まるで、これまでの無数の季節すべてが、この一人の子のためにあったかのように。



だからこそ――その子が忌み子として生まれたのなら。



多くのエルフは、その苦痛に耐えられはしない。



私と同じように。



村では、古くから伝えられてきた。

生まれ持った属性の色が、その髪に宿ると。



後天的な魔法習得を思えば、それは迷信に過ぎないと、誰もが知っている。



だが、掟を変えることはできない。



黒い髪、水色の瞳、短くひしゃげた耳。

これは、禁忌と呼ばれる子供の特徴だ。



私の子供が取り上げられたとき、産婆をしてくれた母の顔が青ざめていた。

母は、『よく、がんばったね』とそれだけを言った。



生後三か月―― 私がこの子と一緒にいられた時間。



いや、違う。エルフは胎内で2年もの間、子を抱える。



2年と3か月


愛を注ぎ込んだ私のすべてを、今日、この『箱』に入れなければならない。



どんなに、お願いしても、どんなに説明しても。



慰めの言葉しか返ってこなかった。



他の家族も、村に住めなくなると、そう告げられた。



『箱』に入れ、私たちの先祖の墓前にある、底の見えない谷。



そこに落として、この子の属性である『闇』へと還す。



それは、親が自らの手で行わねばならない儀式。



私は両親から、参加を禁じられた。


多くの母が、『箱』とともに谷に身を投げてしまうからだと。



夫は、優しく強い人だ。



愛している。愛されている。

もちろん、彼もこの子を。



だが、彼はきっとやり遂げるだろう。

私のために。





その日の朝、私は両親と夫に告げた。



心を決め、谷底に落としたことを。



これからも、ともに強く生きようと。



彼らは私を抱きしめ、頭を撫で、泣いてくれた。




挿絵(By みてみん)




――嘘だ。



村の外れの森にある、家よりも大きな赤耳オオキノコ。



幼かった私が、一人で作り上げた秘密の部屋。



そこに、『箱』を置いた。



『開ければ邪悪な闇が村を滅ぼす』



その言葉が、私に箱を開けることを拒ませた。



ほんのかすかな隙間から、乳を湿らせた布を差し入れる。



「ごめんなさい。大丈夫。ここにいるよ。」



この子にはなんの罪もない。


この子を出してあげられない。


この子を守ってあげられない。



誰に見つからないように、お願いをする。



「ごめんなさい。お願いだから……声を出さないで。」



毎晩、毎朝、その隙間に向かって囁き続けた。



子ができたとわかった、あの日から。

もう、私の口からは愛の言葉しか出てこないと思っていた。



なのに今、私の口からこぼれるのは、謝罪ばかりだった。

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