33 温もり
しばらく、空を見上げていると光の粒子が少なくなり月は雲に隠れ雪が降り出した。
泉の周りを飛んでいた光の粒子は無くなり、金色に変化したカップもくすんだ銀に戻っている。
中に入っていた水も、無色透明になり青く輝いていた痕跡すらない。
「幻想的な光景でしたね」
カップを拾って鞄にしまっている私を見てヴォルフ様は頷いた。
「魔術の一種なのか、精霊なのか・・」
「まぁ、元に戻ったのだから良かったです。帰りましょう」
「そうだな」
ヴォルフ様は微笑んで、私の手を取って歩き出した。
久々に感じる暖か温もりに嬉しくなり、ギュッと手を握り返した。
雪が積もる夜道は暗い。
ランプに火をつけようとして、ふと私の手を繋いで歩いているヴォルフ様を見上げた。
「暗くないですか?」
「クレアよりは暗闇は良く見えると思うが」
「狼の血ですかねぇ」
「さぁ」
あっという間に大ババ様の家まで戻ると、家の外でリリアンヌさんとコーディさんが手を振って迎えてくれた。
「おかえり!無事でよかった」
リリアンヌさんに抱きしめられて、コーディさんは元に戻ったヴォルフ様を見て飛び上がって喜んでいた。
「多分泉のあたりだと思うんだけれど、キラキラ輝く光が見えたから成功しているんじゃないかって大ババ様が言っていたけれど、その通りだったな」
ヴォルフ様の背中を叩いてコーディさんが言った。
「で、キスして水を飲ませたのかしら」
ニヤリと笑うリリアンヌさんに私は顔をしかめる。
「狼に無理やりキスをさせられました」
ザラザラした舌を思い出して背中がゾゾッとする。
リリアンヌさんとコーディさんはヴォルフ様を一瞬みてから大笑いをした。
「でも、元に戻って良かったよ。どうやって水を飲んだかは聞かないけれどね」
笑いすぎて出た涙をぬぐいながらコーディさんはまたヴォルフ様の背中を叩いた。
「自業自得よ。昔、リリアンヌちゃんの目の前で人に噛みつくところ見せれば嫌になるのは当り前よねぇ。そのあとも噛みついているし」
リリアンヌさんに言われてヴォルフ様はため息を付いた。
室内に入ると大ババ様とドロシーさんがニコニコして待っていた。
「無事もどったようだな。よかった」
「人をやっと幸福にできたわ。これで私の心も救われる・・・」
ドロシーさんの呟きにコーディさんが複雑な顔をした。
「いやいや、もとはと言えば全部ドロシーさんのせいだよね」
「そうよ、ザールさんなんておかしくなって死んじゃったし・・・。これからドレスをどこで作ればいいのよ」
リリアンヌさんの嘆きにもコーディさんは若干引いている。
「ザールより、ザールに殺された少女が一番の被害者じゃないか。全部ドロシーさんのせいだと思うし・・・」
「みんなを幸せにしたかっただけなのに・・・私の魔力は完璧だったわよ」
ドロシーさんの耳を大ババ様は引っ張った。
「痛い」
「すべてお前のせいだ。もう100年ぐらい村で修行させるしかないな」
「そんなぁ、100年も村から出られないなんて」
嘆いているドロシーを見てヴォルフ様は大ババ様に向き合う。
「報告をしないといけないのだが」
「あーそうだった。チョコレートを調べても薬や麻薬の成分出ないからギレン君がこのままだと犯罪者になっちゃうよ」
コーディさんが言うと、ドロシーさんは偉そうに腕を組んだ。
「どれだけ調べてもわからないわよ。魔法をかけたのだから」
「魔法なんて、報告書に書いてアーモットさん納得するかな」
コーディさんはヴォルフ様を見た。
「魔女が居ることを伝えていいか」
ヴォルフ様は大ババ様に聞く。
「私から謝罪をしておこう。ついでも王にも報告するからお前さんは何もしなくていいよ」
王という単語をさらりと言われてコーディさんと私、リリアンヌさんは固まった。
「王様も知っているってこと?」
リリアンヌさんがコーディさんに囁いている。
「そうみたいね・・・。王様って俺たち以外にも化けれる人が居ることも知っているってことだよね」
「それを言わないのは凄いわねぇ」
「王様だからね」
コーディさんの言葉にリリアンヌさんも私も関心して頷いてしまった。




