14話「熱血ブートキャンプ」
子供たちを真夜中の森の中に放置してから七日が経った。
子供たちはなんやかんやと協力しながら一度も俺に『直接的』には助けられずに生き延びてきた。
回復薬もちょこちょこ補充させてあげたしね~。
ちなみに回復薬ってかなり万能であれを飲んでれば脳が回復でもされるのか、寝ずに行動が出来たりする。
だから子供たちに俺は寝ないように命令した。寝るのは精神が参ってからもしくは死にかけてから、と。
改めて鬼畜だなぁ、と思う。
そして、そんな死にかけを何度も体験させると、やはり人間は成長するらしい。
七日後の現在、子供たちは凄まじい成長を遂げていた。
原因は言うまでもなく俺による強制レベリングの結果だ。
ネット小説あるあるで異世界はゲーム世界の下位互換、というのがあるがこの世界もそのルールに則っているらしくレア度五の武器は凄まじい力を発揮した。
そのおかげで子供たちは普通なら絶対に傷すらつけれない大型の熊系魔物をスパスパ斬ることが出来ていた。
しかも最初の頃は絶対に一体ずつ、しかも動きののろいやつしか送りださなかったので比較的安全なレベル上げだった。
もちろん後半の三日ほどはみっちりガッツリ戦闘経験を与えましたが。
七歳であろうと容赦なく与えましたが。
なんなら一対一になるように誘導させていただきましたが。
………………あれだ、これも愛の鞭的なアレだ。決して命がけで戦っているあの子たちを見て『お~、自キャラが強くなってるみたいで楽しいわ』なんて言っていない。
…………忘れよう。いいんだ、楽しかったし。
ともあれ、そうして俺の熱血ブートキャンプは終了した。
「おっすおっす~」
んで、キャンプも終わったことだし、開始の時と同じ真夜中に俺は子供たちを迎えに来た。
子供たちはそれぞれの武器を片手に木を背もたれにして身を休めていた。俺が声をかけたことで一瞬で戦闘態勢に移行したが。
「…………何のよう?」
全員がじりじりと包囲網を作っている中、スリの少年――カテフが問うてきた。
酷い警戒のされようだ。一度こうやって襲撃しに来たこともあるから仕方ないけど。
結果? もちろんボコボコにしてやりましたよ。ゲームとはいえ実際に戦ってきた俺から見て隙に見えたところばかりを攻撃して、ね。
だが今回は違うため、両手をあげてヒラヒラと振る。
「違う違う。お前らは時間の感覚がないだろうけど、もう一週間経ったんだよ」
そう言うと子供たちの動きがぴたりと止まった。
ちなみに俺の言葉に驚いてではない。包囲網が完成したからだ。
カテフは俺の目の前で長剣を青眼に構え、油断を見せず考えにふける。
やがて、何か心の中で得たのかニヤッと笑った。
あの華奢で、両性的な容姿をしていて、どっしりと構えながらも不安げな目を隠せていなかったカテフが、ニヤッと不適な笑みで。
「………………なるほど、最終試験ですか」
そして言ったカテフの答え。
「は?」
意味分からん。
しかし俺の疑問の声など聞こえなかったかのようにカテフは続ける。
「ボクたち、いやオレたちがこれからも『師匠』の訓練を受けれるかどうかを試す試験」
一人称まで変えちゃって。
どうやら極限まで追いつめた結果、強さと引き替えに性格を歪めてしまったようである。
てか師匠ってなんだよ。イヤな気はしないけどさ!
だがそれよりも俺はカテフの台詞に疑問を抱いた。
「え、ちょ、お前らまだ俺の訓練を受けたいの?」
「もちろんです! あんな素晴らしい訓練がありますか?! 死を間近に感じることで精神力を付け、さらにあのすごい回復薬による回復で極限まで精神をすり減らす。そして途切れぬ魔物との戦闘。上がる難易度。増える魔物!」
回復薬に危ない成分でも含まれてたのかな? あのデタラメな性能を考えるとないとも言い切れないから困る…………
俺はカテフの追い込まれすぎてハイになっちゃってる状態に身を引きながらそんなアホなことを考えていた。
だからだろうか。
「やっ!」
「っ! っと」
俺は後ろからの攻撃にギリギリで横へ飛び、回避した。
ギリギリの時間があれば回避は余裕ですので。
「おっ」
そう思っていたら、俺が避けた先で待ち受けていたのは放たれた矢だった。見事な連携。
今度はスウェーで避ける。
いやはや、子供たちの連携はすごいな。
こんな短時間でここまで連携できるなんて。
それからも子供たちの怒濤の攻撃は続いた。
それぞれの武器の持ち味を活かした立ち回りに型にハマらない――そんなに武器の振り方とか詳しくないけど――自由な武器の使い方。
子供たちが生き残るために、必死で習得した技の数々。
さらによく見てみれば全員の体が一回り、いや二回りほど大きく成長していた。急激なレベルアップに体が適応しようとしているのだろう。
さらに子供たち個人を観察していくと、あのエルフの少女なんかは無詠唱で、しかもエルフが苦手なはずの火の魔術をポンポン放っている。
獣人の子も四つん這いで、やたら大きな爪を細かく俺に当てようと地を這っている。
成長したな~、やっぱ育成ゲームはこれくらいの期間で目に分かるように強くならないと。
最近のゲームではやたら長期で少しずつ育てていくのがあるが、俺の場合パッとやってズガンッと成果を出したい派だから。
う~ん、こういうところが子供と言われるのだろうか。子育てとか絶対向いてないや。
俺は次々と俺に向かって放たれる攻撃を避け続け、頃合いを見て一人ずつ沈めていく。
所詮付け焼き刃の連携であるし、実際に体験したドラゴンのファイヤーボール弾幕の方が避けるスペースは段違いに少なかった。
そしてぴったし十秒後、俺は全員の意識を無事刈り取ることが出来た。
精神的にもまいっていたらしく、すぐに気絶してくれたぜ。
極一部に命まで刈り取られそうになってたけど、そこはポーションで治した。割と危なかった……
「さて…………」
俺は目の前に広がる死屍累々たる様相を見て考える。
予想外なことにこいつらは俺の訓練をまた受けたいと言ってきた。
そして俺もまた子供たちを育てることで自キャラが強くなっていくような、そんな満足感を得て結構楽しい思いをしている。
となれば、答えは一つしかないのだが…………
「どうしよっかな~……」
ぶっちゃけた話、この一週間俺自身も結構気を張っていてなかなか休めなかったのだ。
途中で強めの使い魔を召喚して交代するなど少しだけ休憩していたが、結局自分で見ていないと心配になりほとんど起きていた。
そのことを思うと、そう簡単にはOKと言えない。
「…………ん?」
訓練中の疲労感と訓練後の満足感を天秤に掛けてどうしようか~と迷っていると、俺の気配察知範囲に何かが侵入してきたのを感知した。
最後の試練的なものでここらへんの魔物は全員子供たちにぶつけたはずなんだが…………
「……よし、ちょっと見てくるから子供たちをよろしく」
「バウッ!」
気になっちゃったものは仕方ない。
というわけで、子供たちのことは使い魔の『アサシンウルフ』に任せて俺はそちらへと向かっていく。
アサシンウルフはその名の通り狼だ。
全身真っ黒な全長二m半くらいの。かなりでかい。なお、俺が乗っても大丈夫だ。
木々の隙間を低姿勢で縫うように軽く駆ける。
その速さは地面と目線が近いこともあって体感的にはかなり速い。電車と同じくらいだ。
しかしそんな速さの中でも俺は木にぶつかったりなどしなかった。むしろ超速世界が見えすぎてびっくりだ。
そんな新しい発見に気づくと、俺は既に反応のすぐそばまで来ていた。
俺はすぐさま音を出さないように、木や地面を巧みに使って速度を落とすと木の上に飛び乗る。
そして木の中程まで登ってからゆっくりと、枝と葉の隙間を使って気配察知に反応したものを見た。
それを見て俺は徐に手で唯一肌が露出している目元を覆う。
「マジか~。今更だけど、マジか~」
俺が見たもの。
それは何かを探すように進む、四人の女の冒険者たちだった。




