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実幸の家はがらんとしていた。段ボールの箱がたくさんあり、家具という家具があまりない。引っ越しが多いという紫原家には当たり前のことかもしれないが、高校生という色気のかけらもない家は正直驚いた。
「で?」
「ん―――?」
「泊まるの」
半ばあきらめたような口調だが真希にとっては絶好の機会である。というか、無理やりでも泊まってやろうと考えていたのだから、反対を口にはしない。
「もちろん。床でいいからね~」
えー、と実幸は言っている。それに少し笑い人気のないこの家について考えた。
親。それは、実幸の味方。どんな時でも一緒に居られ、安らぐことのできる人物。
ひんやりとしているソファーや家。確実にこの家には人がいなかった。実幸は一人で寝て、起きて、そしてふらりと帰ってきた親に目もくれず、全てを話せない友達のいる学校へ向かっているのだろうか。窮屈で、悲しく、寂しい。絶対にありえないと思える環境が、自分の親友に、目の前で、行われている。その事実にショックを受け、そして確実な自分の無知さを知る。
「真希、風呂入る?」
「いいよ、どっちでも。実幸は?」
「明日休みだから朝済ませようって思って。今日、疲れたし」
そう言って力なく微笑んだ。
きっと親からのプレッシャーがあったはず。高校受験の時なんてメールの一つや二つを送れなかった自分に腹が立つ。それでも、気丈でいる実幸は、強いと感じた。自分と離れていて、自分と近い存在だと思った。
自然と息が漏れる。それが安堵でなのか、自分への無知さゆえなのか、実幸のおやにむかってなのか、実幸に対してなのかはわからない。
「真希、どうしたの?」
どうやら今のものをため息と思ったらしい。それならば、と
「べっつに~! ただ、実幸の家にきて実幸を怒る気力がパーってどっかに消えちゃった。早く寝て、明日ここら辺案内してよ。明日暇なんでしょ~?」
少し甘えたような声を出す。実幸の顔をまともに見れていない自分がいた。
少しの間があき、実幸は少し困ったような。しかし、その約束を楽しむような声で答えた。
「うん、いいよ」
その声を聴き、真希は精いっぱい微笑んだのだ。
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