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六話

最初の授業は、思っていた以上に現実的なものだった。


異世界。


魔法。


王城。


女王。


禁忌召喚。


昨日から修司の周囲に並んでいた言葉は、どれも現実離れしていた。だが、セリアが卓の上に並べたものは、そのどれとも違っていた。


硬貨だった。


小さな革袋から取り出されたそれらは、丸卓の上で鈍い音を立てて並べられていく。


銅色の小さな硬貨。


それより少し大きな銅貨。


銀色の硬貨。


さらに大きく厚みのある銀貨。


金色に光るもの。


重そうな大きな金貨。


淡く白い光沢を持つ硬貨。


そして、最後に置かれた黒い硬貨。


修司は思わず身を乗り出した。


「本当に黒いんだな」


「黒金貨ですね」


セリアが答える。


「日常生活で目にすることは、まずありません。国家間取引、大貴族の財務、王室金庫、希少な遺物の売買などで扱われるものです」


「それ、普通にここに出して大丈夫なのか?」


「これは見本用です。実際の支払いには使えません」


「見本でも怖いんだけど」


修司がそう言うと、杏奈も黒金貨を見つめながら小さく頷いた。


「見た目だけでも、明らかに他と違うわね」


「黒金貨には特殊な魔力刻印が施されています。偽造防止のためでもありますし、保管記録を追いやすくするためでもあります」


「魔力刻印」


修司はその言葉を繰り返した。


やはり、この世界では金にも魔法が関わっているらしい。


セリアは書板を横に置き、硬貨を順に指し示した。


「まず、こちらが銅貨です。最も小さな単位で、庶民の日常でよく使われます。簡単な屋台の食べ物、井戸や共同施設の使用料、小物の購入などに使われることが多いです」


「銅貨が一番下」


修司は確認するように言った。


「はい。そして、こちらが大銅貨です。銅貨十枚で大銅貨一枚です」


「十枚で一つ上か」


「基本は十枚ごとに一つ上の硬貨になります。大銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で大銀貨一枚。大銀貨十枚で金貨一枚。金貨十枚で大金貨一枚。大金貨十枚で白金貨一枚。白金貨十枚で黒金貨一枚です」


修司は黙った。


杏奈はすぐに理解したようだったが、修司の方は途中から少しだけ目が泳いでいる。


杏奈が横から言った。


「十進法だから、仕組み自体は分かりやすいと思う」


「仕組みは分かる。覚える量が多い」


「生活で使うのは銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨くらいでしょう?」


杏奈がセリアを見る。


セリアは頷いた。


「はい。一般的な生活ではそのあたりが中心です。金貨以上は大きな買い物や商取引、報酬、賠償、貴族関係の支払いなどで使われます」


「じゃあ、まずは銅貨から大銀貨まで覚えればいいのか」


「そうですね」


修司は少しだけ安心したように息を吐いた。


「それなら何とかなる」


「後で確認するから」


杏奈が言う。


「すぐ試験にするのやめない?」


「忘れる前に確認した方がいい」


「正論が強い」


セリアは小さく微笑んだ。


「実際に手に取っていただいて構いません。ただし、黒金貨と白金貨は見本とはいえ高額貨幣ですので、卓の上でご確認ください」


「触るだけで緊張するな」


修司はまず銅貨を手に取った。


想像していたよりも軽い。日本の硬貨と似ているようで、まるで違う。表面には王家の紋章らしき図案が刻まれ、裏面には穂と剣を組み合わせたような意匠がある。


「これ、王国ごとに違うのか?」


「はい。貨幣の形や刻印は国によって異なります。ただし、主要国家間では重さと金属量に基準があり、両替商や商会を通じて交換できます」


「じゃあ、ローディスの金を持ってセビリア帝国に行ったら、そのまま使えない?」


「場所によります。国境近くや大きな商業都市では受け取られることもありますが、基本的には両替が必要です。特に政治的に関係が悪い国では、そのまま使うと警戒される場合があります」


「金だけでも国境あるんだな」


「あります」


セリアは静かに答えた。


「貨幣は国の信用そのものでもありますから」


その言葉に、杏奈が少しだけ反応した。


「信用」


「はい。硬貨そのものの金属価値もありますが、それ以上に、どの国がその価値を保証しているかが重要です。偽造が多い国、内乱が起きている国、財政が不安定な国の貨幣は、他国では低く見られることがあります」


「思ったより経済の話だな」


修司が呟く。


「生活には関わります」


杏奈が言った。


「財布の中身を間違えたら困るでしょう」


「昨日から杏奈が生活感強い」


「生きるために必要だから」


「はい」


修司は大人しく頷いた。


セリアは次に、小さな木箱を取り出した。


中には薄い板状のものが入っていた。金属とも木とも違う。淡い灰色をしており、表面に細かな紋様が刻まれている。


「こちらが、身分証の見本です」


修司と杏奈は同時に目を向けた。


「カードみたいだな」


修司が言う。


「カード、というものが何かは分かりませんが、携帯しやすいよう板状に加工されています」


セリアは見本を卓の上へ置いた。


「ローディス王国の身分証には、氏名、出身地、登録地、発行元、発行日、身分区分などが記録されます。ただし、貴族や軍人、商人、職人など、所属によって記載される情報は異なります」


杏奈がすぐに質問した。


「私たちの場合はどうなりますか」


「お二人は異界から来られたため、通常の出身地を記載できません。女王陛下の裁可により、出身地は異界、登録地はローディス王都、身分区分は王国保護客となる予定です」


「王国保護客」


杏奈が言葉を確かめるように繰り返した。


「それは、どのような立場ですか」


「正式な国民登録ではありません。罪人でも、捕虜でも、奴隷でもありません。王国が一定期間、身元と安全を保証する客人として扱います。ただし、貴族身分ではありませんので、貴族としての権限はありません」


「自由民に近い?」


「扱いとしては近いですが、王城保護下にある特殊な立場です。王都で宿を取る、物を買う、学ぶ、護衛つきで移動する、といったことは可能になります」


修司は見本の身分証を眺めた。


「これがないと、宿にも泊まれないのか?」


「必ずしも泊まれないわけではありません。小さな村や辺境では身分証の確認が緩いこともあります。ただ、王都や大都市では提示を求められることが多いです。特に治安管理の厳しい区画や、商業取引、雇用契約、長距離移動の手続きでは重要になります」


「なるほどな」


修司は少しだけ眉を寄せた。


「俺たち、何も持ってないもんな」


「はい」


セリアは遠慮せずに頷いた。


「そのため、最初に身分証を整える必要があります。身分証がなければ、王城を出た後の生活が非常に不安定になります」


その現実的な言葉に、修司は少しだけ黙った。


異世界で生きる。


そう言ったばかりだった。


楽しもうとも言った。


だが、楽しむ以前に、身分証が必要なのだ。


金が必要で、常識が必要で、泊まる場所が必要で、他人に自分が何者かを示すものが必要になる。


それはどこの世界でも変わらないのかもしれない。


杏奈が静かに言った。


「一時身分証の発行には、何が必要ですか」


「お二人の氏名の確認、魔力反応の登録、女王府の保証署名、近衛騎士団長の立会い記録が必要です」


「魔力反応の登録?」


修司が聞き返した。


「はい。身分証には本人確認用の魔力紋を刻みます。指紋のようなもの、と説明すれば近いでしょうか」


「指紋は分かるんだな」


「昨日の聞き取りで、近い概念として文官の間で共有されました」


「情報早いな」


「王城ですので」


セリアの答えは簡潔だった。


修司は少しだけ苦笑する。


王城ですので。


その一言で大体片づけられる気がした。


杏奈は身分証の見本を見つめたまま、慎重に聞いた。


「魔力紋を登録することに危険はありますか」


「通常はありません。ただし、お二人は異界から来られたため、通常と異なる可能性はあります。魔導官が立ち会い、事前に説明したうえで行います。拒否も可能です」


「拒否した場合は?」


「発行手続きが遅れます。あるいは、魔力紋を用いない仮証明書を用意することになります。ただ、その場合は偽造対策が弱いため、使える場面が限られます」


杏奈は考え込んだ。


修司は彼女を見る。


「受けた方がいいと思うか?」


「今の説明だけなら、受ける方向で考えていいと思う。でも、実際に登録する前に、もう一度説明を聞く」


「だな」


「修司も、自分で納得してから」


「分かってる」


「本当に?」


「今度は本当に」


杏奈は少しだけ疑わしそうに見たが、それ以上は追及しなかった。


セリアは二人のやり取りが落ち着くのを待ってから、書板へ視線を落とした。


「次に、街での基本的な振る舞いについて説明します」


「いきなりマナー講座か」


修司が言う。


「はい。重要です」


即答だった。


グレンまで小さく頷いた。


修司は肩を落とす。


「俺、そんなに危なそうに見える?」


「未知のものに興味を持ちやすい方だとは見えます」


セリアが丁寧に答えた。


「それ、かなり気を遣った言い方だな」


「はい」


「はいって言った」


杏奈が横で小さく笑った。


セリアは表情を整えたまま続ける。


「王都ローディアは多種族が暮らす都市です。人族、エルフ、ドワーフ、獣人、そのほかにもさまざまな種族がいます。見慣れない特徴を持つ方を見かけても、じろじろ見ることは避けてください」


「耳とか尾とか」


修司が言う。


「はい。特に獣人の耳や尾、エルフの耳、ドワーフの体格や髭などを珍しがって見ることは失礼にあたります。相手によっては侮辱と取られることもあります」


「触るのは?」


杏奈が聞いた。


「論外です」


セリアははっきり答えた。


修司が思わず杏奈を見る。


「俺は聞いてない」


「聞いてないけど、知っておくべきでしょう」


「触らないから」


「絶対に?」


「絶対に」


グレンが静かに口を開いた。


「神崎殿。王都では、悪意がなくとも無礼と取られる振る舞いがあります。相手の身体的特徴を許可なく話題にすることも、避けた方がよいでしょう」


「分かりました」


修司は素直に頷いた。


「珍しくても見ない。触らない。話題にしない」


「まずはそれで十分です」


セリアが頷く。


「ただし、相手から話題にした場合や、親しい関係になった場合は別です。距離感の問題ですね」


「そこは日本と似てるかもな」


修司が言う。


杏奈も頷いた。


「相手が嫌がることをしない。知らないことは聞き方に気をつける。基本は同じね」


「はい。まさにその通りです」


セリアは少しだけ安心したように言った。


次に、セリアは服装について説明した。


王城内では、今の服装でも問題はない。ただし、王都へ出る場合は目立ちすぎる可能性があること。修司と杏奈の服は異界の衣服で、素材も縫製もこちらでは珍しいこと。好奇の目を避けるため、王国側で用意した一般的な外出着に着替える方がよいこと。


修司は自分の服を見下ろした。


大学帰りの服装。


昨日までなら何とも思わなかったものが、今は急に頼りなく見える。


「この服、そんなに変か?」


「変というより、珍しいです」


セリアは言葉を選んだ。


「布地が薄く均一で、縫い目も細かい。庶民の服とも貴族の服とも違います。目立ちます」


「目立つのは困るな」


杏奈が言った。


「特に今は」


「そうだな」


修司は頷く。


「異世界人ですって看板下げて歩くようなもんか」


「極端に言えば」


セリアは否定しなかった。


「王都へ出る際には、こちらで衣服を用意します。もちろん、無理に着替えさせることはありませんが」


「着替える」


杏奈は即答した。


「目立たない方がいい」


「俺もそれで」


修司も頷いた。


服装一つで危険が変わる。


そう考えると、急に世界が細かく見えてきた。


魔物や魔法だけが危険なのではない。


人目。


噂。


常識の違い。


金銭感覚。


そういうものも、十分に危険なのだ。


セリアの説明は続いた。


王都では、衛兵に呼び止められた場合は無理に逃げないこと。


店で商品に触れる前には店主に確認すること。


値段交渉が普通の店と、表示された価格で買う店があること。


大通りと裏路地では治安が違うこと。


夜間の外出は避けるべきこと。


身分の高い者とすれ違った場合の最低限の礼。


貴族の家紋や王家の紋章を勝手に使ってはいけないこと。


説明を聞けば聞くほど、修司の頭は重くなっていった。


「杏奈」


「何?」


「俺、そろそろ頭から煙出そう」


「まだ始まったばかり」


「厳しい」


「でも、必要」


「分かってる」


修司は両手で顔をこすった。


「異世界を楽しむ前に、覚えること多すぎるな」


「楽しむために覚えるんでしょう?」


杏奈が言った。


修司は少しだけ黙り、それから笑った。


「言ったな、俺」


「言ったわね」


「じゃあ、覚えるしかないか」


「そういうこと」


セリアは二人を見て、少しだけ表情を和らげた。


「一度に全て覚える必要はありません。今日説明したことは、後ほど簡単な書き付けにまとめてお渡しします」


「文字、読めるかな」


修司が言う。


「それも確認します」


セリアは頷いた。


「言葉は通じていますが、文字については別です。昨日の時点では、お二人が文字をどこまで理解できるか確認できていません」


杏奈が顔を上げる。


「今、確認できますか」


「はい」


セリアは別の木板を取り出した。


そこには、見たことのない文字が書かれていた。


流れるような線と、角ばった記号が混ざった文字。


修司には、最初それが模様にしか見えなかった。


だが、じっと見ていると、不思議な感覚があった。


意味が、遅れて頭に触れる。


完全に読めるわけではない。


けれど、何かが引っかかる。


「……これ」


修司は目を細めた。


「何となく、分かりそうで分からない」


杏奈も木板を見つめていた。


「私も。文字としては知らないのに、意味が少しだけ浮かぶ感じがする」


セリアが驚いたように目を見開いた。


「全く読めないわけではないのですね」


「読めるってほどじゃない」


修司は言った。


「たぶん、勘で読んでる感じ」


「言語理解の影響かもしれません」


セリアが書板に記録する。


「会話だけでなく、文字理解にも一定の補助が働いている可能性があります。ただし、完全ではないと」


「勉強は必要ってことか」


「はい」


「ですよね」


修司は諦めた。


杏奈は木板を見たまま、ゆっくりと言った。


「これは、王都ローディア、ですか?」


セリアの目がさらに大きくなった。


「はい。その通りです」


修司は杏奈を見る。


「読めたのか?」


「何となく。最初の文字列が、昨日聞いた王都の名前と重なった感じ」


「すごいな」


「すごいというより、たぶん補助があるのだと思う」


杏奈は冷静だった。


「でも、覚えれば読めるようになる可能性はありそう」


「前向きだな」


「必要だから」


「杏奈らしい」


セリアは深く頷いた。


「では、文字についても基礎から説明する必要がありますね。お二人で理解の程度に差があるかもしれませんので、個別に確認します」


「また授業が増えた」


修司が呟く。


杏奈が即座に言う。


「必要」


「分かってます」


グレンは扉近くで静かに控えていたが、そこで口を開いた。


「神崎殿、来女木殿」


二人はそちらを見る。


「女王陛下より、午前の説明が終わった後、王城内の一部を案内してよいとの許可が出ています。もちろん、お二人の体調が問題なければですが」


修司の目が少しだけ明るくなった。


「城の中を見られるのか?」


「はい。外へ出る前に、王城内の構造を把握していただく方がよいでしょう。庭園、回廊、食堂、医局、書庫の一部など、立ち入り可能な場所に限ります」


「書庫」


杏奈が反応した。


修司は思わず笑った。


「杏奈、そこ食いつくんだ」


「文字を覚えるなら、本は重要でしょう」


「さすが」


「修司も読むの」


「はい」


グレンは続けた。


「禁書庫には当然入れません」


その言葉で、空気がわずかに変わった。


禁書庫。


そこは、二人がこの世界へ落とされた場所につながる言葉だった。


修司の表情から笑みが消える。


杏奈も静かに目を伏せた。


グレンはすぐに頭を下げた。


「失礼しました。不用意な言い方でした」


「いや」


修司は短く息を吐いた。


「必要な説明だろ。そこには行けない。むしろ、はっきり言ってくれた方がいい」


杏奈も頷いた。


「そうですね。曖昧にされる方が不安です」


グレンは二人を見た。


「承知しました」


その声には、また一つ確認を積み重ねたような重さがあった。


セリアは書板を閉じた。


「では、ここで一度休憩にいたしましょう。かなり多く説明しましたので」


「助かる」


修司は背もたれに身体を預けた。


本当に、頭が疲れていた。


戦ったわけでも、走ったわけでもない。


ただ話を聞いただけだ。


それなのに、身体の奥まで疲労が沈んでいる。


杏奈も疲れているはずだった。


だが、彼女はまだ木板の文字を見ていた。眉を寄せ、何かを確かめるように視線を動かしている。


「杏奈」


「何?」


「休憩だって」


「分かってる」


「それ、休憩中の顔じゃない」


杏奈は少しだけ目を伏せた。


「分からない文字があると、気になる」


「大学の課題より真剣じゃないか?」


「大学の課題も真剣だったでしょう」


「俺よりは」


「修司よりは」


「否定が早い」


杏奈は小さく笑った。


その笑みを見て、修司も笑う。


部屋の外では、王城の気配が静かに流れていた。


人の足音。


遠くの鐘。


風に揺れる窓辺の布。


どれも知らない音だった。


けれど、少しずつ、昨日ほど刺々しくは聞こえなくなっている。


修司は窓の外へ目を向けた。


王都ローディアの街並みは、朝の光の中でさらに広がって見えた。


まだ遠い。


まだ怖い。


まだ何も分からない。


それでも、いつかあの街を歩くことになる。


硬貨を使い、身分証を持ち、誰かと話し、店で物を買い、道を覚える。


元の世界へ帰る方法を探すとしても、その日々を避けることはできない。


修司はゆっくり息を吐いた。


「なあ、杏奈」


「何?」


「俺たち、本当に一からなんだな」


杏奈は木板から目を離し、修司を見た。


「そうね」


「金の使い方も、文字も、身分証も、服も、歩き方も」


「一からね」


「大変だな」


「大変ね」


修司は少しだけ黙った。


それから、口元を緩める。


「でも、ちょっとだけ面白い」


杏奈は呆れたように目を細めた。


「本当に修司らしい」


「褒めてる?」


「今日は三分の一くらい」


「減った」


「まだ説明を半分も終えていないから」


「厳しい」


だが、杏奈の声には昨日にはなかった柔らかさがあった。


セリアはその会話を聞きながら、静かに書板を閉じた。


グレンは扉の前で変わらず控えている。


昨日は、ただ見知らぬ世界へ投げ込まれただけだった。


今日は、その世界の輪郭を一つずつ手で触れている。


硬貨の重み。


身分証の意味。


文字の形。


人との距離。


まだ分からないことだらけだ。


だが、分からないものは、学べばいい。


少なくとも、そう思える朝だった。


休憩の後、二人は王城の中を歩くことになる。


異世界で最初に覚えるべき場所。


自分たちが今いる、この国の中心を。

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